ど-438. ばつ……?
のんびりと、まいぺーす。
「ははぁー、お嬢様ー」
「……」
「は、ははぁー、お嬢様ー」
「……何ですか旦那様、その気色悪い喋り方と態度は?」
「いやお前がやれって言いだしたんだよね、コレッ!?」
「確かにその通りですがそれがどうかしましたか?」
「自分でやれとか言っておきながらその文句はどうかと思うっ!!」
「私の事はお嬢様ではなくどちらかと言えばマイハニーと呼んで下さいませ」
「……呼んでほしいのか、それ?」
「はい」
「……、……まいはにー」
「何ですか旦那様、その気色悪い喋り方は?」
「だからお前がやれって言い出してるんだよね、コレ!?」
「そうですがそれが何か?」
「いい加減、つか俺にどうしろと!?」
「そもそも旦那様はなぜ急に私に従順になるなどと言う旦那様のアイデンティティを全て捨て去るような振舞いをなさっておられるのですか?」
「……いや、まあ。勝負事をしてそれに負けたからには言う事を聞くのは当たり前のことだろう」
「勝負事? そのような事、しておりましたか?」
「して……ない気もするな」
「私は私の事情で旦那様を捕まえようとしたところを旦那様がご勝手に逃亡なされたのは確かですが、勝負をしていた覚えは御座いません」
「確かに。じゃあ俺は何でお前の言う事なんて聞かなきゃいけないんだ?」
「そのような旦那様の特殊な趣向の思考を敢えて私から言ってほしいと仰られるのでしたら全力でドン引きしながらお答えいたしますが、如何なさいます?」
「……だよな。考える必要もないくらいに、お前の言う事聞く必要性がないよな」
「愛ゆえにと言う理由はいかがでしょうか、旦那様」
「ないな」
「ないですか」
「ああ、ない」
「左様で。……では旦那様」
「? 何だよ」
「これから私が言う事には全て“はい”でお答えくださいませ」
「……何か嫌な予感しかしないから断る」
「旦那様の無謀極まりない夢と言うのはハーレム、つまり女性を囲っておばかな生活を送る事ですか?」
「……はい」
「旦那様は私の旦那様であらせられますね?」
「……まぁ、そうだな、うん」
「旦那様の初恋は――」
「はいっ! もう分かったからそれ以上言うなっ!!」
「では最後の質問です。その場で這いつくばって地を舐めながら『私は貴女様の従順な下僕です』と言ってみて下さい」
「誰が言うかっ!!」
「ちなみに言えば私から心底呆れられるという特典が付きます」
「益々やる気が萎えるな」
「……では旦那様」
「何だ? まだ何かあるのか?」
「そろそろ次の街に参りましょうか」
「……それもそうだな。いい加減野宿にも飽きてきたところだし、追いかけっこのおかげで今の位置もよく分かってないし――で、ここはどのあたりだ?」
「さて?」
「さてって、お前……」
「ここを何処とも知らず彷徨い歩いてみると言うのも偶には良いのでは御座いませんか、旦那様?」
「……それもそうか」
「はい」
「んじゃ、まあとにかくヒトの居る所まで行くかぁ」
「はい、旦那様」
【ラライとムェの修行一幕】
「……」
「あ、あの師匠ー?」
「……」
「師匠ってば!」
「……何、男の子?」
「もういい加減期限なおして、というかアレは師匠が寝ぼけて勝手に男湯に入ってきたんでしょうがっ!!」
「……裸、みられた」
「いや、裸じゃないし。服ちゃんと来てたし」
「……裸、みられた」
「そりゃ、服が濡れて身体のラインは――……って、何言わせるんですか、師匠っ!?」
「……裸、みられた。レム様にもまだ見られた事……、はあった気もするけど。でも」
「……あぁもう、どうやったら機嫌なおしてくれるのかな、このヒトはっっ」
「……くー」
「って、いつの間にやら寝てる!?」
オネムです。