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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさんとご主人様
754/1098

まつり(中)-2

……駄目だ。……アレは誰だ?

◇◆◇




『龍神』は――当然動かない、動けない。


恐怖とも畏怖とも知れぬ、彼自身初めてもてあます己の感情に身体の方が“動く”と言う事を忘れていた。




「旦那様、許可を――」


「って、お前は何物騒な事」


「しかしコレは旦那様を殺そうと――例え不可能であろうと殺そうとしました」


「んなの割といつもの事だろうが。それとも何か、こいつが龍種だって言うのにムカッ腹でも立ったか?」


「そう言う訳では御座いませ、いえ、そうかもしれませんが……しかし相手は龍種……如何に旦那様と言えども億が一、万が、いえ百……十?」


「……おい」


「そうですね。旦那様ならば――たとえ相手が草木であろうとも不覚をとります。ええ、旦那様はそう言うお方です」


「それはどこまでの阿呆だっ!?」


「ここにいる旦那様と言う旦那様で御座いましょう?」


「違うっ!! あと、いい加減にその龍神サマを解放してやれ。――何か呼吸する事も忘れてるっぽいから」


「……旦那様の仰るままに」


「ああ」




「――っぁ、……はっはっはっはっはっはっはっ」




女の姿が背後から消えて――そしてようやく、『龍神』は呼吸を、身体を動かす事を思い出したかのように荒く息をついた。




「あーあー、可哀想に。お前なぁ、自分がどれだけ酷い事をやってるのかって自覚あるのか?」


「……酷い、とは?」


「例え誰かさんとお前を勘違いしてたからと言って信用を見事に裏切ってるって事。お前に分かりやすく言えば――ある日唐突に俺が本気で『あ、お前もういらね』とか言うのと同程度の事をやってると思え」


「……」


「どだ? 少しは自分がどれだけ非道な事やってるかって自覚でき――」


「……」


「って、おーい?」


「……」




ぽろぽろと、ぽろぽろと女の両目からは大粒の涙が溢れ出す。瞬き一つ、反応ひとつすることなく、ただ涙を流し続ける。




「――っ、てオマ、いきなり何泣きだし、」


「……」


「あぁもうっ、お前がそんなだと、」




「――もう良い。オレの命などもはやどうでもいい。お前は殺す」






憤怒――それすら生ぬるい程に怒りに身を染めた『龍神』の姿がそこにあって。




「……ですよねー」




『龍神』の姿が掻き消える。少なくとも常人にはその様に視えたはずで――




「しっかし常々思うけど龍種と言い、つっても龍種なんて今時珍しいから本当に偶にだけどっ」




――炎に濡れた『龍神』の拳が男の頬を掠って抜ける。それも一発だけではなく、秒間数十発に及ぶ全ての拳が男の頬を浅く斬り裂き、また髪数本を焼き散らして正に目にとまらぬ速さで抜けていく。




「妖精族のヤツらと言いっ」




――憤怒に塗れた瞳が近距離から男を貫き、大きく開かれた口から吐き出された紅蓮の獄炎が男の薄皮一枚を焼いて通過する。




「どうしてこうっ、忠義心に厚い奴ばっかりなんだろうなっ」




――『龍神』の両腕が、そこにある凶悪なまでに鋭利な爪が空気を切り裂き、そして男の服を軽く撫でていく。




「ヒトはっ、小人族は裏切りとか不信とかそういう奴ばっかりなんだけどなぁ~」


「くっ、何故だ、何故当らない!?」


「何でも何も、お前が俺よりも弱いって言う純然たる事実があるから当然の結果だと俺は思うけど?」


「バカなっ、そんなバカな事が、小人族がっ、龍種であるオレに勝る筈が――」


「けどまぁ、事実は事実だしな~、と、ほいそこ隙」


「っなぁ!?」




何気なく、半歩にも満たない程度に出された足に引っ掛かって、転んで地面を転がる『龍神』の姿。


それを見下ろす男の表情に変化はない。終始、締りのない半笑いの様な表情を浮かべたままである。




「ま、久しぶりにあいつを泣かせたのは悪かったと思ってるけど、」




――下から突き上げられた炎の拳と柱は、男の眼前を通過して天高く昇っていく。




「と言うよりもたったあれだけで泣きだすあいつもあいつと言うか……はぁぁ、ホント困ったもんだ」


「我らが“姫”をっ、愚弄するな!!」


「いや別に愚弄してるつもりは、と言うよりも今更ながらに勘違いを正してやるけどさ、あいつはお前らの姫ってわけじゃないぞ?」


「なにをっ、ふざけた事をっ! あの御髪、そして瞳っ、何よりも龍種オレの魂を震わせるあの魔力と存在感っ!! オレが間違うはずがないっっ!!」


「って言っても違うもんは違うしなー。それにあいつはお前らの姫っつーか……――俺のモノだ」




「――」




その瞬間、軽く息を飲んで生気を取り戻したモノがいたのだが、二人は――あるいは『龍神』は気付かなかった。




「なっ、きさ、何たる暴言を――」


「うるせ、黙れ、崇めたたえられた風情の龍種程度が。龍種おまえらに、てか誰にも……あいつら自身が望まない限りたとえ相手が神だろうとあいつをくれてやる気はさらさらないんだよ」


「あいつ、……ら?」


「つーわけでいきなり襲ってくるような、しかもあいつを寄こせとか勘違い発言をするようなおバカな輩には軽~くお仕置きが必要な訳だが、」




瞬間、男の姿が『龍神』の目の前から消えた。文字通り、『龍神』でさえとらえきれぬほどの速さを以て。





気がつけば夜でした。……怠け過ぎて終わりませんでした(汗)。

長くは続きませんのでご安心を!

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