ど-482. 恰好をつけた勘違いは恥ずかしいモノ
だがソレが勘違いとは限らない。
「――む!?」
「如何なさいましたか、旦那様?」
「いや、何だか俺の警戒警報がさっきからビシビシと……――ソコだぁぁ!!!!」
「……」
「……」
「それで旦那様は何をなさりたかったのですか?」
「……ゃ」
「それで、旦那様は叢に隠れていた小動物にナイフを投げて、何をされようとしたのですか? お腹が減っておられるのでしたら、食事をご用意いたしますが?」
「……、あっれ~、おかしいなー」
「ささ、こちら軽食ですがどうぞお食べ下さいませ、旦那様」
「お、手際が良いなぁ~、……うん、超ドお腹が空いてたところなんだよ! ああ、助かったな!」
「本日のおやつは基本を押さえたトマトとレタス、の様なモノのサンドウィッチとなっております」
「おっ? ……もしかしてお前が作った?」
「はい。食堂はいつもと同様、ファイ様がもたらした被害の収拾に忙しそうでしたから。料理とも呼べない軽いモノではありますが、確かに私がご用意させていただきました」
「うん、助かる。つか、俺としては別に地上だろうが館だろうと、何処にいても良いんだけどな。館での俺の食事だけは何とか改善できないものかな、って思うぞ」
「その言葉をファイ様に直接伝えれば、きっとファイ様のやる気も倍になる事でしょう」
「なら言わないでおこう。俺の勘だとアレはやる気になればなるほど空回りするタイプと見た」
「正解です、旦那様。むしろファイ様は物事を意識していない方がスムーズに事が済みますね」
「やっぱり、なのか」
「はい。それはもう、見ているこちらが涙を誘われる程です」
「……笑いの?」
「それは回答を控えたいと思います」
「その返事は既に答えたのと同じって気もするけどな」
「では笑いの涙を誘います、と率直にお答えする事にします」
「……まあ、分かってたけどな。んじゃ、いただきますっと」
「はい、どうぞお召し上がりくださいませ、旦那様」
「ん~、……――うん、やっぱり美味いな! 何と言っても日に三度の食事、ありゃ拷問だし!」
「ご満足いただけた様でなによりです、旦那様。……しかしあの完全擬態化させたはずの罠に気付きますか、旦那様の勘も中々侮れないですね」
「ん? 何だ、何か微妙に嬉しそうな……何か言い事でもあったのか?」
「いえ、何も。それより旦那様、もう少々ならばお代りが御座いますが、如何なさいます?」
「頂こう!」
「はい。ではこちらに」
「応!」
色々と手のひらの上です。手の平の上。
……そろそろ後書きの小話も再開しましょうか。