ど-479. 目が覚めて、一面
うかうか、うとうと
「……さ。寒っ」
「旦那様、如何――何ですか、この惨状は」
「惨状……確かに、そう表すのが的確だなぁ」
「それで旦那様、この景色の――屋内一面銀景色と言う状況へのご説明はどのようなモノなのですか?」
「説明も何も。俺はたった今起きたところで目が覚めるとこの状態だった」
「それは……良かったですね。つまり危うく永眠される可能性もあったと言う事ですか」
「そう、だなぁ。そう考えると助かったっつーか。でも何で部屋の中なのに雪?」
「……実は私に一つだけ心当たりが御座います」
「お前かっ、やっぱりお前のせいなのかっ!!」
「あれは――そう、熱い熱い、ひたすら蒸し暑い日の事でした。ふと旦那様が言葉をこぼされました。『かき氷、喰いてぇなぁ』と」
「……何かそんな記憶も無きにしも非ずだが、それがどうかしたのか?」
「そして実に気のきいた私は考えました。『そうだ、旦那様が忘れたころにかき氷を食べさせて差し上げよう!』……と」
「それは気の利いたとは言わない」
「そこで一つの罠を仕掛けました。あるいは私にも被害が及ぶかもしれないと考えながらもここは旦那様の為であるとこの身を削って!」
「って、おーい、無視するな-?」
「とある朝、目が覚めるとそこにはいっぱいのかき氷――その様な素敵な罠をご用意……まあ、少々加減を間違えていたのかもしれませんが」
「コレは少々どころじゃないと思う!」
「ですが、原因が私が張った罠であると決まったわけではまだ、」
「いやそれだろ、絶対! つかそれ以外あり得ないし!!」
「果たしてそうでしょうか?」
「そうだよ!? と言うよりもそれ以外の原因でこんな状況にある理由を教えて欲しい!!」
「旦那様が寝ぼけて……?」
「例え寝ぼけたとしても、コレはない」
「はい、今のは軽い冗談ですが。そうですね、例えば……スィリィ様が強襲なされた、など」
「……」
「コレは如何でしょうか、旦那様?」
「……うん、可能性の一つとしては十分にあり得そうで、だから怖いぞ」
「旦那様の日頃の行いの賜物で御座います」
「それ、賜物違う。どちらかと言えば……えと、報い?」
「旦那様はご自身でどのような行為を取っておられたか、ご自覚されているのですね?」
「俺は――見て楽しむ方だ!」
「それは威張って言う事ではないかと。ですが、そうですか……スィリィ様もお可哀そうに」
「可哀想なのは俺! いつだって俺は被害者だから!!」
「いえ、旦那様が被害を被られるのはいついかなる時と場合をもちましても自業自得と相場が決まっております」
「お前が裏から手をまわしていると言う可能性も……」
「ありますね。と言うよりも約半数はそうであるかと」
「自白しやがった!!」
「別段、隠しているわけでは御座いませんので。それと残り半数は本当に旦那様の自業自得であると言う事実をお忘れなき様」
「それはそれ、おいておくとして、だ」
「……比較的、重要な事柄であると苦言いたしますが」
「いいんだよ。というか、だ」
「はい、改めて如何なさいましたか、旦那様?」
「……この部屋、どうするんだ? このまま溶けるのを待ってても良いけど、それはそれで水浸しの凄い惨状になるぞ?」
「旦那様、ちゃんと後片付けはしておいて下さいね?」
「って、ちょい待て元凶。何処行く気だ!?」
「旦那様にこの部屋の後片付けを放任し、私は傍で傍観している心積もりですが?」
「お・ま・え・も・て・つ・だ・え!!!!」
「……旦那様、ご自身で散らかしたモノくらいはせめて自身で片づけて頂けないと」
「いや! この部屋の状態の原因、お前だから!!」
「私の好意の全ては旦那様の為、すなわちこの部屋の惨状も全ては旦那様の為であり、旦那様のみに責任が押しつけられるのです」
「押しつけるとか、言ってるから!!」
「では旦那様、ご健闘を――ほくそ笑み見守っております」
「て、ちょいま――……くっ、逃がしたかっ!? ……いや、マジこの部屋、どうしよ? てか寒い。せめて着替えを……」
やっぱり、……!