18. なきむし
時系列的に、アルーシアやレアリアが出てきてるシリーズは今のお話の後になります。
ので、まだ幼い子がぽつぽつと。
☆☆~マレーヌの場合~☆☆
(マレーヌ:処理部。アルゼルイに派遣された。処理能力はかなり高い。)
「……主様」
「ん~? どうした、……えっと、マレーヌ、だっけ?」
「はい、主様」
「いつも俺の後をちょこちょことついてきてる」
「――違います」
「ま、それは良いとして。でもそっちから話しかけてくるなんて珍しいな……何か用事か?」
「私が主様に話しかけるのは何か変でしょうか?」
「いや、そういう訳じゃないけど、ついいつもの癖が。だってマレーヌが俺に話しかけてくるのって何かしらの用事があるときばかりだろう? それ以外は俺の後をちょこちょここそこそと微笑ましい限りについてきてるだけだし」
「そうだったかもしれません、と言えなくもないかもしれませんが、納得しかねます」
「ま、それは精進が足りないって事で納得しておけ」
「……はい、主様」
「んで、用事とかではないにしろ、俺に話しかけてきたって事はそれなりの理由があるんだろう?」
「……理由、ですか」
「そう、理由。ってかその様子からしてその理由すらなさそうな感じだな、何か」
「理由と云えば理由なのですが、主様が皆に節操無く声を掛けておられたのでなら私も、と……」
「成程。寂しくなったから私の事も見てほしい、という訳か」
「そうです、と認めた方が主様は喜びますか?」
「ああ、……少なくともそういう事を聞かれた後にどう答えられても嬉しくはないな、余り」
「……失敗しました」
「失敗? 何がだ?」
「いえ……私が主様に話しかけたのは、主様の仰ったとおり私を見てほしくなったということで間違いありません」
「そうか」
「……反応が薄い」
「あ、いや悪い。別に他意があるってわけじゃないんだが……なにか『あぁそうかー』みたいな感想しか思い浮かばなくてな」
「だから主様は駄目だというのですっ!!」
「え、逆切れ? そこで急に逆切れするの?」
「……だから主様は駄目だというのです?」
「いや、それを俺に聞かれても返答に困るんだけど?」
「……――うん、主様」
「どうした?」
「主様と普通の会話をする機会がないので話題が思いつきません」
「そうか、それは大変だな」
「ですから主様、このようなときは男性の方がリードするのが常識なのです、間違いありません」
「……はぁ、まあ別に悪かないけど、それって誰の入れ知恵?」
「少し知人に聞き及んだだけです」
「……知人ねぇ」
「なんですか」
「いや、何でも」
「僅かながらの悪意を感じます、主様」
「いや、悪意ってほどでもないんだけどな。マレーヌの知り合いって言ったら多分俺とも知り合いだろうなー……つか、この館の誰かか?」
「違います」
「ん~、なら……まあ良いか」
「女の詮索はしないモノです、主様」
「うん、その言葉はあいつの入れ知恵だな」
「……黙秘します」
「その黙秘は肯定と一緒だな――っと」
「――」
「はいはい、詮索はなしだったな」
「そうです。それと話題の提供を要求します」
「話題ねぇ……まあ、そこまでして俺と会話をしたいって心意気は素直に嬉しいが」
「……主様に喜んでいただけたなら幸いです」
「そうだなぁ……それじゃあマレーヌ、当たり障りなところで悪いが、最近調子はどうだ?」
「悪くありません」
「何か色々と頑張ってるみたいだな?」
「はい、日々お姉様を目指して精進中ですっ」
「よしっ、ならそんなマレーヌに一つ忠告をしてやろう」
「何でしょうか、主様?」
「あいつ目標にするのだけは止めようなー? 俺的に嫌だし、それに何より――無駄だから」
「――無駄、ですか?」
「そ。あいつのあれは目標になんかするもんじゃねえぞ? 俗にいう天才の真似事を凡人がしようとしても意味なしってやつだ。あいつと“同列”を目指すこと自体は悪くないけどな」
「……考えておきます」
「ま、すぐに結論出す必要もなし、な。どちらにせよ、自分なりの道を探した方が良いぞ、多分」
「はい、主様」
「って、おぉ、俺って今もしかして結構真面目というか、ご主人様らしい事を語ってねえ? な、マレーヌもそう思ったよな?」
「……、そうですね、主様」
「うん、何か少しだけ感激だ」
「おめでたい主様――じゃ、なかった。おめでとうございます、主様」
「それ意味が違うからっ!? “おめでとう”と“おめでたい”じゃ意味が真逆になるくらいに違うからっ!?」
「……ちょっと言い間違えただけです」
「よし、マレーヌ、絶対に、あいつを目指すのだけは止めようなー?」
「それは考えておきます、と先程に言いました」
「いや、自覚だろうが無自覚だろうが、あいつの悪影響がもろに出てたから。ここは少しでも早く、早急にくぎを刺しておいた方が良いかなーと」
「お姉様からの悪影響なんてありませんっ!」
「そして気付いた時にはどっぷりと、か。それがあいつの手口だとなぜ気付かない!?」
「気付いたとしてもそれで弄られるのは主様だけだから大丈夫なんですっ!!」
「滅茶、自覚してる!? つかそれが不毛というか俺は断固拒否する、だからこそこうして前もっていろんな奴らにくぎ刺したり忠告したりしてるんだろうがっ!?」
「逆効果って知っていますか、主様?」
「――ふっ、何事も失敗を恐れていたら動けなくなるってのを知っているか、マレーヌ。失敗ってのは恐れるものじゃなくて悔いるものなんだよ」
「そして今の主様がいるわけですか」
「そうだよ、ああその通りだよ、悪いか畜生っ!!」
「御愁傷様です」
「だから慰めるくらいなら俺にもっと愛をくれー!!!!」
「……私で、よろしければ」
「――へ?」
「主様が、望まれるのでしたら私の……愛を差し上げます」
「……」
「主様?」
「――ちぃ!! マレーヌ、一体何が目的だ!? そうやって持ち上げておいて、次はどんな手を使って俺を弄ろうって魂胆だっ!?」
「……ぅ」
「て、え? な、何を今にも泣きそ、」
「ぅわあああああああああああああん、主様のバカバカバカバカバカバカー!!!!」
「ちょ、おいマレ――、……うん、取り敢えず……周りの目がすっげぇ痛いな。俺、何を間違えたのかな?」
マレーヌさん、まだまだ泣き虫の小さなお子様です。○才かは……まあ良いとして。少なくともまだまだ奮闘中なのは確かです。
……という訳で今日は結構短くなってしまった。これは、私自身のテンションによっても長さが変わってくるなぁ、……人物の相性とかとは別にして。
まだ、お祭り開催中~。