ど-506. ○○“で”遊ぶ
……眠い
「あ~るっ」
「?」
「さあ、遊ぼうぜ!」
「あそぶ?」
「応! あ、いや、別に変なことしてとかじゃなくて純粋に、だな」
「???」
「……っと、いかんいかん。俺は何言い訳してるんだ。別にやましいところがあるわけでなし、堂々としていればそれでいい……うん、それで良いんだよ、俺」
「どー、どー」
「はい、アル。それは馬とかを慣らす時のヤツな。俺が言ってる堂々はそっちじゃないから」
「……(こくん)」
「……あー、なる。分かっててやったわけですね、アルさん」
「……(こくん)」
「――だっ、ダメだ! 俺の可愛いアルがこのままじゃどんどん駄目な方に染まってしまう!!」
「だめ……じゃ、ない」
「いいや! アル、お前自身は分かってないだろうけど、この館には危ないモノが色々と色々と色々と――兎に角いっぱいあるんだよ!」
「その筆頭が旦那様ですのでどうかお気を付け下さいませ、アルーシア様」
「そうだぞ、アル! 人畜無害な俺と違って一番気をつけるのはこいつだ。いいな、良く覚えておくようにっ」
「……(こくん)」
「よしよし! 素直でいい子だなぁ、アルは」
「ちなみにアルーシア様は今私の言葉にうなずかれました」
「いいや、違うね! 今のは俺の――……というか、お前いつの間に?」
「旦那様が『右よし……左よし……よし、邪魔者はいないな』と仰られていた辺りからで御座います」
「それは最初から、つか本当に最初からだなぁ、おい!?」
「はい。旦那様が周囲を気にしながらお忍びでこちらに参られる様は不審者と言い表すのが一番的確なお姿でした」
「お前は! アルの前で何勘違いされそうな事を……!」
「勘違いも何も普段の旦那様そのものでは御座いませんか」
「そんな事はない! 俺はいつも真摯で礼儀正しい優しいお兄さんで通ってるんだからな!」
「……旦那様、それはいくらなんでも些かと言わず多大に見栄を張り過ぎでは御座いませんか?」
「じゃあ足の長いおじさんで」
「いえ、私が申し上げたいのはそこではなくてですね、」
「何だと!? それじゃあお前は俺が爺だとでも言うつもりかっ!? 俺はそこまで老け込んでねえよ!!」
「――……申し上げたい事は多々ございましたが、所詮旦那様には如何な進言とて須らく詮無きことでしたか。ここはアルーシア様に何かしらの悪影響を与える前に実力にて排除した方が賢明ですか」
「悪影響だと!? 俺は別に、悪影響なんて与えてないぞ! むしろいい影響をふんだんに与えていると言っても良い!」
「それはないでしょう」
「いいや、あるね! 今日だってこうして、アルの所に足繁く通ってご機嫌とり――ごほんっ、情操教育の手助けをだな!」
「成程。小さなころに手懐けておこうと言う、いつもながらに姑息としか言いようのない旦那様の常套手段ですか」
「その通りだ!」
「そう威張られる事でも御座いませんが、まあ今まで一度たりとも成功したためしはないのですし、ここは大目に見るとしましょう」
「いや、一度も成功して無いのはあと一歩と言うところでお前が邪魔を――」
「その様子では今後も安心ですね」
「え、それってどういう意味!?」
「敢えて指摘させて頂くのでしたら、旦那様ご自身の不手際ではなく私の所為にしているところが一番の問題にしてそもそも初めから成立しえない望みと言う事です」
「いや! お前の所為にしてるも何も、俺の悪評とかその他色々と全部お前の所為だから!」
「悪評など些細なことです」
「全然些細じゃないよ!?」
「本当に些細なことなのですがね……旦那様がそう仰られるのでしたら、その様に」
「いや、本当に全然些細じゃないからな? その悪評の所為で俺がどれだけ大変な目に――」
「さて、それではアルーシア様、本日の勉学のお迎えにまいりましたので、このような旦那様は放っておいて、私と共に参りましょうか?」
「――って、俺を無視しないでくれます!?」
「さあ、参りましょうか、アルーシア様」
「……(こくん)」
「アルまで!?」
「ふふっ――……おや、アルーシア様?」
「……?」
「……いえ、何でも御座いません。貴女が楽しいのであれば、それで良いことかと」
「???」
「何でも御座いませんよ、アルーシア様。では、本日もがんばりましょうか」
「……(こくん)」
はっぴー、さまー、でぃ