表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【キックス編】
657/1098

Early X. キックス-14

駄目だ、時間がないっ!?


――歩きにくい。

キックスは駄目で元々、というかもう何度目になろうかと言う説得を試みることにした。


左を見る。

腕に抱きついて、と言うか半ばキックスが引きずっているのだが、嬉しそうに笑っているツェルカがいて。時折、頬擦りなんかしてきたりもして。

色々な感想はあったが――胸とか感触とか香りとか――差し当たっては非常に歩きにくかった。



「……ねえ、ツェル姉」

「うん、なに、キーくん♪」

「ちょっと、離れてくれないかな?」

「いやっ。それにそういうこと言うキーくんは嫌いになっちゃうぞ?」

「あー、……うん、そうだね」



ここで、『なら嫌いになってくれても良いよ』などと言う度胸はキックスにはなく――と言うよりもそれなりに昔からの付き合いがあるツェルカに嫌われたら嫌われたでやるせないものがある、と言う事もあったりするのだが。

キックスの内情はさておき、“こちら”の説得は諦めることにした方がよさそうだった。


右を見る。

対向のつもりか、そこにはキックスの腕に力の限り抱きついているノノーツェリアがいて。もう腕が変色するくらい全力で抱きついてくるものだから腕の感覚なんてものはもうなくなっていたりして。

色々な感想はあったが――どこか拗ねてる表情が可愛いとか腕の感覚よ戻ってこいとか――取り敢えずは歩きにくかった。ついでに腕が壊死したりしないかなーなんて思ったりもする。



「……えと、ノノ?」

「……」

「ノノーツェリア?」

「……」

「の、ノノちゃ~ん?」

「……」



最後のは少し恥ずかしかったが。

もうそっぽを向いて完全に無視の体制である。不機嫌そうに、視線を合わせることすらしてくれない。



「キーくん、キーくん、そんな性悪に構ってちゃ駄目だよ。と言うか要らないから早くぽいしちゃいなさい、ぽい」

「いや、ね。ツェル姉、何度も言ってるけど、ノノと僕は離れられないからそういうのは無理だって。それに捨てるとか捨てないとかじゃないし」

「なら私とキーくんも離れられないのっ、ね♪」



ますます強くツェルカが抱きついてくる。ついでにノノーツェリアも、まだそんな力が残っていたのかと思うほどに力強く抱きついてきた。

両腕は痛いし歩き難いし、それに――気の所為か頭も痛い。


――も、散々だ。




◇◆◇




あの時、ノノーツェリアとツェルカの恥も外聞もない言い合いと、集まってきた野次馬の街のヒト達、それに騒ぎを聞きつけて城の中からは這いずってきた兵士たち――と。


結局、散々と晒し者にされた揚句、キックスが取った行動は逃げる事だった。まだ立てないノノーツェリアとツェルカを担ぎ上げての、強行。



正直あの時の自分は何を考えていたのかと、今になって心底問いたい。



だがそれしか選択肢がなかった、と言う事も確か。


ノノーツェリアとの制約があるのでキックス一人、もしくはツェルカと二人だけで逃げると言うのは無理。かと言って、あれ以上あの場所に留まる事はキックスの心情上無理があった。何より好き好んで『捕まったら即死刑♪』的な状況で捕まりたくなどない。


忘れたいところだがキックスは今、ノノーツェリアとの仲を勘違いされて追われている最中、しかも捕まったら死刑になる可能性が極めて高いのだから。もしかしたら死刑じゃないかも……なんて甘い考えはこの際捨てている。


