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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【キックス編】
676/1098

Step 03.5 -ノノーツェリア-

久しぶりにじっくりと書こうと思ったら遅くなりました……。

済みませんです。


あと、今回は比較暗めのお話ですので注意(?)してください。


そしてメイドさんが出しゃばります。


「キーくん?」

「キックス?」



聞こえなかったのかと思ってもう一度、声をかけてみたけど結果は同じ。キックスからの返答はなかった。

私だけじゃなくてツェルカさんからの呼びかけにも答えてなくて……一体どうしたのでしょうか?


それに何だか、凄く落ち込んでいるような気が……これは私の気の所為――それとも本当の事?

どちらだろう? ……良く分からない。




あの日……とはいっても本当に数日前の、キックスに出会った前日の事。あの日を境にして私は今自分が見ているこの光景が夢か、それとも本当の事なのか分からなくなってしまった。

今が現実だと言う自覚はある――けど、どうしても他人事のように感じてしまう。


全てが信じられない、と言っても良いかもしれない。


今でも鮮明に思い出す事が出来る。

私――“ノノーツェリア”が倒れてこん睡状態になったと一時、城のモノたちが騒然となった日。そして同時に“ナナーツォリア”が用済みとして暗殺されかけた日でもあって。

あの日はいろんな事が……本当に色々な事があった。

私の世界、ナナとサナおばちゃん、それと身の回りの世話をしてくれていたメイドのツヅキさん――たった三人だった私の世界が一度に広がって……その代償に私の世界だった全てを失ってしまった日。忘れたくても忘れようがない。





◇◆◇





――明け方に、ふと目が覚めた。

窓の外はまだ暗かった。どうやら私は、つい先ほどまで奇妙なほどにはっきりとした夢を見ていたらしい。

目を開ければそこは見慣れた天井で、私の傍には誰も、何処にもいない。だから『生きたいか?』なんて聞いていた翡翠みたいに綺麗で透明な、長髪と瞳をしたあの女の子は――やはり私が生み出した浅ましい欲望なんだと思う。

この命なんて、もう後どれほど持つかもわからないと言うのに――



「……あれ?」



と、気付いた。



「……ふふっ」



何だか、今日はとても体調が良い。何と言っても呼吸をするのが辛くないだなんて、一体どれくらいぶりなんだろうと思う。

もしかしたらこれは、これから死んでしまうだろう私への、何処かにいるかもしれない神様からの最後の贈り物なのかもしれない。なら――例え気の利いたものでなかったとしても喜ばなくてはいけない。


ああ、でも今日は、本当に体調がいいみたい。

これなら、もしかしたら身体を起こす事も出来るかも……と、本当に冗談みたいな気持だったのだけれど、試してみると驚くほど簡単に身体を起こす事が出来た。

少しだけ身体がぎくしゃくするけれど、これは身体を動かすのも久しぶりだからだと思う。その辺りは、魔法で補助すれば何とか――うん、これで良しっと。


身体を起こして……これなら立ち上がる事も出来そう、かな?

こちらも試してみると出来たので、ついでに背伸びなんてしてみる。



「んっ……あぁ、気持ちいぃ――」



神様も少しは気が効いていたのかも、って思う。これが最後だとしても、こんなに身体を動かせるなんてもう出来ないと思っていたから。

でもこれなら……



「……ナナ、私が行ったら驚くだろうなぁ」



その姿が思い浮かぶ。もう一人の私が、心底驚いた表情を浮かべて――それからきっと、喜んでくれる。たとえそれがほんの一時の、最後の力を振り絞った事だったとしても。


ちょっと早いけど、良いよね?

この神様からの贈り物も、いつ効果が切れてしまうかわからないんだし。



「うん、じゃあ、いこっか」



ちょっとした冒険気分で。

だって今までこんな事をしたことなんてないし、ここまで体調が良かった事も、少なくとも私が覚えている範囲じゃ、なかった。

この体調なら今まで知識だけだった魔法も――さっきみたいに色々と使えるかもしれない。これも少しだけ楽しみで、でも同時に怖い。もし魔法を使うことでこの時間が短くなってしまうのかもと考えると――それは、絶対に嫌だった。



「ぬきあし、さしあし……ふふふっ」



どうしても声が漏れちゃう。

だってこんな事、今までした事なんて無くって凄く楽しくて――



「――?」



ふと、不思議に思った。

そう言えばお城の廊下って、こんなに静か……ううん、静かなのは良いとして、どうして誰もいないのだろう?

