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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさんとご主人様
704/1098

SP XXX. スフィレイア

ムェ君(元・王子様)は只今絶賛、ラライに拉致されて修行(?)の最中です。

「――一つ、この世に広がる悪を許すなと私の旦那様が語る」


「……」


「二つ、この世に広がる旦那様をお仕置きするべしと私が語る」


「……」


「三つ、……もはや申し上げる事もないのでお覚悟を」


「……っていうか、お前何かテンションおかしくねえ?」


「――いえ。久方振りに、良い意味で血が騒ぎましたもので」


「血が、ねぇ……」


「何か?」


「いや、別に。まあ、確かに本当に綺麗だったもんな、レイアの歌」


「そうで御座いますね。歌声に魅了の魔力を込めていたのはいただけなくはありましたが、それさえなければ」


「だよなぁ、もっと自信持てばいいのに。歌でだけっていってもお前に張り合える奴なんてそうそういないだろうし?」


「私はこの世界のもの全てを歌で魅了する自信があります……旦那様を除いて」


「歌、っていうか……お前の場合それ以前だし。と言うかそんな大それた事企んだりするなよ? お前だと企みを実行した時点で世界征服とかされてそうで怖いんだから」


「その時は旦那様がこの世界の王ですね♪」


「……何か嬉しそうな気がするのは俺の気のせいで合ってるよな?」


「いえ――」


「うん、そうだな気のせい。そう言う事にしておこう」


「遂に旦那様が世界の頂点に立つ日が――っ!!」


「無駄に力説するの止めろ。何度も言ってるけど俺はそんなモノになる気はないから。大体何でそんな七面倒くさい事を俺がやらなきゃいけないんだ」


「私たちが唯一認めたお方だから、だけでは不服で?」


「不服だ」


「ではこの世界の神に認められたから、と言う事では?」


「認められた覚えはない」


「では今すぐシャトゥに首を縦に振らせて参ります」


「や・め・ろっ!」


「誠に残念では御座いますが旦那様がそう仰られるのでしたら承知いたしました」


「大体、世界の王様とかそんなこと考えるのはバカな野心家くらいだろ。世界を手に入れたからって何が楽しいんだよ、ったく」


「……確かに、旦那様と一緒にいる時間が少なくなってしまうと考えればこれほど苦痛な事は御座いませんか」


「お前の方の理由は放っておくとして。そう言う訳だから俺を王様にしようとかバカな真似は今後止める……と言ってもどうせ聞かないだろうし、せめて控えるように」


「旦那様の御心のままに」


「ったく」


「いつかその日をお待ちしております」


「……一生来ないからな?」


「はい、“今のところ”はそれで」


「……はぁぁぁぁ。――んで、覚悟、とか言ってたけどどうするつもりなんだ、コレ?」




メイド服を着た、くすんだ銀髪の美女と冴えない感じの男。


二人の会話には特に変わったところはなく、声のテンションや二人の仕草、何気ない呼吸に至るまで全てが平然としたものだった。


街中で、二人が同じ会話をしていても誰も気に留めない――精々メイドの美貌に心と言わず魂を奪われる程度――のものである。




――眼前の光景さえなければ。




「さて、そこまでは考えておりませんでしたが、如何致しましょうか?」


「俺に聞かれてもなぁ」


「旦那様とお話しさせていただいた所為で気分の高鳴りも収まってしまいましたし……引きあげましょうか?」


「引き上げるって、これを放っておいてか?」


「はい。何か不都合でも?」


「不都合……は、特にないか」


「はい」


「しかしこれでまた変な噂が立つわけだ。『くすんだ銀髪のメイド服着た女が一人で一国を落とした』とか」


「落としなどておりません」


「つか、これはもう陥落でもいいんじゃないかと思うんだが?」


「そうでしょうか?」


「そうだろ。だって――」




二人の眼前に広がるのは剣や槍、弓や杖を構えて、今にも斬りかかったり魔法を撃ってきたりしそうな兵士たちの姿が、何万という単位であった。


その誰もが打ちかかろうとした姿勢のまま、ピクリとも動かない。まるで出来の良いロウ人形か何かでも並べているような光景――だが時折、忘れたように唾を飲み込む彼らの姿から、全員が生きたヒトであると分かる。




それは今正に一発触発な雰囲気だった。だが誰も動かない。まるで金縛りにあってしまったかのように身動ぎ一つ、疲れたからと言って剣を置いたり引いたままの弓を手放したりする事もない。


