ど-406. そしてこれから
何か言ってますが、普通の二人のどつかれ漫才……凄く疲れる、漫才?
「世界が俺を、そしてまだ見ぬ女の子が俺を呼んでるぜっ!! ……って、あれ?」
「如何なさいましたか、旦那様?」
「いや、何か前にもこれと似たような事を言った気が……」
「その様な事も御座いました」
「……? おかしいな。何か言った事はある気がするんだけど、いまいち記憶が曖昧で……」
「ご自分の発言に限りなく無責任な旦那様、流石です。だからあの子の事も認知してくれないのですねっ!?」
「いやあの子って誰よ?」
「そんなっ、やはり旦那様は酷いお方ですっっ」
「……いい加減、それ止めね? 微妙にノリについていけない」
「ではそう致します」
「ああ、そうしてくれ。と言うか、本当に記憶が曖昧なんだが……お前、また何か変なことでもしてないよな?」
「失礼極まりない言葉で御座いますね、旦那様♪」
「いや、だってまず最初に疑うべきはお前だろ?」
「ふふっ、そこまで私の事を想っていただけるとは嬉しい限りです」
「随分と前向きな発言で」
「そうでなければ旦那様と共になど居れません」
「そんなことは、ないと思う」
「そうですね」
「……まぁ、何か考えても思い出せそうにないし、どうでもいいか」
「ちなみに犯人はシャトゥです」
「――……益々どうでも良くなった。考えるだけ無駄だったという訳だ、うん」
「そうなのですか?」
「ああ。あの“なんちゃって♪”に付随するもの全て、無駄な考え休むに似たりな状況だし」
「……」
「うん? どうかしたか?」
「いえ、シャトゥもシャトゥで、報われないなと思いまして」
「報われる? そんな殊勝な考え自体、持ってるのか、あいつ?」
「……言われてみれば確かに」
「だろ? ある意味前向き、ある意味我が神生に一片の悔いなしを地で行く奴だし」
「……――ですが、相応に想ってあげる事は必要かと」
「ま、別に俺としても放りっぱなしってわけじゃないさ……って今はあいつ、もといシャトゥの話は良いか」
「そうですね。折角の旦那様との憩いの一時なので、他の女性の会話は止めてください、旦那様。だからデリカシーが足りないというのです、この旦那様は」
「ゃ、シャトゥの話を始めたのはお前……つか、憩いの一時?」
「はい、それが如何いたしましたか?」
「いや、憩いの一時って……」
「はい、それが如何いたしましたか?」
「……」
「……」
「いや、何でもない」
「そうですか」
「ああ。……そう言えば、今俺たちってどこに向かってるんだ?」
「さあ?」
「さあって、また無責任な」
「旦那様の行動ないし発言ほどでは御座いません」
「いや……まぁ、それならそれで何処に向かうんだ? いつまでもこんなので飛び回ってたら色々と大変だろ?」
「こんなのとはこの子に失礼です、旦那様」
「あ、悪い、と言うかやっぱり誰かに見られたら大事になるだろうが、こんなミーちゃん並に大きい飛竜なんて」
「そうですね。【厄災】の再来か、などと言われてもおかしくないかと」
「ま、本物の【厄災】はこの程度の可愛いモノじゃないけどな?」
「……何故私を見られるのでしょうか、旦那様は?」
「いや、別に?」
「そうですか。つまり旦那様は私の顔に見惚れてしまっていたと」
「何をそんな今更な事を」
「今更っ!? つまり旦那様はいつも私に見惚れて――」
「あ、いやそう言う意味じゃなくて。今更お前の顔見て見惚れるとかないだろ、って方の話……まあ、不覚にも時々目を奪われたりするけどな」
「………………そちらですか」
「ああ。でもお前、さっき久しぶりに随分と取り乱したよな? ――本気で」
「……その様な事をわざわざ尋ねてこられれる旦那様は、メッ、です」
「メッ、ね。くくくっ」
「何ですか、旦那様」
「いや、何でも?」
「……確かに、この子をいつまでも晒しておくわけにも参りませんか」
「勝った!」
「……」
「――……て、あれ? ナニカアシバガナイヨ???」
「旦那様、危ないっ」
「とか言って突き飛ばしてるんじゃねぇ、テメエエエェェェェェェェ……」
「ああ、あっという間に旦那様が塵芥な存在の様な点に……そう言う訳ですのであなたは――そうですね、では一体何の為なのかは敢えて知りませんが旦那様が試作されていた『人化の秘薬』でも飲んでみます……む? すとろべりー味と初恋のキッス味、どちらが良いのでしょうか」
ちなみに飛竜はメイドさんの『お座り』一つで屈しました。
【潰される人々:クゥワ編】
「良いぜっ、もっとだ、もっと俺を踏んでくれっ、シャトゥルヌーメ!!!!」
「……もうコレ、何処に埋めればいいのでしょうか。でも埋めても良く分からないモノが生えてきそうで嫌なのです」
【シャトゥ、涙目です】