ど-418. そうなんです
……短っ
「旦那様、雨で御座いますね?」
「……見ればわかる」
「旦那様、大時化で御座いますね?」
「それも見ればわかる……っていうか、お前は何平然としてるんだよ!?」
「? 如何なされたのです、旦那様?」
「俺ら! 今、ぽつりと大海原の上!!」
「はい、そのような事叫ばれずとも重々承知しておりますが?」
「そして海は今! 大時化だっ!!」
「それは先程私が申し上げました」
「お前はっ、状況が分かってるのか、と言うか波高!?」
「ご心配なく。私は結界を張っておりますので例え外界がどのような状況であったとしても、私の周囲は波風一つ立たぬほどに凪いでおります。まあ、結界などなくともこの程度の嵐平気ですが、服が濡れるのは嫌ですので」
「……俺も、何とか結界の式をくみ上げようと先程から懸命に頑張ってはみているのですが?」
「旦那様も強情で御座いますね。私もこの身、全身全霊をもってして旦那様のなさろうとする事を邪魔している最中です」
「やっぱりテメェが邪魔してたのかよ!! て言うか何で邪魔なんてしてやがるんだよっ!?」
「男性はこのような嵐や逆行を好むと以前誰かからお聞きした気がしましたので、心ならずも旦那様のお手伝いをして差し上げようかと」
「全然手伝いじゃねえよ、てかさっき自分で邪魔してるとか思いっきり言ってたじゃねえかっ!!」
「アレは言葉のあやです。もしくは本音かと」
「本音かっ、本音なのかっ!?」
「そうこうしている間に次のビックウェイブが来ました、旦那様。御準備を」
「準備って!? 準備って言ってもこの状況で何をしろと!?」
「お心をお決めになられる時かと」
「何の心を決めろっていうつもりだよ、テメェは!!」
「それは――ぁ」
「――」
「旦那様が海の藻屑に」
「って、なってたまるかぁぁ!!」
「おや旦那様、ご帰還おめでとうございます」
「帰還めでたくないよ!? 今溺れかけたよ、俺! そして死ぬよ、普通!!」
「……背丈の十数倍はあろうかと言う波に飲み込まれて“溺れかけた”で澄んでいる旦那様は既に十bん普通ではないと思いますが?」
「必死の時にこそ出る力もあるっていう事だ。と言うか次着たらマジ死ぬ、死ねるからな、 だからさっさと俺の邪魔をするのを止めろ」
「私、旦那様のちょっと格好いいところを見てみたいです♪」
「何その愉悦に浸りきった笑顔は!? つか既に邪魔する気満々ですね、お前はっ!!」
「そうしている間に第二波が来ます、旦那様」
「ちょま、冗談じゃ――」
「冗談では御座いません。そして――おや? ……、……、旦那様が、浮かんできませんね? ……まあ、旦那様の事ですので大丈夫でしょう。しばし、旦那様をお待ちするとしましょうか」
【ラライとムェの修行一幕】
「剣の修業をする」
「……やっと普通の修業ですか、師匠」
「ふっ、私の動きについてこれる……かな?」
「僕だってそれなりに鍛えて……、――」
「ムェ、私、後ろ」
「っ!?」
「そっちじゃない、だから」
「後ろっ!?」
「違う、下」
「なっ!?」
「そっちもハズレ。今は上」
「っっ!?」
「そっちじゃなくて、今はもう目の前だから」
「……いや、早すぎます、師匠。と言うか、全然、見えません」
「よし、それでは今からムェをフルボッコします。頑張って避けるように」
「っ、だから師匠の動き全然見えっ、ぐ、ぶ、げ、へ、っ、っ、っ、っ、っ、っっっっ――……」
「……ムェ、遅過ぎ」
休日は相変わらず怠け癖がついております。
……う~む。