ど-473. 憑いて来るッ
今日はふつーの、日常風景(?)です。
「……」
「……」
「……おい」
「はい、何でしょうか、旦那様?」
「何で付いてくるんだよ?」
「何故と申されましても、旦那様が向かうところであれば私もお伴するのはもはや自明の理であれば、さて今更どのように説明させて頂くのが最良でしょう」
「……いや、俺が言ってるのはそう言うのじゃなくてさ」
「そのようではない? では旦那様はどのような事を仰りたいのでしょうか?」
「俺が言いたいのはただ一つ、本当にどこまで付いてくる気だ、って事だけなんだが……」
「旦那様のいく所ならば、何処までもと申し上げております」
「……それは本気の本気で言ってるのか?」
「はい、当然では御座いませんか。何を今更」
「いや、今更って言えばどちらかと言えばお前がついてくるのが今更であって、」
「ふと思い立ちました。このままではいけない。堕落しきった旦那様が更に堕落しきってしまう、と。そうならないためにも常に私が目を光らせている必要があるのではないかと思った次第に御座います」
「ああ、そうか、そうなのか」
「はい」
「……まあ、それは百歩譲って良しとしよう、ああ良しとしようとも」
「ご理解いただけたようでなによりに御座います」
「だがしかし! これ以上は流石にどうかと俺は思う」
「何故でしょう? 旦那様は確かにお認め下さいました。私が付いてきても良いと、そう仰ってくださいました」
「いやはっきりとそう言った訳じゃないが……つかそれとこれとは別問題だと俺は思う」
「私は気にしません」
「俺、が、気にするんだよ!?」
「よいではないか、よいではないか」
「……それはちょっと使い方が違う気がする」
「ですから旦那様、私の事は周りにある空気か何かかとでも思い、お気になさらぬ様」
「随分と自己主張の激しい空気だな、おい」
「では空気のように静かにしておる事にします」
「……」
「……」
「いや、だからって言って本当に気配とか薄くしても意味ないんだが? 俺はお前にこれ以上ついてくるなって、そう言ってるんだが?」
「……」
「その空気とやらはもう良いから。何か答えろ」
「旦那様は本当に我儘に御座います。では私にどうしろと仰られるのですか」
「だからこれ以上ついてくるなって言ってるだろうが!?」
「私をこれほどまでに避けるとは……ま、まさか旦那様何かやましい事でもなさるおつもりですかっ!?」
「……敢えて訂正する気も起きないわけだが。一つだけ言うならざけんなバカ」
「旦那様にだけはバカと言われたくありません」
「と、言うか。俺がこれから何するのかくらい一目瞭然だろうが」
「一目瞭然なのですか?」
「……ここが何処かを言ってみろ」
「館の中で御座いますね」
「もっと具体的に」
「トイレの前?」
「そうだよ! だからこれ以上ついてくるなって俺は言ってるのっ!! って、もう限界だから俺は行くぞっ、付いてくるなよ? お前は絶対ついてくるんじゃねえぞ!?」
「……さて、仕事に戻るとしましょうか」
いつものこんな感じ。