ど-452. 見てはいけない、目を逸らそう
しっ、見ちゃいけません!! ……的な何か。
「自分を見つめ直した結果……先ずはお前に対するツッコミをどうにかした方がいいと思った」
「左様でございますか」
「ああ、左様なんだよ。俺ってお前の言う事にいちいち反応してばっかりで、もう少し人生の余裕と言う奴があった方が良いって事に気がついたんだ」
「それは……良い発見かと」
「だろう? と言う訳だからお前がどんなにボケても俺は一切ツッコミをいれないつもりなんでそこのところ宜しく」
「私はボケた事など一切御座いませんが……旦那様のご意思の程は理解いたしました」
「よし!」
「……」
「……」
「……」
「……んで、何か言う事は?」
「それは遠まわしに私にボケろ、と仰っておられるのですか?」
「いや、そんな事はないぞ。大体お前がどんな事をしても俺は過剰反応する気ないしなっ」
「……些か理不尽である気も致しますが、元より旦那様ご自身が理不尽の塊である点を考慮すれば気に留める必要もないのでしょうか?」
「さあいつでも来いっ、俺の準備は万全だ」
「では――旦那様、あちらをご覧ください」
「あちら……?」
「あちらに御座いますのが猪突猛進、別名マザコンあるいはシスコンとも名高い『静鎮』クゥワ・とろ? びぇっ……様に御座います」
「……何だ、アレ」
「想像はつきます」
「まあ、俺も一応は。と言うかまるでボロ雑巾の様だな」
「シャトゥより受けている情報から推察いたしますに、ほぼ間違いなく返り討ちにあったかと」
「だろうな。……いや待てよ? と、言う事はもしかして近くにシャトゥがいたりするのか?」
「いえ、それはないかと。シャトゥから連絡が届いたのが今より十日前。その時に『青いのしつこい、嫌いですっ』と言っておりましたので、ならば徹底的にひねりつぶしてやるべきであると進言しておきましたので――恐らくはその時のものかと」
「十日前か……。ま、思えばシャトゥがいつまでも『静鎮』の近くにいるわけないしな」
「そうですね。久方振りにシャトゥと再会なされると胸を高鳴らせていた旦那様には大変残念なことでは御座いますが、仰る通りかと」
「誰も胸高鳴らせてなんて……いや、何でもない」
「? 如何なされたので、旦那様?」
「いや、別にお前の言う事にツッコミとかボケをかます気は全く微塵もこれっぽっちもないんだからな、とか言う事を態々言う気はない」
「既に仰っておられますが?」
「……」
「もうっ、旦那様はオオボケのボケボケの頭本当にあるんですか? レベルの鳥頭で御座いますね♪」
「なんでそんな嬉しそ……いや何でもない」
「旦那様、御無理は身体に悪いですよ?」
「俺は無理なんて何もしていない。それよりも今問題なのはアレをどうするか、だ」
「アレとは……『静鎮』ですか? 放置すればよいのではありませんか?」
「……それもそうか」
「はい」
「じゃ、アレは一切放置する方向で。まあ俺としてもあんなのに関わりたくもないし」
「結果は目に見えておりますし、先ず間違いなく旦那様は敵視される事請け合いに御座いますからね」
「……俺、あいつとは初対面、つかまだ会った事もないんだけどなぁ」
「ですが、巷で人気と噂高いあちらの『静鎮』とは異なりむしろ皆様方より、特に女性の方々より避けられている旦那様はご理解されておられるのでしょう?」
「俺、あいつ嫌い。つか俺よりモテる奴とか、いなくなればいいのに」
「ではここは旦那様を立てて、そのようなモノは既にこの世界にはおりません、と申し上げておきましょう」
「いや、んなあからさまな世辞を言われても……」
「実は世辞ではなく真意かもしれませんよ?」
「……」
「今、少し『お、俺って本当はモテてる?』などとお考えになられました?」
「そ、ソンナコトハナイヨ」
「左様でございますか、実はモテモテな旦那様」
「……嫌味なんて気にしちゃダメだ、気にしちゃダメだ、気にしちゃダメだ」
「――今のが嫌味である、とは必ずしも決まってはおりませんが……まあ旦那様がそう思われるのでしたらそれはそれで好都合ですので訂正は致しません」
「兎に角。ここからは直ぐに離れよう。あんなのの近くにいたりすると碌な事が起きない気がする」
「旦那様はどちらに居られても碌な事が起きていないとご指摘いたします」
「……取り敢えず、今はここから離れようか」
「はい、旦那様」
「……あぁ、今日はいきなり嫌なモノ見たなぁ。ったく、一日の始まりとしては縁起が悪いったらねぇ」
「起床一番に私をご覧頂いたことでプラスマイナスゼロ、帳消しですね、旦那様」
「……はぁぁぁぁぁ」
「……そのため息は、些かながらに傷つきます」
……最近、ちょっぴり朝が辛い。……単なる寝不足か。でもネタが思い浮かばねぇぇぇ~~