ど-477. 偶にあること
明け方にふと目が覚める。
大体、5~6時くらい? ヒトによっては3~4時くらいかと。
「……むぅ」
「――如何なさいましたか、旦那様?」
「どうにも眠れなくて、と言うより寝れるんだが眠りが浅くてな……と言うよりもお前は何故ここにいる?」
「私は常にいかなる時であろうとも旦那様のお傍に控えておりますとも」
「てか、普通に自分の部屋で寝てろよ」
「実はふと目が覚めまして。眠気もさほどなかったので旦那様の寝顔を拝見しようかと思い立ったのがつい先ほどの事……今旦那様の部屋にいるのはほんの偶然に御座います」
「……本当に?」
「嘘は申しておりません」
「……」
「……」
「まあ、信じるか。てか、ヒト様の寝顔を拝見とか、正直良い趣味とは言えないぞ、それは」
「見ていて飽きないモノとして旦那様の奇行と旦那様の寝顔と、時折しか御拝見出来ませんが旦那様の真面目なお姿が御座います」
「てか、それ全部俺の事じゃん」
「はい、そうですね」
「それは何だ、俺はそんなにも見てて愉快で飽きない奴だとでも言いたいのか」
「少なくとも私は良い意味でも好い意味でも旦那様を見て飽きる事はないだろうと自負しておりますが?」
「……」
「? 如何なさいましたか、旦那様?」
「なんだ、お前は。珍しく俺を褒めてばっかりで何を企んでやがる? と言うよりももしかしてこれは夢か、俺の見ている夢なのか」
「これは夢ではなく現実です。それに私は何も企んでなどおりません」
「……」
「未だ御疑いになられるので? それならば目ざまし代わりに私が熾烈な一撃をご提供しても宜しいのですが……」
「いや、うん、と言うかこれはちゃんと現実だな。それにお前も特に何かを企んでいるわけでもないと。分かった、理解した」
「ご理解いただけたようでなによりに御座います、旦那様」
「……でも、お前と話してて目が冴えちまったなぁ。どうするべきか……」
「それは旦那様の更に仕事をなさりたいと言う意欲の表れに御座いますかっ」
「いや違う。だからこれ以上俺の仕事を増やすとか、そう言うありえない事態は止めろ」
「それは残念です」
「俺が言いたいのは、もう一度寝るにしても起きたままにしても微妙な時間帯だなぁって事だよ」
「はい、分かっております」
「んで、どうするかねぇ。俺としてはもう少し身体を休めておきたいところだけど……時間が微妙過ぎる」
「何ならば渡井が旦那様を強制的に眠らせて差し上げましょうか? 起床の際も私が強制的に旦那様を起こして差し上げれば事足りるかと」
「いや、遠慮しておく。と言うか寝かすにしても起こすにしてもその強制的にって所は何とかならないのか?」
「それが一番手っ取り早く確実であると判断致しました」
「……まあ、間違ってはいないだろうけど。そこはホラ、もう少し俺に優しく頼みたいところだな」
「では優しく旦那様を絞め落とし、優しく旦那様の耳元で呪言を囁き起きてもらえば宜しいのでしょうか?」
「――何でもかんでも優しいって言葉を最初につければいいと思うなよ?」
「では旦那様は私にどのような方法を望まれていると仰るのですかっ」
「逆切れ!? つか、普通に子守唄歌って寝かせてくればいいし、起こす時も軽く揺すって起こしてくれればいいだけだろうが」
「いえ、それでは余りに普通すぎて旦那様が飽きるかと思いまして」
「飽きないよ、てか普通万歳じゃねえか。むしろ王道万歳だよ」
「左様でございましたか」
「ああ――と言うか、別にお前に寝かしつけて欲しいわけじゃないからな? 時間も微妙だし……起きるか」
「はい。それでは私はお召し物をご用意して参ります」
「ああ……っと、そうだな。出来れば黒系の、目立たない服を頼む」
「畏まりました……が、黒系とは旦那様にしては珍しい選択ですね? 理由を窺っても宜しいのでしょうか?」
「ああ。まあこんな時間だし、どうせだから処理部とか情報部とか辺りにいきなり顔を出してみるのも悪くないかなって思ってな」
「成程、奇襲ですか」
「そうとも言う」
「それは良いことかと。この時間でしたら彼女らの気も丁度緩んでいる事でしょうし、何より彼女らも喜びます」
「だと、良いけどな。……何か以前、料理部に顔を出した時に門前払いを、それも比較的俺にも優しいシャルアにくらった事があってな。――そうならない事を祈るぜ」
「それは旦那様の間が悪かっただけであると指摘しますが……では旦那様、起床の準備をして少々お待ち下さいませ、直ぐにお召し物をご用意してまいります」
「ああ、頼んだ」
「はい」
「……しかし、眠いと言うか眠くないと言うか。この時間帯だとやっぱり、起きるにしても寝るにしても微妙だなぁ。日中に眠気が差してこないといいんだけど」
眠いのか眠くないのか、微妙で判断に困ります?