ど-505. シリアス……っぽいもの
あくまでぽいもの、なので別にシリアスとかじゃないです、全然違います。
「さあ、アル。俺の胸の中に飛び込んで来いっ」
「……」
「ふっ、微動だにしないとは、アルってば照れ屋さん♪」
「……」
「でもほら、恥ずかしがらなくても良いんだぞっ、アルは俺の事が大好きで、俺もアルの事が大好きだから何の問題もないんだ」
「……すき？」
「そう。それにほら、俺たち以外誰も居ないんだから、めいいっぱい俺に甘えてもらっても大丈夫――」
「わたし、――を……すき？」
「――」
「す、き？」
「――いや待てちょっと待て」
「……？」
「アルーシア、お前その名前、何処から、誰から聞いた！？」
「？」
「アルーシア、おい、アルーシア！？」
「？？？」
「っ、――」
「旦那様、少々落ち着いて下さいませ」
「ッ、邪魔を」
「――旦那様」
「――……、」
「一旦、じっくりと、少しばかりの時間、落ち着きなさい」
「……、……ぁ、悪い」
「いえ。只今の大変不躾な言、申し訳ございませんでした。ですが少しは落ち着けましたか、旦那様？」
「……あぁ」
「しかし旦那様があれ程取り乱されるなど珍しい。如何なされたのですか？」
「アルーシアがお前の名前を言った」
「――左様で御座いますか」
「……何だ、お前は驚かないのか？」
「はい」
「名前って言っても偽名の方じゃなくて、お前の真名の事だぞ？」
「承知しております。ですが旦那様？」
「……何だよ」
「仮にアルーシア様が、シャトゥの言った通りにあの子の事を生き返らせた存在だとすれば――私の真名を知っているなど然して驚くことでも御座いませんでしょう？」
「それは……まあそうかもしれないが」
「それに――いえ……」
「？ 何だよ、何か途中で言いかけて止めるなんてお前らしくない」
「いえ。何でも御座いません、旦那様。どうか気になさらぬようお願い致します」
「……」
「お願い致します」
「……分かった」
「お心遣い、ありがとうございます旦那様」
「いや……」
「それで旦那様、一つ、お尋ねしたいのですがお許しいただけますでしょうか？」
「ああ。――いや、お前が態々、ここで改まった言うことか？」
「はい」
「……そうか。……それじゃあ……――何だ？」
「仮にアルーシア様が私の真名を存じておられたからとして、それで旦那様は如何なさるおつもりなのですか？」
「そりゃ、」
「――それは？」
「……」
「それは、何でしょうか、旦那様？」
「……いや、そうだな。ああ、確かに。お前の言うとおりだ。アルーシアが……この子がお前の真名を知ってたからって、だから何が変わるわけじゃない、この子がアルーシアと同一人物ってわけじゃ、ないもんな」
「はい、旦那様。アルーシア様はアルーシア様、アルはアル。それがたとえシャトゥが女神の御技で本当の意味で“生き返らせた”としても同じではありません。どうか――その事はお忘れなき様」
「……ああ」
「それに旦那様？ その様に手荒く扱ってはアルーシア様に怖がられ嫌われてしまいますよ？」
「ぉ？ おぉ！？ それは拙いな！」
「しかし旦那様が敢えていばらの道を突き進むと言うのであれば、私も大力ながらお手伝い致しましょう」
「するな！」
「まずはやはり定番の……『街の中を走ってたら曲がり角でぶつかっちゃった、えへ☆』でしょうか」
「だからしなくていい、というか定番って何だ、定番って」
「ちなみにこの後は『何晒してくれとんじゃボケェ、いっぺん死ぬか、死んでみるか、あぁン？』と続きます」
「……いや、それをアルが言うのか？」
「はい」
「……それは流石に無理ないか？」
「その辺り、抜かりは御座いません。――さあ、アルーシア様、今こそ特訓の成果を示す時です！」
「！ “何皿してくれるんじゃ、ぽげ～、一変死ぬか、死んでみるんか、アンッ！？”」
「――」
「――」
「見事です、アルーシア様」
「――ってかテメェはアルに何教えてンだよ！？」
「……いえ、実は一度だけ、冗談のつもりで教えただけだったのですが、まさかここまで完璧にマスターされているとは私も驚きました」
「いや、嘘言うなよ」
「嘘は吐いておりません」
「……本当に？」
「はい。アルーシアに誓って」
「……」
「……」
「アルー！！！！ 色んな悪影響を受ける前にちゃんと真っ当な知識を身につけような！？ せめて何処ぞの“なんちゃって♪残念で賞”みたいになる前に！！」
「……？」
「……私は、旦那様が一番の悪影響を与える要因ではないかと思うのですが。まあ言わぬが華、なのでしょうね、きっと。――何よりそちらの方が面白くなりそうですし」
……うむ？
何と言うか、シャトゥとかは暴れるだけ暴れられるので非常に書きやすいのですが、
アルーシアは何と言うか、地雷原なので非常に書き難い……。しかも基本一人だひたすら会話を続ける虚しいレム君状態なので、難易度アップ！
……何だそれは
