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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【キックス編】
690/1098

Step 4.02 -始まりが終わる時-3-

もう自分の計画性のなさにがっかりです。今回……というか前回で終わっている予定だった取り敢えずのキックス編(?)なのに、どんどん長く……。

次回こそ、ラスト――



だといいなぁ。



「……んっ?」

「あ、キーくん」



目を覚ますとツェルカの顔が目の前にあった。それもドアップで、気の所為か唇を突き出している気がしないでもない。



「ツェル、姉……?」

「キーくん、もう少しだけ寝ててね? 今おねーちゃんがお目覚めのキッスでキーくんの目を覚ましてあげるからねっ♪」



唇を突き出している気がしたのは気の所為じゃなかったらしい。

ぐぐっ、とツェルカの顔が更に近付いてきて――



「いやチェル姉ちょい待――!?」

「い~やっ、待たない♪」

「ゃ、ツェルね、」

「んちゅ~……」


「何してるんですかっ!!」



突然横から差し込まれた手が力ずくで二人の顔を引き離した。

その手はそのままツェルカの身体を引っ張り上げようとしたが――ツェルカがキックスに抱きつく事で阻まれた。ちなみにその瞬間、キックスはツェルカの胸に挟まれて窒息した。


何度か引き離そうと心掛けてはいるようだったが、どうやら五度目ほどで諦めたらしかった。もしくは息切れの音が聞こえていたので体力が尽きただけ、とか。



「な、なんて破廉恥な事を昼間からしてるんですか、あなた方はっ!?」



必死の思いでツェルカの胸の中から脱出して、ようやく新鮮な空気を吸い込む事が出来たと――。

キックスの瞳に映ったのは見覚えのある少女の姿であり、目の前で、くすんだ銀髪のメイドさんに確かに殺された少女であって、



「――の」

「違うよ、キーくん」

「――」

「彼女はナナーツォリア。ノノーツェリアのお姉さん。間違えちゃ、ダメ」



怒鳴り声を上げた少女を見た瞬間、頭が真っ白になりかけて――それより早く顔を寄せてツェルカから冷や水を囁かれて我に返った。

そして顔を寄せたツェルカを視て勘違いをしたのか、顔を真っ赤にしたままのナナーツォリアがもう一度怒鳴り声を上げた。



「またそんな、私が見ている前で堂々と破廉恥な――」

「えーこれぐらい普通だし。ね、キーくん?」



ツェルカが何か声をかけてきていたが、気にする余裕がない。目の前にいる少女はノノーツェリアではなくナナーツォリアと言う別人であると自分に言い聞かせなければ、叫びながら抱きついてしまいそうだった。


