ど-463. 海だ、水着だ、ぶちのめすぞー
基本、従順なメイドさん。
「海だー!!」
「砂浜だー」
「水着だっ!!」
「所持しておりません」
「ぶーぶー」
「ご期待に添えず申し訳ございません、旦那様」
「――はっ!? そうだ、水着を創ろう」
「お断り致します」
「な、なんでだよぅ」
「何故私が旦那様の性癖劣情にお付き合いしなければいけないのか、そちらの方こそご説明を頂きたいです」
「俺が見たいからだ!!」
「……」
「……」
「……仕方ありませんね。ソレが旦那様のお望みとあるならば、」
「あ、いや、別に希望っつーか、単なるノリで行ってみてただけです、はい」
「――」
「な、何か怖いなぁ。いつもと同じ無表情のはずなのに睨まれてるように感じるのは何故にホワイ?」
「それは私が睨んでいるからでしょう」
「に、睨んでいるのか」
「はい。加えて申し上げるならば少々旦那様に腹を立ててもおります。そもそも、旦那様が急に私の水着をみたいなどと」
「あ、それは割と本気」
「……」
「……」
「――旦那様、もしかして狙ってらっしゃいます?」
「狙う? 何をだ?」
「……いえ、何でも御座いません。狙っていたのならばそれはそれで、私本当にブチ切れてしまいそうですのでこれ以上の詮索は止めにしておきます」
「って、ブチ切れるとか怖い事さらりと言うな」
「では私の好感度と言う名の怒りパラメータを今から旦那様にも理解しやすいように体験していただきましょうか」
「……体験?」
「具体的にはもう殺してくれと言うような、或いはもっととせがむような――半殺し程度からでしょうか」
「よし、遠慮しておこう」
「いえ、遠慮を遠慮して下さいませ」
「い・や・だっ!」
「――」
「――」
「……ところで旦那様、私の水着姿を見たいと言う事でしたが、」
「ああ、うん、そうだな。見てみたい、……かな?」
「海に来たら水着と言うその短絡思考は何とかなりませんでしょうか?」
「いや、海と言えば水着! だろう?」
「ヘンタイ」
「うぐっ……いや違うぞ。違うからな?」
「まあ旦那様が其処らの変態には遠く及ばない程の最上級の変態である事実はかねてより分かっていた事ではありますが、」
「い、いや。と言うか何で水着一つ見たいって言っただけでそこまで言われなきゃいけないんだ、俺」
「……ちょっとした照れ隠しですので流して頂く事を希望致します」
「あ、そうなのか」
「はい。そう言う事にしておきます」
「……最後の一言が余計だね?」
「しかし旦那様、私は正直水着などの薄着や、海に入るなどと言った身体の冷える行為そのものがあまり好きではないのですが――」
「寒さで身体が動かなくなるもんな、お前」
「いえ、そこまでとは申し上げておりませんが。……そうですね、寒いのはやはり苦手です」
「ふっ、そう言う意味でも俺はお前の水着姿を見たい!!」
「……何でしょう。旦那様、急に旦那様を海の藻屑に変えたくなってきたのですが宜しいでしょうか?」
「宜しくないぞ、それは」
「どちらかと言えば了承を取らずとも海の藻屑に変えたいのですがよろしいでしょうか」
「だから宜しくない」
「では取り敢えず――」
「と、取り敢えず?」
「……水着に着替えてまいりますので少々お待ち管いませ、私の旦那様」
「あ、ああ?」
「……着替えをご覧になりたいと仰られるのであれば同行を提案致しますが?」
「いや、いい。うん、俺の事は気にしなくて良いから……着替えてらっしゃい」
「はい。では――ああ、それとこちらは旦那様の水着と言う事で」
「ん? ああ、分かった。じゃあお前が着替えてるうちに俺も」
「露出狂ですね、旦那様」
「……良いから、お前はさっさと行って来い」
「――はい、では旦那様、期待に胸を膨らませながら少々のお待ちをして頂けるならば重畳に御座います」
「はいはい、期待させて頂きますよー」
「……、では」
とある護衛の独り言
「……お姉様、胸……いえ、将来に期待しましょう、ええ!」