ど-405. 目が覚めるとそこに
ぐっすり寝すぎました。
「ん~良く寝た――ッて此処は何処だっ!?」
「旦那様、お目覚めの気分はいかがでしょうか?」
「気分もなにもまず現状説明を」
「旦那様を拉致しました、以上」
「納得だ」
「では。旦那様もご納得されたようですので、」
「いや待て」
「はい、まだ何か?」
「お前に拉致られたってのは納得したが、ここが何処かっていう質問には答えてもらってないぞ?」
「目隠しをお取りいたしましょうか?」
「ああ頼む……て言うか、初めからそうしてくれ」
「了解いたしました。少々お待ちを」
「お待ちって……もしかして移動中なのか? 全然揺れないから分かりにくいだが……」
「はい。――ここなら少しは安全でしょうか」
「いや安全て」
「では旦那様、目隠しをお取り致します」
「ああ――」
「……」
「? 目隠し一つに随分と時間がかかってるな?」
「はい。封印呪の五十層重ね掛けとランダム転移するトラップを千程設置し、その他にも様々と――」
「って、それはいくらなんでもやり過ぎだろっ!?」
「いえ、旦那様に対して安易な目隠しなど、それは失礼かと」
「いや全然失礼じゃないし。というかそもそも、失礼云々の話をするなら目隠しとかしようとするな、つかするなよ、おい」
「それとこれとは話が違います――と、申し訳ございません、旦那様」
「……まさか、解呪に失敗したとかトラップに引っかかって……!?」
「ついうっかり、旦那様との会話が楽しく集中力を欠いてしまい……あぁ旦那様」
「止めて!? 視界ないんだから、その高揚感だけ溢れる声聞いてると本当に大変な事になってる気がするんだよ!?」
「実は本当に大変な事に……」
「な、なってるのか!?」
「と、少々ウィップに富んだ会話をして旦那様の気を紛らわせたところで、すべて解除し終えましたので目隠しをお取りいたします、旦那様」
「なんだ、今のは全部嘘、か――」
「旦那様、如何なさいましたか?」
「……なぁ、改めて問うんだが、」
「はい、如何なさいました?」
「ここ、何処だ? いやここが何処かとか分かると言えば分かるんだが分かりたくないというか何でこんな事態になってるんだろうなーとか」
「突然変異でしょうか? ミドガルド級の飛竜の胃の中で御座います」
「ミーちゃん程って……随分とでかい飛竜も居たものだなぁ」
「はい、私も一目見た時には驚きを隠しました」
「隠したのか」
「はい。ですが驚いたことに変わりはありません」
「まあ、んだけでかいと驚きもするだろうしなぁ。でもそもそもどうして喰われてるんだ、俺ら」
「旦那様がいけないのです」
「俺が?」
「私が驚いて油断した隙に旦那様を食べられてしまいまして、慌てて私も飛竜の口の中に飛び込みました」
「……良く生きてたな、俺」
「その辺りはぬかりなく。旦那様に用いた目隠しに私特製の結界も用いていますので、飛竜程度に破れるものでは御座いません」
「……そか」
「はい、全く。旦那様もくれぐれもお気を付け下さるよう、お願い致します」
「いやそもそも俺寝てたし! と言うか俺が寝てる最中に大事にしやがったのは全部お前!!」
「そんな事も御座いました」
「……はぁ、まあいっか。それで、脱出の手はずは?」
「取り敢えず出口に向かって進んでおります。飛竜を体内から打ち抜くのは旦那様の望まれる所ではないかと思いまして」
「まあ、そうだな。極力それは避ける方向で。……んで、出口って?」
「口とは逆の方向へ。具体的には――」
「素直に口の方に行こうぜ?」
「分かりました、旦那様」
「……あー、ったく。悪い目覚めだなぁ、おい」
「旦那様、消化液にはお気を付けを」
「っとと。……服が少し溶けた。って、お前は大丈夫なのか?」
「私は自分に結界を張っておりますので」
「……俺の分は?」
「御座いません。ですので消化液にはお気を付けを、と」
「……まあ、今更そう言う事の期待なんて、それなりにしかしてないからいいんだけどな」
「つれないお言葉を……」
「まあいい。とっとと行くぞ。やる事は色々とありそうなんだしな」
「はい、旦那様」
【潰される人々:ファイ編】
「……ふぇ!? そ、そんな事、皆の目だってありますし、ごしゅ、こっち見ちゃ駄目、というかシャトゥちゃんも止め――」
『?』
【ファイさんは夢を見ています】