いつだったかサナおばちゃんに聞いた話だと、見回りのヒトがいるから警備は万全だ……みたいな事を言っていたような気がするんだけど。


もしかして今日はお休みかな? それともお寝坊さん?

もしお寝坊だとすれば、きっと父様に凄く怒られちゃうんだろうなぁ――なんて事を考えつつ、そうだといいななんて思いながら、自然と速足になっているのを自覚した。


何か、嫌な予感がする。






――早速食事を……まずは“二人”






……きっと私は、今何が起きているのかを“知って”いた――




◆◆◆




――“食事”を……本当に、忌々しい。あの大罪人の子飼の女




◆◆◆




「はぁはぁはぁ」


少しだけ息を切らして。

あれだけ急いだのに息を切らしただけなんて凄い! なんて事を思っている余裕はなかった。普段の私なら喜んでいるところだけれど……――結局、ナナの部屋に来るまで誰とも会えなかった。

やはり、何か変な気がする。




「――ナナ!!」




もうナナを驚かせようとか、そんな事を考える気もなく全力でドアを開いていた。魔法で強化していた所為でドアが吹き飛ぶ……けれどそんな事はどうでもよかった。

目の前の、その光景を見せつけられて――



「なっ!? ナナーツォリア姫が二人――」



滅茶苦茶に荒らされた部屋。昔自分が書いたような気がする、下手くそな絵の入った額縁がたたき割られて床に転がっていて、他にもいっぱい、いっぱい、争ったみたいな形跡があって。

中でも、



「ノ――っ!!」



黒ずくめの男に馬乗りにされた自分の半身が床に押さえつけられていて。

お互い揉み合ったのか服はもうボロボロで。

何より馬乗りの男の手にはナイフが握られていて。



「ノノ、逃げ、」











――とんっ、と。


何かを叫ぼうとしていた声が途切れて。

まるで冗談か何かみたいに、男が振り下ろしたナイフがナナーツォリアの身体の中へと消えていた。



「――、ぇ」



何これ何が起こっているの、ぇ、何でどうしてナナが馬乗りいやそれよりも刺されえ、本当に刺されて? ナイフで胸、死、嫌でもそんなおかしなことがあるはずが――



「――、……ぁ?」



こっちを見ながら男が起き上がる。その目は何を考えているのか分からないほどに暗くて、怖い。

けどそんな男より、その後ろ。男はナイフを持ったまま立ち上がって、だからナナの胸からはナイフが抜き取られていて、……血が、血が沢山、まるで冗談みたいに吹き出て、



「いや、妹姫の方……か? だが確か妹姫は今こん睡状態……――どちらにせよみられたからには始末する必要がある、か。――運がなかったと諦めるんだな、お姫様」

「ぃ――」

「心配するな。こっちみたいに抵抗しなければ楽に殺し、」



何か大事なものが、私の中でごっそりと失せた。



「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」



助けなきゃっ、助けなきゃっ、助けなきゃっ!!

ナナを助けて、早く手当てをっ。だってあんなに血がいっぱい出て――早くしないとナナが死んじゃうっ!!






――まあ、口直しはこの男でも良いでしょう。命の質もそれほど悪くはない






「な、に――?」



男は驚いた表情を浮かべている。

だって、そう。“私”が無詠唱で放った翡翠色の輝く光が男の額を中央から貫いていたから。


そして――きっとわかるんだろう。内側から自分が“喰われて”いる事実が。でも恐怖を浮かべながらも声は出さない、出せない。



っ――“そんな事”よりも早くナナを助けないとっ!!





――この気配、またあの女か!? まだ万全ではないと言うのに何度も……忌々しい輩





「っ、……??」



ナナに駆け寄ろうとして、急に全身の力が抜けた。

そんな――こんなところで、こんな瞬間にプレゼントが終わりだなんてそれはあんまりです、神様っ!!


