ど-45. げぇむ?
ま、遊びだよね。あ・そ・びっ
……だよね??
「ま、負けた」
「旦那様、早い、弱い、小さい、ですね」
「…何気にぐさりと来る言葉だが。いや、お前が強すぎるだけだと思うのだが」
「まあ、このようなモノが上手であったとしてもなんの自慢にもなりませんからね」
「基盤上の戦争ゲーム、か。誰が考えたんだろうな、こんなもの。暇つぶしにはちょうどいいお遊びなのだが」
「それにしても旦那様は余りに弱すぎるので実に早くゲームが終わってしまいます。領土ももはや風前の灯火、と言ったところでしょうか」
「や、だからお前が強すぎるんだってば。何、さっきの布陣。誘い込まれて一瞬でほぼ全軍を壊滅させられたんだけど」
「旦那様のお考えは全てにおいて理解しておりますので、旦那様が次にどのように動かれようとしているのかを推測するのはそれほど難しい事ではございません」
「それにしても限度のある強さだけどなぁ。お前さ、兵法の一つでも書にして出してみたらどうだ?たぶん結構売れるぞ」
「おや、旦那様はご存じありませんか?以前、サーカル様に勧められて書を一冊書き上げたことがございます」
「サーカル…ああ、確か処理部の奴か。で、へぇ、そうだったのか。で、題名は?」
「確か…『財政の危機』だったかと思われます」
「『財政の……、それのどこが兵法なんだ?」
「理解できる御方には理解できる、と言う内容のもので御座います。ちょっとした隠書になっておりまして、そのまま素直に読み解けば財政学の書物として用いる事が可能なものとなっております」
「ほぉ、それは…、て、読み解く?」
「はい、全て古代語で記しましたので、解読にはそれ相応の尽力が必要かと。サーカル様は古代語の解読がおできになられましたので全く問題がありませんでしたが。そう言えば何故か読む間終始に渡り笑い転げておられましたね」
「またそんな無駄なところに力を注ぎこむよな、お前。で、その本ってどんな内容なんだ?」
「どのような、と申されましてもとても一言で語りつくせるものでは…。敢えて申し上げるとすれば実話、とでもいいましょうか」
「いやまて!?」
「何か?」
「実話ってなんだよ。って、そう言えばサーカルは読んでて笑い転げてたってさっき言ったな。おい、本当にどんな内容なんだよ?」
「旦那様の日常談議ですが何か?」
「何か、じゃねー!!」
「いえ、いかに難攻不落な旦那様を落とすか、と言う常日頃からの旦那様の恥の内容を書き綴った文章でして…」
「ゃ、もう説明求めてないからっ。あと何、そのまさに俺の恥部を的確に世間様にお披露目するような内容は!?」
「旦那様が一番はじめに仰られた通りの兵法の書ですが?」
「ど・こ・が・だっ!」
「…そもそも旦那様は勘違いなされておられます。たとえ如何様に私が兵法に敏く、旦那様がどうしようもないほどに心意に疎くあらせられましたとしても、私は戦争の道具となるようなものを世に広めるつもりは毛頭ございません。それは旦那様もご理解していただけているはずでございます」
「確かに。…だがそれでなお書を書いて、しかも内容が俺の日常風景ってのはどういう事だ?」
「まあ、一種の日記のようなものですので。ちなみに旦那様にも一冊お渡ししたと思いますが?」
「一冊……って、あれか、あの愚痴が書いてあった…!」
「はい」
「で、まさかあれが隠書になってるのか?」
「はい。その通りにございます」
「…本当に無駄に芸が細かいな。ま、いいか。どうせ読み解くつもりもないし」
「それでこそ旦那様でございます」
「何か褒められている気がしないのだが」
「いえ、そのような事は多々ありますが?」
「あるのかよ。……それよりも、だ。もう一戦いくぞ。こうも完敗続きじゃやってられないからなっ」
「…手加減、いたしましょうか?」
「いるかっ!!くそぅめ、余裕ぶりやがって」
「了解いたしました。では全力で、旦那様を叩き潰させていただきましょう」
「……済みません、少しだけ手加減お願いします」
「お断りいたします」
「げふぅ」
本日の一口メモ〜
メイドさんは旦那様よりも策士です。
メイドさんは旦那様を妄信的に愛しております。
旦那様はメイドさんの足もとにひれ伏しています。
…状況は怖くて説明できません。
『はっちゃけてみよう』
旦那様はこの世で一番強いです。最強と言う奴ですね。
…え、メイドさんにいいようにやられてる?
きっと気のせいですよ。
旦那様の今日の格言
「俺が最強だー!!」
メイドさんの今日の戯言
「そのような輩に限り早々に退場するのが世の常で御座います」
実はACT XX. スィリィのシリーズが結構長く続くのですが…元々の物語のテーマの
「一日一話。
朝の、または夜のちょっとした頼みしに?」
が違ってきそうなので、ころ合いを見てぽろぽろと続きを落とす事に。
なのでこの後の旦那様とメイドさんの掛け合いと、スィリィさんのお話とは時間軸が徐々にずれて来ますので、あしからず。