――だから取れる手段としては“三人で”逃げるしかないわけで。



……ついでに今回の事はノノーツェリアとの勘違いに拍車をかけたんだろうなぁ、と思いつつもそれは諦めることにした。もうなるようになれ、だ。




◇◆◇




「僕、これからどうなるのかなぁ」

「……今回の件で、本当に犯罪者になってしまいましたね、キックス」



やっとノノーツェリアが喋ってくれた、とはいってもそこに嬉しさはない。



「だよ、ねぇ」

「はい。王女誘拐は十分な重罪です。証人もあれだけいましたから、言い訳はするだけ無駄でしょう」


「……王女誘拐? 誰が?」



そこで不思議そうに声を出したのはツェルカである。

そう言えば、ツェルカにはノノーツェリアがこの国のお姫様だと言う事はまだ一度も言ってなかったな、と思い出す。と、言うよりお互いに自己紹介すらしていないのだが。



「私がです、この無礼者」

「えー、嘘だぁ。ねえ、キーくん?」

「……ツェル姉、こちら、この国のお姫様、ノノーツェリア・アルカッタ」

「ノノーツェリア・アルカッタです。どうぞ良しなにはしないで結構です。あなたと慣れ合う気はありませんから」

「ちょ、ノノ――」



いきなりケンカ腰のノノーツェリアを窘めようと――、それをツェルカが遮った。



「良いよ、キーくん。私も同じだから。――私はツェルカって言います。ノノーツェリア・アルカッタさん? あなたみたいに大層な名前ではないけれど、よろしくお願いしますね? ……こっちも、あなたなんかと慣れ合う気なんてないから」

「それは結構。気が合いますね」

「そうだね。そういう意味じゃ、私たちは気が合ってるのかもしれないね?」

「ええ、全く、そうですね」



お願いだから、そういう言い合いをするのなら自分を挟まずして欲しいと思う。

まだ二人とも、自力で立つ事が出来ないようなので仕方のない事なのだが。



「――でも、あなたがノノーツェリア・アルカッタ? キーくんの言葉は信じたいけど、それはウソでしょ?」

「って、ツェル姉まで――」



とか思ってると、ツェルカまでいきなりケンカを売りだした。

けれど不思議なことにノノーツェリアがそれに怒りを見せるような事はなく、むしろ冷静に、僅かに目を細めてツェルカを見た。



「……それは、どういう意味でしょうか?」

「あなたがナナーツォリア・アルカッタの方だって言うのなら分かるって言ってるんだよ、私は」

「私と姉は似ていますからね」

「“そういう事”じゃなくって」

「――」

「分かってるよね? 自分の事だし。キーくんは初めてこの国に来たから知らないみたいだけど、あなたが――病弱なノノーツェリア・アルカッタ第二王女のはずがないじゃない」

「ええ、そうですね」


「……え?」



一瞬、ツェルカの言っている意味が理解できなかった。そして、それに何ら躊躇いなく頷いて見せたノノーツェリアにも。



「あのね、キーくん。キーくんは知らないみたいだけどね、」

「キックス、知っていますか?」



説明しようとするツェルカを遮って、ノノーツェリアが言葉を掛ける。ツェルカは、自分の言葉が遮られたことに嫌な表情一つ見せなかった。



「え、何を?」

「この国の第二王女、ノノーツェリア・アルカッタは生まれた時から病弱で、それこそいつ死んでもおかしくないくらいなのです」

「は、え……?」

「そして最近、彼女の体調が一変しましてね、いつ死んでもおかしくは――と言うよりも、数日持てばいい所、と言ったもはや瀕死の状況にあるんですよ」

「ノノ、何言ってるの?」

「何を? ノノーツェリア・アルカッタの事について、キックスが知らないようでしたので説明をしているんです」

「え、ぁ、でも……ノノーツェリアって、ノノ――」

「ええ、私の事ですよ。ちなみに、今話した内容に嘘はありませんし、国を挙げた大嘘、と言う訳でもありません」


「だから私は彼女がノノーツェリア・アルカッタじゃありえないって言ってるんだよ、キーくん」



よく、分からなかった。

ノノーツェリアは今目の前にいて、でも目の前のノノーツェリアはノノーツェリアではありえなくて、だからつまりノノーツェリアはナナーツォリアと言うヒトになる?



「……と、言う事はノノはノノじゃなくて、嘘を……?」

「いいえ、キックス」



首を振る。……何に?



「私は嘘はついていません。先程言ったことにも間違いは何一つないですが、残念なことに――私が間違いなく、ノノーツェリア・アルカッタ本人である事も事実です」



余計に何がどうなっているのか分からなかった。

今にも死んでもおかしくないノノーツェリアが、今目の前でわらっているノノーツェリアと同一人物って言う事?

それは、どういう意味なのか――



【アルとレムの二言講座(ツッコミ役:レアリア)】



「おはよう、アル」


「……」


「さ、あっちに湖見つけたから顔洗ってこようか」


「……」


「……んー、こう言うのも、何だか良いなぁ」



「あんた、おかしなものでも食べた?」



「余計な御世話だ」


【お終い】



きゃ~♪♪♪


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