ど-402. 春眠くらい暁を覚えたい
通常運営中……
「ん~、春眠暁と言うか、ベッドから離れたくねぇ……」
「では仕方ありませんね」
「って、テメェは何しようとしてやがるっ!?」
「旦那様がそこから動きたくないと仰られるので、でしたら私の方が近付けばよいという事で旦那様のベッドに忍び込もうとしております」
「そんな事は一目で分かるっ、だからお前は何で俺の聖域に無断で侵入しようとしてるのかって聞いてるんだよ!?」
「……サンクチュアリ?」
「あ、いや、今のはもののはずみだけど……」
「では旦那様、改めて許可をいただきます。旦那様のご寝所に侵入してもよろしいですね?」
「ですね、とか言いつつ既に侵入してるじゃねえか!」
「お休みなさいませ旦那様」
「て、あ、何寝ようとしてるんだよ!?」
「眠くなりました」
「うん、それはこの陽気とポカポカお布団だ、凄く分かるんだけどさ」
「ではお休みなさいませ」
「だから寝るなっての!!」
「……では旦那様は寝所の中で眠らずに何をしろと仰られるのですか。する事など、限られていると思うのですが?」
「いやそもそもベッドの中っていう前提からして違ってるし」
「旦那様、悪戯は胸タッチまででお願いします」
「いや、だからしないし。と言うかいい加減出ていけ」
「お断りいたします」
「つか、寝るなら自室で寝ろよ」
「旦那様のモノは旦那様のモノ、私の全ては旦那様のモノと言います。ですので一切問題ないかと」
「ツッコミどころ満載だなぁ……てか、バカなやり取りしてた所為で目が覚めたじゃねえか」
「作戦通りですね」
「それは嘘だろ」
「はい、嘘で御座います」
「……なんだかなぁ。段々ベッドの中でこうしてるのが虚しく、てか何してるんだろうな、俺達」
「閨の中で愛を語らっております」
「違うし」
「旦那様、愛しております」
「ああ、俺もだよ、マイハニー」
「気分が悪くなりました」
「っておぉい!? それどういう意味だっ!! 自分から話振っておいてそれはどういう扱いだ!?」
「というのは当然嘘ですが、旦那さまからの突然の告白に胸の動悸が抑えきれません。如何致しましょう?」
「取り敢えず、お前はベッドから出ていけ」
「了解いたしました」
「……ふぅ、これでゆっくりと転寝を続けられ――、っ」
「旦那様、おはようございます」
「……布団返せ、寒い」
「旦那様、おはようございます」
「布団返せ」
「旦那様、おはようございます」
「お前は意地でも俺を起こしたいのか」
「いえ、旦那様がお休みになられたいと仰るのであれば無理にとは申しませんが?」
「なら布団返せ」
「それはお断りします。こちらの布団もそろそろ日干しにする予定を今決めましたので。お休みをご所望と仰られるのでしたら新しい布団を用意してまいります。それまで寒さでガタガタ震えているか、もしくは隣室の私の寝所でお休み頂いても、」
「――起きるよっ、起きれば良いんだろっ!!」
「私の部屋で寝るという選択肢も御座いますが?」
「それはない」
「そうですか」
「ああ」
「……」
「……なんだよ?」
「いえ。……では改めまして、おはようございます、旦那様」
「ああ、おはようさん。おかげですっかり目が覚めたよ」
「それはよう御座いました。では旦那様が身支度をされている間に朝食の用意を済ませてまいりますので、後しばらくお待ちを」
「ああ、分かった……」
「お待たせいたしました旦那様」
「全然待ってないというか俺まだ何もしてないんだが……」
「愚図ですね、旦那様は」
「愚図とか言うな、愚図とか」
「愚図ですね♪」
「あからさまな作り笑顔を浮かべるのも止めろ。というかお前が早すぎるんだよ」
「ご朝食はいつも通り、予め外に持ってきておりますので」
「そういやそうだったな。……なら何でわざわざ身支度の間にとか言うんだよ」
「普段の旦那様の三倍の性能を期待してみました」
「無理だから。それにどちらかと言えば寝起きだから三分の一の性能だな」
「普段の三分の一の旦那様……」
「なんだよ、その『それでは無能以下ではありませんか』みたいな感じ、」
「無能以下の旦那様は早々にお目覚めになり無能の旦那様にお戻りくださいませ」
「目が覚めてもまだ無能扱いなんですね、俺って!?」
「いえ、旦那様はあくまで旦那様ですので、それでは無能の方々に失礼かと」
「だから俺の扱いってどんな!?」
「旦那様は旦那様以外の何物でも御座いません、と何度も申し上げているつもりですが?」
「……だから、お前の中でその“旦那様”とやらがどの程度の扱いなのかが非常に気になるんだけどなぁ」
「些細なことです」
「些細って何が!? 今の質問、それともお前の中での俺の扱い!?」
「どちらにとっていただいてもよろしいかと。それはそうと旦那様、そろそろご朝食をお取り下さいませ。容器の耐久力がもうもう持ちません」
「……あのさー、」
「はい、如何致しましたか旦那様?」
「そもそも、容器の耐久力とか言ってる料理(?)を食べさせようとするのは間違ってると俺、思うんだけどなー」
「旦那様ならばいけると私は信じておりますので一切問題ありません」
「……そうやって、毎日三食耐えてる俺って心底凄いと思う」
「では旦那様、お召し上がりの程を」
「あ、ああ。――いざ、尋常に!!」
「はい」
「――、……」
「おや旦那様、やはりお休みになられるのですか?」
「……」
「旦那様? このようなところで眠ってしまってはお風邪をひいてしまわれますよ?」
「……」
「もう、仕方のない旦那様ですね。ではごゆるりとお休みの程を、旦那様。……こちらの朝食は、勿体ないので私が処理しておきましょうか。……、ふむ、本日もまた言葉に言い表せぬ味に仕上がっていますね、ファイ様の料理の腕も相変わらず、と」
【潰される人々:ダリア・アルカッタ編】
「マイすうぃぃぃとエンジェルリリ――」
「――だからっ、もう一緒にお風呂には入らないと何度も申し上げております、お父様っ!!」
「……そ、そんな事言わずに。ね? パパと一緒に」
「パパとか自分で言わないで下さい、――気色悪い」
「……きしょ、――」
【真っ白な灰に燃え尽きました】
のんびりまったりです。