何の反応もないキックスを、しばらくじっと見て、もう一度ナナーツォリアへと向き直るツェルカ。



「……ま、いいけど。それにねお姫様、いくらキーくんと私のラブラブが羨ましいからと言って、やきもちやいちゃ駄目だよ」

「そ、そんな事じゃありません! 私はただ一般的な見解を述べただけで……」

「あー、はいはい、そうだね、そうですねー、イッパンテキな意見を言っただけだよねー?」

「そっ、そうですともっ!! ですから二人とも、破廉恥な行為は控えて、少しは節度と言うモノをですねっ」

「でもさ、お姫様?」

「な、なんですか……?」

「そっちの方こそ、愛し合う二人の邪魔をするなんて不粋すぎだと思うけどなー?」

「ぶす――」

「ね?」

「……た、確かに一理ありますね。愛し合う二人を邪魔したのは謝罪を――」


「や、別に愛し合ってはないから」



何となく反射的に、声が出ていた。

未だ頭の中を整理中ではあるものの、何となくこのまま放っておくのもいけないと本能的な部分が訴えかけて、身体を勝手に動かしたとか何とか。



「「……」」



ツェルカとナナーツォリア、二人は同時にキックスを見て、それからお互いに顔をつき合せて



「――えへ♪」

「……ツェルカさぁぁん?」

「もうっ、キーくんも本当に照れ屋さんなんだ・か・らっ!!」


「っっっ」



声も出せないくらい、限界突き破るくらいの勢いで肘を鳩尾に突っ込まれた。

悶えるキックスの様子に、ナナーツォリアからでは微妙に見えない角度らしく不思議そうに見られていた。



「えっと、取り敢えず目を覚まされたんです……よね?」

「うん、キーくんももう少し遅くに目を覚ましてれば私からの目覚めのキッス――それも記念すべきキーくんに捧げるファースト♪ が待ってたのに。運がないよね?」

「いや、助かったよ、本当にもう」



もし目を覚ますのがもう少し遅れていたらと思うと――と思いかけたところでもう一度ツェルカの肘が入って、ナナーツォリアの姿を見た瞬間とは別の意味で頭の中が真っ白になった。主に痛みの所為で。



「と、取り敢えずキックス……様も目を覚まされたようなので話を聞かせてもらいたいのですが?」

「さ、様……?」



何で様付で呼ばれてるんだろう、自分――と思わないでもなかったが、口に出すより先にツェルカが答えた。



「うん、良いよ。そういう約束だったしね。話すよ」

「はい」

「――それとキーくんも。気持ちの整理も大切だけど今の状況も結構切羽詰まってるっぽいから、ちゃんと聞いててね?」

「切羽……?」

「うん。時間もどれくらいあるのか分からないから、手っ取り早く。今の状況の事、少なくとも私が知ってる限りの事を説明しておくからそのつもりでちゃんと聞いててね、二人とも」

「う、うん」

「お姫様も。ルイルエお姉様たちの行動から考えても多分、貴女には権利と資格があると思うから」

「はい、分かりました」

「キーくんと違って理解が早くて助かるよ、お姫様」

「いいえ、そんな事は……。それよりもそのお姫様、と言うのは――」

「嫌? 何かリクエストがあるならそっちの呼び方にするよ? あぁ、でも敬語とかは無理だからね。私が仕えるご主人様は後にも先にも、たった一人しかいないし認めてないから。……まあ、旦那様なら別だけど――ね?」



何かちらりと意味深な視線とウィンクを贈られた気もしたが、キックスは取り敢えず気がつかなかった事にした。



「……もう、キーくんの意地悪っ」



何か言ってるが、それはそれ。気にしない方が健康にも良さそうだった。



「それじゃ、先ずは一番気になってると思うけど、ノノーツェリアの事」

「――はい」

「キーくんは分かってると思うけど、――ノノーツェリアは、もういない」

「「――」」



少しだけ。

ナナーツォリアはツェルカから視線を逸らして宙を彷徨わせ、本当にぎこちない笑みを浮かべて、聞いた。



「……えっと、それではあの子は今、何処に?」

「――分かってると思うけど。何処にもいない。ノノーツェリアは死んだ」



死んだ――。分かっていた、と言うよりも自分の目で見た事なのだから今更のはずなのだが。それでもツェルカの口から語られたその一言に、キックスが衝撃を受けていた。

一方でナナーツォリアの方はと言うと、ある程度の予想はついていたのかそれともあくまで表面だけか、少なくとも取り乱すような気配はなかった。ただぎこちない作り笑いと、一切の表情が消えた。



