ど-55. あの、ハムスターが走ってるヤツ……名前は何かなぁ?
作者は知りません。
「頭、いてぇ」
「如何なされました、旦那様?遂に偏頭痛でも発症されましたか?」
「いや、単なる休み過ぎだ。逆に身体がダルい」
「それならば少々お身体を動かしになられてはいかがでしょうか。そうすれば気分もよろしくなるかと存じ上げますが?」
「…うん、そうだな。そうするか」
「はい、では早速」
「で、お前は何をしているわけだ?」
「なに、とは。見てお分かりになられませんか、旦那様。私は旦那様のご助力をしようと考えているだけなのですが」
「その、丸くてカラカラと回って、おまけに棘付きの回転檻のような……例えば小さな動物が中で延々と走り回ってそうな、人間大のこの道具がか?」
「はい。具体的に申し上げるならば旦那様はこの中にお入りになり、走る」
「…で?」
「ひたすら走る」
「……で?」
「走り続ける」
「………で、力尽きたら?」
「背後に迫る針山の餌食、でしょうか?…わぁ、旦那様の磔の完成ですね。どのお部屋に飾っておきましょう?」
「…微妙に嬉しそうな表情と声色を使うな、現実感があり過ぎて寒気が奔る。で、力尽きる前に出る方法は?」
「ありません。一度お入りになられると次の使用者が現れるまで開かぬ仕様になっておりますので」
「なんですか、その拷問器具は?」
「拷問器具などと…旦那様の健闘を深くお祈り申し上げております」
「いや待て俺は既にその中に入る事が決定してるのか?」
「なにを当り前な事を仰られましょう、旦那様」
「ゃ、死ぬ。これって中に入れば絶対死ぬってば」
「つまり埋葬班の準備が必要と言う事でよろしいでしょうか?」
「よろしくねー!つかこんなものやってられるかっ。あとこんな物騒な…」
「ぁ、旦那様。それにお触りに――」
「……あれ?どうなってるのカナ、これ?」
「お触りになられると自動的に内部への収納、及び回転が開始されだしますので十分にご覚悟の上でお望み下さい…と申し上げようとしたのですが流石は旦那様。既に覚悟をお決めになられていたとは感服いたします」
「回転が…始まって……背後から針山が迫ってくるー!?」
「そして走れど走れど先には進まず、と言うわけでございます。旦那様、ファイトでございます」
「いやーゃめ……ちょ、背中、今背中にちょっと刺さったぁぁぁ!?」
「心配ございません、旦那様」
「な、何がだー!?」
「脱出に対する魔術的な防壁も完備しております!!」
「胸張って言う事かー!!し、し……死ぬ、マジで死ぬ、死ぬってばー!!!」
「そうして喚いておられる分、十分に余裕がおありになられると判断いたしますが、旦那様」
「…いや、マジでやばいからさ、これ」
「では、お気を付けて」
「いや待てお前どこにいくつか俺をこのまま置いてかないで放置ですか放置なのですかうぎゃーまたちょっと刺さったよ!?!?」
「さて、では見回りに行くとしましょうか」
本日の一口メモ〜
決して拷問器具ではありません。そして主人公虐待でもありません!
旦那様の今日の格言
「し、死ぬかと思った」
メイドさんの今日の戯言
「私は信じておりました」
ちなみに今回はもうちょっと早く、カウントダウン言ってみよぅ
・・・5