でも私の身体は、昔からそうだったように、やっぱり糸の切れた操り人形同然で、惨めたらしく頭から地面に倒れこんだ。



「ナ――ナナ……」



手を伸ばすけど、ナナまであと少し――その距離が今の私には絶望的に遠い。


だ、め……いしき、も……――




◇◇◇




「……おや?」



不意に、ヒトが入っていそうなほど大きな麻袋を担いだメイドが部屋の前を通りかかって、興味深そうに中を覗きこんだ。



「【冥了】の気配を追ってきてみれば何やら酷い様子……本日は色々とサプライズデーの様ですね」



それから部屋を一通り見渡して。



「しかし――このような光景は昔を思い出しますね」



担いでいた麻袋を床に置いて、血まみれで倒れこんでいた金髪の少女へと近づいて傅く。エプロンドレスが血に濡れるのも気にせずに、淡く光った手の平で何気なく少女の頭、胸の傷、それからゆっくりと全身を撫でていく。



「当人にとってはとんだお節介かもしれませんが、少しだけお手伝いを。完治は拙いでしょうから止血と増血、傷口の応急手当と……これで、命だけは取り留めるでしょう。後は本人次第、と言うところですが……――頑張ってもらいたいものですね」



僅かに微笑みと――何故か相反する不快感を浮かべて、そのメイドは立ち上がると血がべったりと付いたエプロンドレスを――払った。まるで埃か何かを落とすように、服にしみ込んだ血を“払い落す”。払い落された血液は床に落ちてようやく、己が液体であるのを思い出したかのように飛び散っていく。


数度服を払い除け、全ての血液を払い落したメイドは床に置いた麻袋を持ち直してから、もう一度床に倒れていた金髪の少女へと――“奇遇”にも瓜二つな二人の少女たちへと視線を落として、それから見るモノが見れば目を見張るだろう、一礼をした。



「では、ご武運をお祈りしております。名も知らぬ方々」




◇◇◇





――翌日。

私が目を覚ました時、周りの騒ぎはそれはもう大変だった。当然だ、王族が襲われたのだから――と、思っていたけど、違った。

私は初めて会った“母”の、“叔母”の、“兄弟”の、“従兄弟たち”の――全員が『私』を見て浮かべる驚愕の表情を見て、何となく『あぁ、そうなんだ』と分かった。私が襲われた事じゃなくて、“ナナーツォリアが生きていた事”に驚いたらしい。

私はまだ目を覚ましていない“ノノーツェリア”が襲われないように自分の事を“ナナーツォリア”と名乗って、私たちを見分けられる人なんて誰もいなかったし、それに“元気な”私を見て皆が皆、それを簡単に信じてくれた。



そして彼らは、父様を除いて全員が口々にこう言った。

『良かったな、妹がまだ生きていてくれて』――と。その意味は態々問いかける必要もなく、彼らが答えてくれた。

『ノノーツェリアって言う魔力パスがあるからお前は有用だ』とか『魔力タンクとしての役割が継続できて良かったな』とか『王にもてはやされているからって調子に乗るなよ、この役立たずが』とか。他にも『王族の恥晒し』『妾の娘』『汚らわしい』……全部が全部、酷い罵倒とさげずみの言葉ばかりだった。



私は部屋から出た事がなかったので良く知らなかったが――この国、アルカッタは初めに血統、次に能力主義の国で、その中でナナーツォリアは力がなかった、つまり弱かったらしい。それに王と妾の子と言われて、誰からも下げずまれていて――。

全員の、王族と言わず貴族と言わず兵士と言わず使用人と言わず――全てのすれ違うヒト達が私に……“ナナーツォリア”に向けてくる瞳。それが脳裏に焼き付いて離れない。お陰で一日で城に出入りするヒト達の顔を全て覚えてしまったけれど、全然嬉しくはなかった。



むしろ、私は悔しい――



本当は『ナナは弱くなんてない!!』って叫びたかった。だって、あんな、私の前じゃいつも嬉しそうに楽しそうに笑っていてくれたのに。そんなナナが弱い、無能だなんて誰にも言わせたくはなかった。

けど、ダメだった。だってもしそんな事をすれば、眠ったままのナナはきっと、今度こそ殺される。あの時誰が手当てをしてくれたのか分からないけど、折角一命だけは取り留めてくれたのに。




何だか会うヒト全員が怖くなって、サナおばちゃんとツヅキさんを探したけど、見つからなかった。

彼女たちが住んでいた部屋には酷い血痕があったらしい。でも姿は見つかっていない。

ヒトが入りそうな大きな麻袋を担いだ銀髪のメイドを見た、なんて噂があったけど、いくらなんでもこれは関係ない……よね?