固まったままの兵士たちの後ろの方で――恐らく“こちら”が見えていないのだろうが――怒鳴り声が聞こえるがこの光景を前にその声は単に場違いなだけである。






「――なぁ?」


「なあ、などと気の抜けた同意を私に求められても困るのですが? いえ、ですが旦那様の手前、一応ここははいそうですね、と同意をしておいた方が宜しいのでしょうか?」


「いや、お前、この目の前の光景を見て言う事は何かないか?」


「まるで人がロウ人形のようだ――と旦那様ならば仰られそうな光景で御座いますね?」


「ごめん、それ思った」


「そうでしたか。流石は、悪い意味で一切期待を裏切らない旦那様」


「ま、まあとにかく。他には何かないのかよ?」


「そう、ですね……皆様大変にお疲れのご様子ですね?」


「確かに。何か一アクションあったりしたらパニックになりそうなくらいには張り詰めてるような、皆」


「旦那様、ここは危険ですのでっ」


「とか言いつつ、良い具合に張り詰めてる兵隊さんに俺を押しつけようと背中押してくるのは一体何のつもりだ」


「おやまあ」


「おやまあ、じゃない」


「私とした事がついうっかり」


「だから何が『私とした事が~』、なんだよ。テメェは全部確信犯的にやってるだろうが」


「はい、そうですね」


「……だから性質悪いんだって―の」


「ご心配なく、旦那様に対してだけですので」


「そっか。なら安心だなっ!」


「はいそうですねっ!」


「……」


「……」


「……仕方ない。取り敢えずはこれでこいつらも懲りただろうし、引き上げるか。国の軍隊全部つぶして帰るってのもやり過ぎだしなぁ」


「いえ、女性一人に無理矢理詰め寄った代償としてはこの程度が丁度よいのでは?」


「それはいくらなんでも高すぎる気がする」


「そんな事は御座いませんとも」


「いや高いだろ――て、こんなところでする言い争いでもなし。さっさと引き上げて、お互いの意見の相違は場所変えてからじっくりとするか」


「そうですね。では――、とその前に一つだけやり残したことが御座いました」


「やり残し? 何だ、それ」


「はい。このまま私どもの記憶を鮮明に覚えて置かれても面倒ですので、少々幻覚を見せて記憶を混乱させておかなければ、と」


「……お前、もしかしなくても今までもそんなことしてたのか?」


「アフターケアは大切ですので」


「……まあ、そっか」


「では――今回“も”旦那差が全ての悪事の原因であると――」


「って、ちょい待てお前!!」」


「? 如何なさいましたか、旦那様?」


「いや、如何とかじゃなくて。何で俺が全部責任おわせられる、みたいな展開にしようとしてるんだよ!?」


「このような旦那様に一軍全てを叩き潰されたとあっては、きっと皆さま今後一層の精進に励まれること間違いなしで御座いましょう」


「ああ、それはそれで……て、認めたくないものもあるのだが。つかそんな事をするくらいならいっその事、訓練の一環で全軍ここに来てました、見たのは夢です、ってな感じにしておけよ」


「成程。旦那様を夢枕に立たせるなど……何と恐ろしい事をお考えになられるおつもりか、旦那様はッ!!」


「え、は? 何でそれが恐ろしい事につながるんだ?」


「……口に出すのもおぞましい」


「――ッてちょい待てお前、今何を考えてやがった!?」


「……さて、何の事ですか、旦那様?」


「何の事、じゃねえだろうが。兎に角今考えてやがった事を――」


「旦那様」


「……何だよ、俺は未だ言ってない事が、」


「それよりも。一旦、引き揚げましょう」


「あぁ? ――って、あぁ、成程。この近づいてくる魔力か?」


「はい。取り敢えず、旦那様のご所望通り彼らは達の悪い夢を見ていたと――恐怖だけは刷り込ませたままで」


「だな。それなりに力の強い奴が来てるみたいだし、厄介事になる前にさっさと引き上げとくか」


「はい。では――」


「っし。じゃあ退却だ!」


「――――では皆様方、良い悪夢を」






◇◆◇




――しばらくして。


地面に倒れこんだ数万の軍勢の中を通過する二つの影があった。




「……む? 皆してお昼寝?」


「みたいですね、と言うより今更です、お師匠様」


「私も一緒――」


「は、止めてくださいね? ……こんな真っ当じゃなさそうな事、関わらない方が良いんだから」


「……ムェ、冷たい」


「冷たくて結構です」


「……そう言えば、ご飯まだ?」


「……師匠が今手に持ってるのは何ですか?」


「……ごはん、のようなもの」


「じゃなくて、正真正銘の師匠のお昼ご飯です、それ。だから、今師匠はご飯を食べてる最中。分かりましたか?」


「……ん」


「全く、何処かの老人みたいな事を言わないで下さいよ、師匠」


「ごめん。……ところでムェ、ご飯は?」


「……師匠、今の僕の話、聞いてました?」


「……喉、乾いた。水」


「………………もうぅぅぅ、この寝ぼけ師匠はァァァッッッ」


「私の前に立つなぁぁぁ!!!!」


「――って師匠、いきなり何凶行を!!??」


「私の前にいていいのはレム様だけ。――きゃ♪」


「その『きゃ♪』とか言うの、気味悪いから止めてくださいよ、師匠。もうそんな歳――」




「――ムェ、今何か言った?」




「……ぃぇ」


「そう。なら良いの。私も可愛い出死でしを斬りたくないから」


「……は、ははっ、そうですね、お師匠様」


「ところでムェ?」


「はい、なんですか、師匠、というかおはようございます」


「うん、おはよう、じゃなくて。どうしてこのヒト達はこんなところで寝てるんでしょうね?」


「さあ? 僕たちが通りかかった時にはもうこのヒト達地面で眠りこけてたし……」


「時折、刀で斬られたような人も混じって……」


「あ、それは師匠が寝ぼけて斬りました」


「……」


「……師匠?」


「ムェ、ばれないうちに早く逃げましょう」


「そうですね。厄介事にはかかわらないに限るし」


「じゃ、こそこそっとですからね?」


「分かってますって」




◇◆◇




翌日、倒れていた兵士の傷痕からW.R.(ワールドランク)第四位『灼眼の剣士』の突然の謂われなき強襲によって国の軍隊が壊滅的な打撃を受けた、と言うこれこそ謂れのない悪評が広まったとか何とか。



気がつくと全く別の話に……。

と言うか、歌姫スフィレイアさん、関係ないじゃん。


あと、今日は休日なので思いっきりサボってました。はい、済みませんです。と言うか最近サボり癖がしだいについてきたなぁ、と反省をしなければまずい事になりそうだ。。。

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