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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
【キックス編】
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Early X. キックス-6

……お腹、好いたなぁ


「それで、あなたの主の特徴は何かないんですか?」

「特徴……んー?」



ご主人様の姿を思い出す。

ごくありふれた目と髪の色と、どこにでもいそうな容姿に、どこにでもいそうな体型。服や装備品も珍しいものがあるわけでもなく、――全くと言っていいほど特徴と言う特徴に思い当たらなかった。


でも、目の前の彼女なら。

――まるで本物の黄金を梳いて金糸にしたような美しい金髪に、どこまでも澄んでいてまるで見つめている自分自身さえ見えてきそうになってしまう吸い込まれそうな蒼い瞳。醸し出す雰囲気は愛嬌の中にも何処か近寄り難さ、触れてはいけないようなそんな気を起こさせる、好奇と言う言葉が本当に似合うだろう。それに何より、ちょっとおどけるように、悪戯っぽい笑顔がまた可愛い……

などと次から次へと思いつくと言うのに。



「キックス? どうかしましたか、私の顔をじっと見て……何かついてます?」

「あ、いや、そういう訳じゃなくて、うん。気にしないで、何でもないから」

「? 変なの」

「……いやぁ」

「でもね、キックス。私に見惚れていたのなら見惚れていたと、素直に言っても良いんですよ?」

「そっ――……そういう訳でもないから」

「あら、それは残念」



くすくすっ、と笑う彼女の姿はやはり絵になる――



「キックス?」



――っと、また見惚れかけていて我に返る。



「ぁ、うん、ご主人様の特徴……だったよね」

「そうです。何かないんですか?」

「ん~、強いて言うならそうだね……兎に角、雰囲気がへたれっぽいヒト、かなぁ?」

「……なんですか、その特徴は?」

「いや、改めてご主人様の特徴はって言われても思いつかなくって。でも多分、ノノがへたれっぽいと思ったヒトがご主人様だから、きっと大丈夫だよ」

「へたれっぽい、と言われましても……」



困ったように周りのヒト達を見まわすノノーツェリアを眺めていて、もうひとつだけ、重大な特徴があった子を思い出した。



「「――あ」」

「って、どうかしたの、ノノ?」

「キックスの方こそ、どうかしたんですか?」

「ああ、うん。ご主人様の事で、もうひとつ重要な事を思い出したんだ」

「重要な事ですか? それはどんな?」

「うん、多分、ご主人様のすぐ傍にメイド服のヒトがいると思うだ」

「メイド服、ですか……」

「そうそう。それでそのヒトは銀髪の凄い美女だから、ノノでも多分一目で分かると思うよ」

「銀髪の、美女……」

「うん、そう」

「……例えばあそこにいる二人組、とかですか?」

「――え?」



ノノーツェリアが何気なく指し示した先、そこには一見へたれっぽい男と、場違いにもメイド服を着込んだくすんだ銀髪の、絶世の美人ともいえる女が二人、何故か露店を開いていた。

売っているものは薬草と、何やら怪しげな壺。微妙なお札っぽいものには『凄い薬』『もっと凄い薬』『ばんのーやく』などと書かれて壺に張り付けられているが、胡散臭さ満載である。


だが、たとえ並ぶ商品が如何にもな感じのものばかりであったとしても。

へたれ(仮)の男の方はそうでもないが、メイド服の女の方が容姿も相まって驚くほどに人目を引くために、そこにはかなりの人だかりができていた。



「――あぁ!!」



その二人を見て、キックスは思わず指をさして大声をあげていた。

と、言うよりも何故に今まで気づけないか、と言う話ではある。




「やべっ、見つかったぞ!?」

「これで見つからない方がどうかしていると思いますが?」

「それもそうだな、っと。んじゃ逃げるかっ」

「はい、旦那様」




何の仕掛けがあるのか、へたれ(断定)が立ち上がると同時に、開かれていた露店がその場から消え失せた。そしてメイド服の女の手には、いつの間にか荷物が一つ。

目と目で確認し合い、その男と女は二人で同時に逃走を――



「――って、ちょっとご主人様!? どうして逃げようとしてるんですかっ!!」



「ふっ、それは明日がそこにあるからさっ!」

「怖気がします、旦那様」



無駄に白い歯を輝かせて、何やらポーズっぽいものを取りながら走り去っていく。誰か、本人に止めた方がいいと教えてあげる事を強く勧める、恰好だった。


恰好と雰囲気に反してその逃げ足は――ついでに周りの野次馬も一歩引いて男を避けようとしているのもあって、驚くほど速かった。

メイド服の女の方は――……ただ歩いているだけのように見えるのだが何故か走る男と並走していた。ついでに言えばスカートが微塵もなびいていないのはどんな理由か、それとも技術の賜物か。


