47. どれいと“あか”
~これまでのあらすじ~
スィリィ嬢の暴走で命を落としかけたものの(?)シャトゥの機転(??)で助かったレム君。
……でもそうは問屋を卸さない。
シャトゥ・・・残念な赤い子。色々な意味で残念っぽい。
シンカ・・・気絶中の、絶賛不幸中な巫女さん。未だ気絶中なのです。
スヘミア&レアリア&イチ・・・現在、傍観者な皆様方。
アルーシア・・・赤い子2号? 口のきけない奴隷の女の子で、でも“女神様”と会って――?
「「「……」」」
――ぁ
「うむ? もしかして私のぷりてぃ加減に見惚れてます? 見惚れてます? ……てれてれ」
「いや違うぞ、シャトゥ。どちらかと言えば呆れられてるから」
「呆れる? レムのダメさ加減にですか?」
「違うっつーの。俺じゃなくてお前のダメさ加減にだ」
「レム、私をダメダメ扱いするなんて随分と偉くなりましたね?」
「と言うか俺はシャトゥが駄目な奴じゃなかった時を見た事がない」
「……うむ? 私はいつでもシャトゥちゃんです!」
「いや、そりゃそうだろ」
「うむ!」
「……まあ、取り敢えず。周りの奴らが展開についていけてないから何とかしろ、シャトゥ」
「うむ?」
「「「……」」」
「をぉ? ……ほら、私の目の前で寝ているのは失礼なので起きなさいなの」
「いや! 態々更にややこしい事態にしなくても――つかこんな状態で起きたらシンカだって混乱するだろうしっ」
「この子は可哀想な子なのです。でもレムに襲われたのは諦めるしかない?」
「断じて襲ってない! ……まあ、憐れっつーか、最近踏んだり蹴ったりっぽいのには同情しなくもないけど」
「それはいつも通りレムの所為ですか?」
「……まあ?」
「うむ。何となくいつも通りのレムで安心です」
「んな事で安心をおぼえているシャトゥの将来に不安を覚えなくもない」
「そう言う訳で起きるのです、シンカとやら?」
「いや! だからどうしてそうややこしくなる方に事態を動かそうと!?」
「ん……んんっ?」
「起きるのです、さあ起きるのですっ! ……何となく楽しくなってきました!!」
「いや起きるなシンカ! 今ここで起きると大変な事になるぞ、だから起きるんじゃない!!」
「……ん゛、んんん??」
「レムめっ、私の邪魔をするとはちょこざいにゃ! ……噛みました」
「まあまずは少し落ち着け、シャトゥ」
「――って、ちょっとちょっとちょっとっちょっと!! 待ちなさいっ、少し待ちなさいよ!!!!」
「ふみゅ? しょーいうあなたはどちら様?」
「紹介しよう、シャトゥ。こちら、俺にぞっこんラブなスィリィさん」
「――うむ」
「そうよ!! 悪い!!??」
「うむ! つまりは我の恋敵、勝負ならば奇襲不意打ち闇討ち不意打ちで受けて立つのです!!」
「いや駄目だろ、それ。つかスィリィ――」
「受けて立つ? ……いい度胸じゃない。良いわ、私も相手してあげる」
「ふふっ、クゥワ(ばか)の下にしておくのはもったいない気概なの、【冰頂】の子」
「――何でかしらね? そのまるで上から見るような言動も不思議と気にならないわ。見かけのせいかしら?」
「いえ、私はどちらかと言えばとても頭が低いのです。そして私がチミッコなのはレムの趣味だ!!」
「「――えぇ!?」」
「いや違うから。スィリィ、それにスヘミアも。違うから。俺の趣味違うからそう言う目で俺を見てくるのは止めような? つか止めろ」
◇◆◇
「「「「……」」」」
「何か視線増えてる!? 増えてるよ!?」
「「「「……」」」」
「やめてー、皆、俺の事をそんな目で見ないでー。そしてどちらかと言えば熱のこもった熱い視線を向けてくれると俺としては嬉しい」
「「「「――」」」」
「わーい、何かさっきより温度下がったよ? 視線の温度下がったよ?」
「「「「――」」」」
「……と言うか、今更ながらに何で俺がこんな目で見られてるわけ?」
「多分、レムが私と浴場したからだと思います!」
「「「「――」」」」
「更に視線が凄い事に!? つかシャトゥ、事実無根の事を話すのは止めようね!?」
「でもレムは私と浴場して興奮してるの?」
「「「「――」」」」
「してない! してないから!! と言うかシャトゥの言ってる事は若干ずれてる気がする!!」
「そんな事はありません。もうレムの照れ屋さんー」
「「「「――」」」」
「しゃっ、シャトゥ! いい加減にしないと怒るぞ、俺!!」
「う、うむ? 怒られるのは嫌なのです。私、悪い子? 悪い子じゃないの、違うのです」
「「「「――あんな小さな子を」」」」
「いやだから何で俺に!? と言うかシャトゥの事を知ってるスヘミアさん!? 何か弁明を!!」
「――レム兄様、もっと反省した方がいいと思う♪」
「何故に、てか何を!?」
「さあ、レム、覚悟は良い?」
「さあ、レム兄様、覚悟は出来た?」
「さあ、レム、私刑の時間よ?」
「レムっ、お祭りですかっ!?」
「いやちょっと待とうよお前ら!! と言うよりもだから何でいつもこんな事に!?」
「「「「――きっと、レム(兄様)が悪い所為だと思う」」」」
「だから何で――っ!?」
◇◆◇
――ぁ
「――?」
「「「「じゃあ――」」」」
初め、その声は気のせいかと思った。もしくは聞き違いかと。
――それでもそれは間違い勘違いではなく。
――あ、あぁ……???
故に。
「――ちょっと“待て”、お前ら」
「「「「……っぁ?」」」」
何よりも優先されるが故に他の全てを“遮断”した。
――ああ? ああぁ……
結果、その呻き声に気付いたのは、二人。正確には気圧した張本人と、気圧されなかったただ一人。
その二人の視線は同時に同じ方向へと向かい。
「――――…………燎原?」
紅き幼女の一声に。
「――!?」
赤の少女が驚愕に目を見開いたまま、身を震わせた。
さんじっぷん、おくれたです。