――まずは”二人”



何となく脳裏に思い浮かんだ言葉に、自分のお腹へと目を遣って――あぁ、あの二人はもういないんだ、と妙な納得感と虚無感が浮かび上がって、気がつくと涙を流していた。

周りから『何を泣いている、気持ちの悪い』なんて言葉を言われたけれど、気にはならなかった。



そうして、本当に簡単に、あっという間に、私の世界は崩壊していて。

目の前には私が“ナナーツォリア”であると言う世界が広がっていた――。





◇◆◇





堂々と悪事を働こうとする輩は、心の底から撲滅すればいいのにと思う。


――だから、キックスと初めて会った時は不思議な感じだった。

一目見て、なんて綺麗な目をしているんだろうって。疑う事も信じない事も忘れて、一瞬見入ってしまっていたから。その後すぐに私を置いて逃げようとしたのにはちょっとだけむっとして、最後には不思議と悪戯をしたくなるような気持が湧いて出てきた。

多分、キックスのあの妙に可愛い顔立ちがいけないのだと思う。だから私がキックスに悪戯をするのは正義――!!



……と。


やっぱり何となくキックスが元気がないのは私の勘違いじゃない気がして、今出来うる限りの楽しそうな声を出すようにした。



「さて、と。それじゃあキックス」

「……」

「……キックスぅぅ? ご主人様を無視するとはいい度胸ですね♪」

「ぇ、あ、うん、ごめん、聞いてなかった。……えっと、なんの用事かな、ノノ?」

「――もぅ」



何となく、キックスが無理をしている――気がする。

やっぱりまだ落ち込んでいる――気がする。


不思議。キックスを見ていると彼の気持ちが分かる――気がするから。こんな事はナナとだってなかったのに。やっぱり、私が彼の主(仮)になったからなのでしょうか?



「遊びますよ、キックス」

「ぇ?」

「だから、いっぱいいっぱい、残った四日間、沢山遊びましょう、キックス♪」

「ぇ、ちょ、ノノ!? 遊ぶって何!? そんな事よりもちゃんと考えなきゃいけない事が――」

「“そんな”こと? ご主人様のいう事に対してそんな事とは、また随分と調子にのっちゃっていますね、キックス♪」

「ぁ、いや、ノノ? 随分素敵な笑顔だね……じゃなくて、別にノノの事を悪く言ってるんじゃなくて、今はちゃんと考えを」

「つべこべ言わずに、行きますよ、キックスっ!」

「いや、だからノノ――」



ちらっ、とツェルカさんへも視線を遣って。


私の反対側から、キックスの腕に抱きついてきた。何となくむっとするので私も反対側のキックスの腕に抱きつく事にする。



「ほらキーくんっ、両手に花だねっ! う・れ・し・い・よ・ねっ♪」

「嬉しいですよね、キックス♪」

「うぇ、あ、ツェル姉まで!?」



さすがツェルカさん。私が認めた“強敵とも”なだけはありますっ。ちゃんと分かっていてくれている。



「さ、この四日は遊びどおしますよ、キックス!!」

「ふふふっ、お姉ちゃん、寝かさないからね、キーくんっ♪」

「いやだからっ、もう少し真面目に事態を考えて――わああああああああああ!!!???」







――大丈夫ですよ、と口には出さずに答える事にする。

死ぬ事が怖いと言えば嘘になる。けど、だから私は笑っているのだと思う。


私が死ぬのは決まっていた事で。だからナナが助かるとのなら、それで良い。私の事なんて二の次。

ただ、そうして残されたナナの事が、ナナに対する他のヒト達の扱いを知った今となっては心残りではあるけど、……うん、きっと大丈夫。

私が気にいったキックスを、ナナもきっと一目で気に入ると思うから。私がいなくなった穴は――きっと彼が埋めてくれると、そう信じて。


でも、“仮の主”の権利って、ちゃんと譲渡出来るんでしょうか?

少し、心配。



私の命は残り四日。


……ふぅ。

何となくこのまま続けるのが飽きてきたし、日々読者数が減って行ってるっぽいのは観ていて辛いです、凄く。

テンションダダ下がりですよーもうっ!


と、愚痴ってみた。



個人的にもあまりキックスの話を長々ととづける気はないので、ここ辺りで一旦話を斬ろうかなーなんて思っています。


“なんちゃった♪”女神様とかアルを出せないのは、何となく辛いです。



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