キックスの方も必死に追い縋ろうとはしているが、野次馬が邪魔でそれどころでもない――、



「万物の王、地を這い伝う、大地の子らよ……」

「って、ノノ!? 一体何をしようと――」

「彼のモノらに尊大にして、寛容なる慈悲を与えよ――アース・クエイク」



ノノーツェリアが大地を力強く踏みつけた、その瞬間。

……地獄絵図が始まった。



『きゃあああああああ!!!???』

『うわあああああああ!!!???』



ノノーツェリアが踏みつけた大地から始まった、真っ二つの裂け目が集まっていたヤジ馬たちを一切の容赦なく呑み込んでいく。

パニックになって逃げ惑いながらも容赦なく地面の裂け目に飲み込まれていく一般市民たち。そこには昼間ののどかな、喧騒の雰囲気など微塵もなかった。



「ちょぉぉ、ノノ!? 一体何乱心しちゃってるの!?」

「――いいから、キックスは少し、落ち着いて見ていてください」

「いや落ち着いてって! こんな状況でどうやって、」

「――よしっ、捕まえ……ましたっ!! ――ブレイクッッ!!」



今度は両手を地面へと叩きつけるノノーツェリア。

同時に、今度は避けた地面が元に戻るように合わさっていき――後に出来たのはやはり地獄絵図のような風景だった。





「これは壮観な風景に御座いますね」

「うわ!? て、い、いつの間に!?」



気がつくと、キックスの傍には本当にいつの間にかメイド服の女が佇んでいた。本当にいつの間にかそこにいたメイド服の女の姿に、ノノーツェリアも驚きに目を見開く。



「――そんな!? 確かに捕まえたと思ったんですが……!!」

「それは御心配なく。貴女の目論見通り、旦那様はちゃんと生首状態になっておられますので」




「――テメッ、逃げる暇があったんなら俺を助けろよっ!?」




「しかし生首が此処まで大量にあると流石に不気味ですね」



彼女の言葉の通り、二人の目の前には首、首、首が広がっていた。厳密に言えばそれは生首ではなく、首以外を生き埋めにされたヒト達のなれの果てである。

だが不気味、と言いつつ彼女の表情は何一つ変わっていないのだが。ついでに生首の一つから聞こえた声は完全にスルーだった。



「可哀想なので助けてあげたいのですが、よろしいでしょうか、ノノーツェリア様?」

「――……あなた、何者? その雰囲気と言い態度と言い、ただのメイドじゃないですね?」

「いいえ。私は見ての通りの、ただの旦那様にお傍におります、ただ一人の伴ですとも」



ノノーツェリアと話しつつ、メイド服の女は一番近くにあった生首を一つ、すぽんっ、と不自然なくらい鮮やかに引っこ抜いてみせた。

不思議なことに引きぬかれたその男性の服には土の汚れ一つついてはなく、またその男性が埋まっていたはずの地面にも、先程までその男性が埋まっていた痕跡が全くと言っていいほどなくなっていた。



「……おや、これは結構楽しいですね」



無表情だったその中にほんの少しだけ楽しげなものを浮かべながら、メイド服の女はすぽん、すぽん、と連続してヒトを地面から引き抜いていく。

傍から見ていれば実にシュールな光景ではあった。


そして最後の一人を地面から引き抜いて――



「ではノノーツェリア様、そちらからも何かお尋ねしたい事、それに言いたい事も御座いましょう? お話を伺いましょうか」

「え、えぇ、そうですね。素直にそう言っていただけるのでしたら幸いです。ですけど、」

「では参りましょうか。こちらでは少々、話をするには場が賑やか過ぎですので。近くの……そうですね、あちらのお店でも如何でしょう?」

「ええ、それは良いんですけど……」

「如何なさいましたか、ノノーツェリア様?」

「……アレは、放っておいても良いのですか?」

「はい、どうかお気になさらずにお願い致します。いつもの事ですので」

「そうなのですか、……いつもの事」

「はい、いつもの事に御座います」

「……じゃあ、行きましょうか」

「はい、参りましょう」




◇◆◇




「ご、ご主人様っ、頑張ってくださいっ!」

「痛っ、痛ぇよ! もう少し優しく引き抜け、キックス!!」

「そ、そんなこと言われても、僕にはこれが精一杯ですよぉぉ」

「首がっ……つか、そんな力じゃ地面から抜け出すより先に俺の首が引っこ抜けるわっ!!」

「ごめんなさぁぁい。でも僕にはこれ以上は無理ですよ!!!」

「ってかあのヤロウ、何で嫌味たらしく俺だけ地面に埋めたままでスルーしやがるかっ、あの性悪めっ!!」



二人で――悪戦苦闘しながら必死に地面から抜け出そうとする生首一つの姿がそこにはあった。


【アルとレムの二言講座(ツッコミ役:レアリア)】



「アルッ、凄くいいもの手に入れたぞっ、ほら!!」


「……」


「何でも一念で数個しか作ることのできない超限定品のアメらしいぞ!」


「……」


「うん、当然、これをアルにプレゼントしちゃおう!! ……て、あまり嬉しそうじゃないな? どうしてだ?」



「あ、レム。あんたはそれゲット出来たのね。私は無理だったのに」



「当然だ! アルのためならたとえ火の中水の中、ドラゴンの胃袋の中だろうと神の神殿だろうとへっちゃらだっ!!」



「……アルの? でもそれって、魔力回復のマジックアイテムで、味はすっっっっっっごく不味いはずなんだけど。その子に必要なの、魔力回復薬?」



「……え゛?」


「……(ふるふる)」



【お終い】



ららばい。

……何度も言いますが、この後書きに大層な意味なんてないです。


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