「そう……ですか。あの子は、もういない、んですか」

「うん、酷なようだけど。私たち――私とキーくんはノノーツェリアが死ぬところをこの目で見てたから、間違いない。そうだよね、キーくん?」

「…………」

「キーくん?」

「うん、そう……だね」

「そう言う事。だから――」

「――私としては、何となくあの子はまだ生きてるような気がしてるんですけど……」

「それは双子としての勘みたいな?」

「ええ、はい。……とは言ってもノノの最後を私が直接見たわけじゃないので、願望も沢山混じっていると思いますけど……」

「うん、そうだね。期待は抱かない方が良い」

「……はい」

「……ごめんね?」

「――いえ。あの子の体調は分かってましたし、そう長くないだろうと、二人して覚悟も出来ていましたから」

「……そ」



少しだけ微妙な雰囲気になって。それでも場を作りなおすように、



「さて――と、それじゃあ続きを話すよ?」

「――はい」



ツェルカの声に応えたのはナナーツォリアだけで、キックスはただ二人から視線を逸らして、俯いていた。

その姿を見て、ツェルカが一言。



「……キーくん、情けなさすぎ」

「で、でもそれはキックス様がそれだけノノを想っていてくれたという事で――」

「そこ、変な曲解は駄目だからね!? 確かにキーくんはそれなりにノノーツェリアの事を大事に思ってた、っぽくない事もなかったけど、それでもキーくんの一番は私だからっ、そこは間違えないように!!」

「は、はい……分かりました」

「それとさー、気になってたんだけど、キーくんの事を様付する必要なんてないんだよ?」

「いえ、ですが……」

「キーくんが命の恩人だから? でもね、何度も説明してるけど、キーくんが受け止められたのは本当に偶然で、しかもキーくん受け止めきれずに気絶までしてるし……もうっ、お姉ちゃんの鍛え方が足りなかったのかなぁ」

「でっ、ですが――キックス様は、キックス様ですし……」

「……ふーん、それだけなら、私は別にキーくんが他のヒトから“キーくん”って呼び方以外でどう呼ばれてても良いんだけどね。――キーくんが鼻の下さえ伸ばしてなければ」



ぎろりと睨みつけたツェルカだったが、キックスがそれに気づく様子もなく――なんとも張り合いがなさそうに、詰まらなそうに何処か機嫌が悪そうに、ナナーツォリアへと視線を戻した。



「それじゃあさっきの続きだけど……これも大事なことから言っておくとね。今ここにいる三人以外、城のヒト達の事は誰も信用しちゃ駄目だからね?」

「? それはどういう意味で……」

「それはこれから説明する。けど二人とも、分かった?」

「は、はい。私は……――どの道、あの子がいないのならこの場所に私の味方なんて誰もいませんから」

「うん、なら良し。――で、キーくん、返事は?」

「……分かった、よ」

「……本当に分かってるのかどうか怪しいけどっ、取り敢えず言質は取ったからね?」

「うん」

「……なんだかなぁ。もうキーくん、本当に落ち込み過ぎ――って、まさか本当に本気の本気でノノーツェリアの……いやいやいや、キーくんが私以外の女の事なんてありえるはずないし、ないしっ!」

「……あの、話の続きは――?」

「っとと、そうだったよ。危うく忘れるところだった!」



ふぅ、とわざとらしく額の汗をぬぐうような動作をして、



「もうっ、キーくんの所為なんだからねっ、お仕置きっ!!」



つか何とか言いつつ再び唇を近付け――



「ちょ、だから何を破廉恥な事をしてるんですかっ!!」

「えー、だからキーくんにちょっとお仕置きを……」

「そんな事よりっ、時間がないとかそういう事を言ってませんでしたかっ!? だから説明の方を早くっ!!」

「……ちぇー」

「……それで、城のものを信用するなと言うのは良いですけど、他に何か言う事は? ……先に聞いておかないと聞き逃しそうですから」

「そんなドジは踏まないよ、スフィアじゃあるまいし」

「……スフィア?」

「あ、うん。私の同僚――って今はそう言う事は良いんだけど。そうだね……取り敢えず、本当に注意してほしいのはその一点だけ。そしてその理由は――」

「理由は……?」





「――あれだけの騒ぎが起きたっていうのに、誰一人としてこの場所に現れようとしてないって事」





そう、ツェルカの言うとおり、ナナーツォリアの部屋の破壊具合や庭の荒れ様。先程の戦闘も、音なんて凄かったはずなのに――それなのに誰一人として駆けつけてくるものはなく、城の中は不気味なほどに静寂を守ったまま――


なんかもう、滅茶苦茶だ……と言うか色々と説明しなきゃいけない事が残っているのに、もう終わらせたいというか話数と言うか、他色々と。


もう自分にがっかりですよー、本当に!!


てんてこ舞いでスランプ中。。。



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