ど-495. 緊急な事態?
まじめです。
「……準備は良いか?」
「はい、旦那様。身も心も既に旦那様に全てを捧げる覚悟は遥か昔に完了しております」
「はいそうだねー、でも今はそう言うのは要らないからねー?」
「流石は旦那様、手慣れております」
「そりゃまあ――と言うか、今はそういう状況じゃないから。な?」
「はい、心得ております」
「ちゃんと分かってるならそれでいい――と言う訳でもないんだが、まあ良しとする」
「はい。私とて身の振るまい方は重々承知しております」
「その辺りはちゃんと信頼してる……と、雑談はこのレベルでひとまず置いておくとして。準備は良いか?」
「はい。旦那様の為ならばいついかなる時であろうとも準備万端、と言う言葉に嘘偽りは御座いません」
「――……そか」
「はい、当然、とお応え致しましょう」
「そりゃ何とも、頼もしい事で。――それじゃ、覚悟を決めていくとするか」
「はい」
「……」
「……」
「しかし最後の報告を受けてからそれなりの時間が経ってるわけだが……果たしてこのドアの向こう側はどんな惨状になっていることか」
「伺う様にこちらを見てもお答えできないモノは出来ません、旦那様」
「そ、そうか。それもそうだよな、流石のお前でも想像できない事態ってのは往々にしてあるよな」
「はい。少なくとも私はこの事態を想定しておりませんし、想像もした事も御座いませんでした。まさか――」
「あー、まあ確かにそうだよな。完全掌握完全統制してるはずのこの場所で魔力暴走――に近い現象が起きるなんて俺も考えたことなかったし」
「決して良い意味では御座いませんが、逸材で御座いますね」
「うん、まあ……そうだ、なあ」
「では旦那様、私が先行しますので旦那様はその後に――」
「いや待て。今回ばかりはそう言う訳にもいかないから俺が先行する。お前は後ろで事態に備えてくれ」
「――反論は?」
「認めない。お前の能力を疑ってるってわけじゃ、ないけどな」
「それは承知しております。それに私も、旦那様のお力を疑うか否かと、旦那様の御身を心配するかどうかというのは全く別種の問題で御座いますから」
「ああ、理解が早くて助かる」
「いえ、それほどでも。……それよりも旦那様、一刻も早く突入した方が宜しいのでは御座いませんか?」
「っと、そう言えばそうだったな。こんなことしてる場合じゃなかった。それじゃあ――」
「はい、旦那様」
「――行くぞっ!」
「はい」
「――っしゃ、お前ら、大丈夫……だな、うん。し、失礼しましたー」
「……旦那様」
「そして後ろのお前は眼潰しとか止めて、いやマジで」
「しかし皆様方、ご無事なようでなによりでございます」
「うん、そうだねー。何が原因で全員素っ裸だったのかは訳わかんないんだけど。あとホントに、眼潰しとか狙ってくるの止めて」
「魔力残滓から判断して、ファイ様の暴走した魔力が部屋全体を覆い尽くし、そのうえで部屋全体と衣服のみを焼いた――言い換えれば生命は辛うじて燃やす手前で停止した、と言うところでしょうか」
「……お前、あの一瞬でよく見てるなー」
「旦那様は皆様方の裸体に視線が行っていましたからね?」
「アレは仕方ない、うん。不可抗力だし」
「そうですね」
「不可抗力とか認める気があるなら、もういい加減眼潰しの隙を狙ってくるのを止めようぜ?」
「次第に楽しくなってきました」
「なるなよ!?」
「さあ旦那様、お覚悟を?」
「何で!? 何か緊急事態とか言う事で真面目に急いで駆け付けたわけですが、それがどうしてこんな事になってるわけ!?」
「旦那様の仁徳の賜物かと」
「んな仁徳は要らねえよ!!??」
「――さあ旦那様、早く逃げなければ、私が簡単に捕まえてしまいますよ? ふふ、ふふふふ」
「怖ぇよ!? つか何笑ってるの、お前!? いや本気で楽しくなってる、いやそんな傍迷惑なっ!?」
「ふふふ。ふふふのふ」
「うおおおおおお、こんな理不尽で眼つぶしとかお仕置きとかされてたまるかってのっ。逃げる、何としても逃げ切ってやる!!」
「……なにはともあれ、皆様ご無事なようでなによりでした。これで心おきなく旦那様で遊……いえ、皆様の裸体を見た旦那様に相応の仕置きをしなければ」
……真面目です?