Early X. キックス-38
怠けてます、自分。
そして超短い。
――リタイアなさいますか、とくすんだ銀髪のメイドが尋ねた次の瞬間の事。
「キーくんっ!!」
倒れていたはずのキックスが身体を起こした。
その胸の中央からは未だ血が溢れ出ていて、顔色も死人のソレに近い土気色。しかも目に光は灯っておらず、正直なところ意識があるのかどうかも疑わしいほどだった。
ノノーツェリアは背後のその姿をちらりと一瞥だけして、再び興味を失くしたようにくすんだ銀髪のメイドへと視線を戻した。誰が見ても瀕死同然、今すぐ死んでもおかしくない姿――あるいは既に死んでいてもおかしくないほどの重傷なのだ。気を掛けるだけ無駄と判断したのだろう。
「……」
ツェルカの叫びに答える様子はない。ただのっそりと身体を起こして、そこに立ちつくしているだけ――と。
「「!?」」
ノノーツェリアが勢いよく振り返る。くすんだ銀髪のメイドが僅かに目を細め、『……成程』と呟いた。ツェルカはツェルカで何が起きたのか分からなように呆けていて。
何処からともなく出現した剣がキックスの正面、地面へと突き刺さる、キックスはそれを当然とばかりに手を伸ばし、剣を引き抜いた。
淡く剣が緑の光を発して、いつの間にかキックスの瞳も同じように緑色の輝きを灯していた。
「……世界の僕の一柱、相手にとって不足なし」
キックスの口から、キックスのものではない――幼い少女のような高い声が漏れる。
のろりとゆっくり緩慢な動作で掲げた剣を振り上げて――
「「っ」」
振り下ろす動作には一瞬もかかってはいなかった。
ノノーツェリアとは、そしてくすんだ銀髪のメイドとも距離は十二分に、それこそ剣の間合いの外には十分すぎるほどに間はあった。それでも彼女ら二人は反応し――その一撃を避けた。
キックスが振り下ろした剣先の、そこから直線状の先、城の外壁へと続くまで。
大気と地面が黒ずんで――灰のように散っていった。そよ風が、まるで失せた空気を補う様に流れ込む。後に残ったのは綺麗な地面の断面――剣の一撃の痕。
一閃だけでは留まらず――キックスは二度、三度と続けざまに剣を振るう。その剣が降られた先が――世界そのものが裂けて、喰われて、散っていく。
それは壮観な光景であり、一撃当ればどんな生物であろうと間違いなく致命傷になりうるモノではあったが……
「……聖遺物には驚かされましたが、これだけですか」
一撃当れば――などと言えば聞こえはいいが、要は当たらなければいい。
どれほど強大な一撃であろうとも当らなければ怖くはないし、その担い手の程度が知れていれば怖くもなんともない。
実際、キックスの一閃は実に無作為に振られていて、ノノーツェリアとくすんだ銀髪のメイドは余裕を持ってその斬撃を裂けていた。ちなみにツェルカは相変わらずメイドの抱きかかえられたままである。
「……む?」
キックスそのその事に気付いたのか、剣を振る動作を止めて、動きを停止した。
それから辺りを見渡して、ノノーツェリア、くすんだ銀髪のメイド、ツェルカを見て――
「それで結局のところ私は何をすればいいのでしょう?」
相変わらず土気色の顔のまま、不思議そうに首をかしげてみせた。
【アルとレムの二言講座(ツッコミ役:レアリア)】
「……あっちぃ」
「……」
「アルは大丈夫か? 水でも飲むか……と言いたいところだけど、こういうときはかえてて水を飲み過ぎない方が良いからな。だから我慢だぞ、アル?」
「……」
「うん、俺も我慢するからアルも頑張ろうなー?」
「……」
「――まあ、レムの分の水は没収するとして、二人分って考えるならそれなりに余裕はあるから心配しないでもいいと思うわよ?」
「いや前提間違ってるし!?」
「……!」
【お終い】
久しぶりにゲームにかまけていたら時間が亡くなっていました(汗)
む~。実は小説書くのに結構時間を取られている?