ど-476. 俺の混沌(カオス)
……何やらテンションが変な事に。まあこれも一つ日常、どんなに変でもそれが平時です?
「そう言えば小耳にはさんだが、世の中にはモテ期ってのがあるらしいぞ?」
「何ですか、そのモテキ? とやらは。私は初めて耳にする言葉なのですが」
「何でもモテ期に突入すると周りの女の子達から慕われまくってうははと笑いが止まらなくなるそうだ」
「成程、理解いたしました」
「いいなぁ、俺もモテ期、突入しねえかな……?」
「ある意味では旦那様は既にモテモテではないですか?」
「……モテモテって、どこのだれから?」
「気紛れの賞金稼ぎやまだ小さい旦那様の本質を見抜く事が未だ出来ない未熟でしかし純粋な小さな子どもたち、それに私や、旦那様の事を煩わしく思っている某国の父王諸兄の方々や、私など」
「さり気に今、二度自己主張したな、お前」
「はい」
「……隠す気は無しか」
「隠して意味のある事では御座いませんので」
「まあ、それも確かにその通りなのだが、しかし……はぁ、つかもう少しまともな奴から慕われたいと思うのは俺の贅沢なのか?」
「失礼ですね。旦那様は私がまともではないと仰られるのですか?」
「ある意味でお前は全くまともじゃねえだろうが」
「……旦那様のお言葉を否定できないのが口惜しいです」
「それにモノ好き傭兵とか某国の父王? 野郎だし、問答無用で俺の命とか狙ってくるし、それに野郎じゃねえかよ」
「だ、旦那様はまさか男色の気が――」
「ねえよ! 断じてねえよ!!」
「そのお言葉を聞き、心底安堵いたしました」
「……と言うか、モテ期ってどうやったら突入できるんだろ?」
「旦那様も本当に、しょうもない事を本気でお考えになっておいでですね?」
「いや、しょうもなくないぞ? と言うかコレは真剣に切実な問題だ。むしろ俺の夢はいかにしてこのモテ期に突入するかに掛かっているともいえよう」
「それはある意味で他力本願極まりないですね?」
「そんな事はない」
「しかし旦那様のモテ期、ですか……本当にそのようなモノが存在するのでしょうか?」
「するよ!? 俺にだって人生に一度や二度、周りの女の子達からうはうはうふふな感じの時期が、時期が……」
「時期が? その続きは何でしょうか、旦那様?」
「ちくしょー!! 分かっているくせにそれを言うか、お前はっ!!」
「さて? 時折旦那様は私などの理解にも及ばぬ事を仰られる時が御座いますので、断言は致しかねますが」
「どうせ俺は今まで女の子にもてた事とかうはうはきゃっきゃうふふとかねえよ! 全然ねえよ!!」
「……どうしましょう、旦那様が大変卑屈になっておられます」
「卑屈って言うなっっ、どこも間違ってない、正真正銘の事実だろうが、コンチクショー!!!!」
「では卑屈になっている旦那様を励ますために、少々ばかり本音で語らせて頂きますが、」
「……何だよぅ?」
「旦那様に、今更モテ期などと言うモノは必要ないのでは?」
「俺がモテないのはそこまで当たり前だと言いたいのかテメェは、つかそこまで俺に塩を塗り込んでそんなの楽しいのか、楽しいのかお前は!!??」
「……想像以上に旦那様が卑屈になっておられます」
「くそっ、何だ、俺が悪いのか、それともこの世界自体が悪いのかっ、世界が俺に優しくないのかっ、どうなんだっ!!」
「優しくないか否かで言えば、間違いなく世界は旦那様に優しくはないかと」
「畜生っ! ――いや、否!! 今こそ集え、俺の力、世界をこの手に、モテ期と言う名の夢の世界を今こそ俺の手にっ!!!」
「……旦那様? 何やらいつもと違うような……何か変なモノでも接収なさいましたか?」
「変な!? 俺が変だと!? どこがどう変だって言うんだよぉぉぉぉ……」
「……はて? そもそもあの旦那様からモテ期など知う単語た飛び出すこと自体変だとは思いましたが……旦那様、本当に如何されてしまわれたのですか?」
「どうもしてないっ、俺はどうもしてないよ!? だから駄目なんじゃないか、だから不満なんじゃないか!!」
「……まさか旦那様、日頃からつもりに積もった鬱憤が弾けて遂に――? こうなれば仕方ありませんか、私が旦那様の事をこの身をもってでも静めて」
「し、沈める!? お、おま、俺をどうするつもりだっ!?」
「海の底に沈めます」
「くっ、遂にこの時が来たのか、――下剋上がっ!!」
「いえ、と言うのは少々冗談で、ただ旦那様はしばらくお休みいただいた方が宜しいかと思うのですが……」
「休むっ!? それは永遠の眠りと言う名の暗殺沈黙かっ!? 死体に口なしか!? ……――いや、フレッシュな死体と言う手もあるから別に死人に口がないと言う訳でもないか」
「……何やら旦那様の言が益々支離滅裂に。いつも通りと言えばそれまでなのでしょうが……」
「今、この手に、集えよ俺の混沌!! 今こそが祈願成就の時と心得よ――!!」
「――っ」
「いざ――、っっ!? ……ふへ?」
「――」
「……きゅぅ」
「――それを旦那様がなさるのは流石に冗談ではすみませんので。やはり少々お休み下さいませ」
「……」
「しかし、一体何が旦那様の本性をこのように現して……、と言うよりも一目瞭然ではありますが。旦那様、また新薬の実験に失敗しましたね?」
「……」
「本当に、もう。……――仕方のないお方」
俺の小宇宙!!……的なノリで。




