47.5 あか
いんたーるーど?
少し休憩です。
――あか
それは血に染まったかのような深紅の色。
それは生命の起源とでも呼べる真紅の色。
あかだ。……これは“あか”い色だ。
あかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあか――
それだけが頭の中を占める。それ以外は何もない。
一目で視線を釘づけにされた。
一目で心を奪われた。
一目で――の中にある全てを壊された。
だから何も考えられない、何も考えない。
目の前の赤はただ圧倒で、そしてどこか懐かしくて。
口を裂いて、今にも叫び出しそうになるこの感情は何だろう?
喚き散らして、誰かに伝えたくなるこの気持は何だろう?
あかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあか――
分からない。
何も考えない、だから分からない。
頭を占めるのは“あか”というただの二文字だけだから。それ以外の事は何も考えられない。
「あ、ああ……?」
口から言葉が漏れる。
口? 言葉?
それは一体何だっただろうか?
思い出せない、それとも初めから知らない? どちらにしても何もかもが思考の外にある。
「あ、……あああ」
口から溢れだす言葉を止められない。止める術すら、逆に紡ぐ術すらまだ深い深い霧の中。
言葉を取ってもつかめずに、考えようにもまとまらない。そもそも今まで言葉と言うモノを使った事があったのか、考えると言う事をしていたのかすらも分からないし、もしかしたらそのどちらもしていなかったのかもしれない。
だから。
――あるいはこの胸に湧き上がる衝動全ては初めてのモノで。
あかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあかあか――
“あか”は、女神シャトゥルヌーメの“あか”い色。
シャトゥルヌーメ、シャトゥルヌーメッ、シャトルヌーメっ!!
でも、だけれども。シャトゥルヌーメと言うのは、それは何だった?
「――――…………燎原?」
目の前のあかい色したあかい方。
わたし――違う、そもそも“わたし”とは何の事?――を呼ぶ声がして。
「――!?」
……ああ、女神様。貴女もお変わりないようで何よりです。
そう言うあなたは、誰?
そう問う“わたし”は、何?
「……アルーシア」
アルーシア? それが名前? “わたし”の名前? そもそも名前って、何???
胸震える衝動に。あのヒトがまたわたしの名前を呼んでくれる歓びに。
その喜びは誰のモノ?
そう考える“わたし”は一体、何?
――きっと始まりはそう、直ぐにでも忘れてしまう様に些細なこと。でも、とても大切なこと。
赤い子ぐるぐる。