Early-X. キックス-1
昔々、あるところに……で、はじまる?
レム君が苛められる様子はもう少しお預けです?
「「それは昔々」」
「定めに負けず己の道を突き進み――」
「運命に惑わされず己の信念を貫いた――」
「ある一人の奴隷と、」
「彼を愛した彼女“たち”の物語」
◇ ◇ ◇
「って、ちょっと待てそれはおかしくないかっ!?」
「……何がでしょうか、旦那様?」
「その彼女“たち”ってのはなんだ、“たち”ってのは!?」
「文字通りの意味ですが、旦那様は既にお忘れになられましたか?」
「いや、忘れちゃいないけど、何つーか納得がいかないというか、何故にあいつが?」
「人徳の差で御座いましょう」
「……絶対に俺の方があると思うけどなぁ」
「それは妄言です」
「言い切るなよっ!?」
◇ ◇ ◇
ある一人の少年がいた。コレはそんな一人の少年の、
――物語が、英雄譚が悲劇からしか始らないんならそんな物語は沢山だ。
彼はそう言い、剣を抜いた。
その身は平凡、なれど意志は絶対。
――俺はそんな物語なんて認めない。
彼は誓った。彼の愛する者“たち”の為。そして何より自身の為に。
――それが物語であるというのなら――総ての語りを打ち壊し、全てモノの変わらぬ平穏を砕かせはしない。
……些細な、けれど決して小さくはない、ただのお話。
語り部にもならず、物語にも語られない、一人の少年の生きざま。
◇ ◇ ◇
「……と、言うよりも主人の俺を差し置いて先にハーレムを実現してるってのが何か間違ってないか?」
「私には間違っている箇所は微塵も見受けられません」
「いや、だってそもそもあいつはハーレム願望なんてなかったはずだし……何故に?」
「何故、と問われましても。現にキックス様が後宮を作られた……という表現では語弊があるかもしれませんが、その存在が確かな事に間違いは御座いません。それを今さら理由を問うというのもおかしな事では御座いませんでしょうか、旦那様?」
「……おかしい。いや、絶対におかしいだろ、これ」
「さて、私にはなんとも」
うふふ~、……うぷっ