とある大会での一幕-19(事後処理)
あとちょっと。。。
◇◆◇
「……さてと」
「――旦那様、どちらへ行かれるつもりなのですか?」
足元に転がっていたクドウェルと聖遺物≪リア・ファル≫を肩に担いで、いざ――と言うところで声がかかった。
振り返ると、そこにはくすんだ銀髪のメイドの姿。周囲は今も砂埃が待っていると言うのに、そのエプロンドレスには埃一つついていないのは流石と言うよりはむしろ理不尽と言って表した方がいい。
「いや何、ちょっと逃避の旅に出ようかなと思ってな」
「ではお供いたします、旦那様」
「ついて来んな!」
「説明の如何を求めます」
「お前が来ると碌なことがない――と、言うのは建前で。ちょっと酷い事になったからこの場の後始末の方を頼みたい」
「旦那様、建前と本音が逆では御座いませんか?」
「……、いいや?」
「左様でございましたか。余計な勘ぐり、大変失礼いたしました、旦那様」
「構わないさ」
「しかし旦那様? それならばなぜクドウェル様を担いでおられるのですか? 後そちらの少女は――旦那様、またですか」
「またとか言うな、そして呆れたように溜息つくな。コレ、俺の所為じゃないから。名前はリア・ファルって言ってこいつの所有物」
「……ああ、クドウェル様の方でしたか」
「そ。俺の方は……――あっちの隅っこでご丁寧にタヌキ寝入りの最中だ」
『……、ぐー! ぐー!』
「――起こして参りましょうか? ついうっかり、永遠に目を覚ませなくなるかもしれませんが」
「ああ、それじゃあ頼もうか、」
『お腹が減りました!!』
「……この役立たず」
「不良品の枯れ木ですね。私とは大違いです」
「……ゃ、どっちもどっちかなぁとかって思ってしまう俺は間違ってるのか?」
「私の方が何京倍も有能で御座います」
「ああ、お前が有能なのは認める。けどな、有能と優秀ってのは厳密には違うと思うだ」
「能ある龍は惰眠を貪ると言いますし」
「ゃ、……つかそれって確か元々原初の白龍の事を指してるんだよな、有能だけどそれ以上に働かないと言う……お前としてはそれでいいのか?」
「――訂正します。私は優秀ですが惰眠は貪りません」
「惰眠貪らなくても俺に色々とちょっかい掛けてくるけどな」
「きっと彼女は構ってほしいのでしょう」
「他人事みたいに言うな、テメエの事だよ、テメエの」
「……“テメェ”ではなく、せめて“おまえ”、と愛情をこめて仰ってください」
「――よぅし、望み通り言ってやろうじゃないか。お・ま・え! の所為で俺が今までどれだけ酷い目に遭ってきたことかッ!!」
「まあ、旦那様、“おまえ”だなんて、まるで夫婦のようで恥ずかしいですね」
「は? どこが?」
「……ぽぽっ」
「いや、自分で『ぽぽっ』とか擬音出すなよ。全然、全く、これっぽっちも、血色どころか表情も変わってないからな、お前」
「承知しておりますとも」
「……はぁ、んじゃ、俺はもう行くぞ」
「はい、あ、ですが旦那様?」
「なんだよ?」
「リリアン様がお目覚めになるまで待たれては如何ですか?」
「嫌だよ。むしろリリアンのやつが寝てる今が絶好のチャンスなんじゃねえか。起きると絶対もう一度暴れるし、こいつ」
「旦那様が正々堂々、正面からぶつかって勝利を収めればリリアン様も大人しくなりましょうに」
「無理な注文と無茶な注文を同時に出されても困るんだがな」
「無理や無茶? そうでしょうか? リリアン様を真正面から打ちのめせばよいだけでしょう?」
「それが無理だって言ってるんだよ。誰もがお前みたいな規格外だと思うな」
「――私の様な、ですか」
「なんだよ、何か言いたそうだな?」
「いえ、何も。旦那様が無理、無茶だと仰られるのでしたら、そうなのでしょう。少なくとも旦那様にリリアン様を打ちのめす事は――“やりはしない”と」
「……何か含みのある言い方だな、おい」
「それは旦那様に思うところがあるからでは御座いませんか? 私は特に、特別な体を含めたつもりは御座いませんが?」
「……」
「何か?」
「……や、いい。俺は藪を見たら先ず逃げるようにしてるんだ」
「そうなのですか?」
「ああ。つついて蛇を出すとか、それ以前なら問題ない……問題も少ないだろうしな」
「左様でございますね」
「と、言う訳だからリリアンが目を覚まさないうちに、俺はさっさととんずらする。あと宜しく!」
「はい、承りました、旦那様」
「んじゃな。しばらく行方をくらますので探さないでくれ」
「気が向いたら追跡する事に致します」
「ああ。……――さて、と。こいつら、アルカッタの宝物庫に放り込んだらどうなるかねぇ。あそこには結構色々な曰くつき物品があるからな。クククッ、楽しくなりそうだぜ」
◇◆◇
「――ッッ、レムは!?」
「はい、おはようございます、リリアン様」
「レムは!? レムはどこですの!?」
「それは諸事情によりお答えできませんが――取り敢えずはこちらをどうぞ」
「? なんですの、コレ……手配書?」
「はい」
もう、一、二回程で終わります。
ぐだぐだ、アルーシアさんの出番はもう少しなのでお待ち下さいっ