06. すみっこ
部屋の隅っことかって、落ち着きません?
……と、いう話ではないと思いたい。
☆☆~ストファー&スターカスの場合~☆☆
(ストファー:清掃部。)
(スターカス:被服部。)
「……」
「……」
「……」
「……」
「……」
「……で、お前たちは端っこで何をしてるのかな、ストファー、それにスターカス」
「部屋の端は落ち着く」
「あ、掃き残し発見」
「だからぁ! この飲めや騒げやの最中にお前たちは二人して部屋の隅の隅で座り込んで何をしてやがりますかと俺が訪ねてるわけですが、返答や如何に!?」
「見て、分かんない?」
「私なんて、どうせダメな子」
「いやっ、見てもお前らが何してるのか全く分からねえし、そもそもスターカスは何で落ち込んでるのっ!?」
「レム様は癇癪持ち。私にあたられても……その、困る」
「ご免なさい、ここにいてご免なさい、生きててご免なさい、存在しててご免なさい」
「うん、もうな、なんて言えばいいのか……お前ら、とにかく俺の話を聞け。な?」
「それでレム様は一体何の用なんですか? ちなみに私は部屋の隅の角っこを眺めて和んでいる最中なので邪魔しないでくれると嬉しいです」
「私はもう駄目です。きっと私なんて、この部屋の掃き残しみたいな存在なんだ、そうなんだ」
「汚いのは悪です。掃除しちゃいましょう」
「あ、あ、あああ……掃き残しが、私の居場所が……なくなって、」
「いやもう、本当にお前ら何してるんだって感じなんだが?」
「聞いてませんでした? 部屋の隅で和んでいます。邪魔しないでくれると嬉しいです。ちなみにスターカスは何か大きな失敗をしたみたいで落ち込んでる最中だから、放っておいた方がいいかも?」
「私の居場所なんて、もうどこにも……」
「つかよっ、せっかくの祭り! ……とはいってもお前たちが開いてくれたものだけど。せっかくの無礼講! ……今日だけだぞ? いつもじゃないぞ? ――ってなわけなんだから、部屋の隅で暗い顔をしてるなんてのはつまらないじゃないかと俺は思うんだっ!」
「私のどこが暗い顔をしていると? 十分楽しんでいますが何か?」
「……うぅ」
「うー、あー……兎に角、だっ! ストファーはまだいいとしても、スターカスっ、いつまでも落ち込んでるんじゃねえ!! とりあえず立ち上がれ、ほらっ」
「おぉ、レム様大胆」
「あ、ぁ? レム……しゃま? 手、手を……でも、私なんてそんな」
「何に失敗したかは知らないがそんなこと気にするな。失敗なんてどうせ過ごした日の数くらいはしてるものだし、大概の事は後悔してるのは自分自身だけだ。そう言うのは気にするだけ無駄、」
「レム様を見習え、と」
「レム様を……」
「そうっ、俺を見習ってどんなことでも負けずくじけず――ってちがぁぁう!!!! いや違わないかもしれないけど、俺はそれほど日々を悔やんだり失敗したりはしていないぞ」
「「え、でも……」」
「どちらかと云えば俺の場合は失敗“されられる”事が多いだけだ。別に俺が原因で失敗しているわけじゃ、ない!」
「失敗の原因を他人の所為にするレム様、輝いてる……!」
「少し元気が出たかも。前向きすぎのレム様に比べれば私なんてまだ……」
「……いや、本当に事実なんだぞ? 俺の失敗とか、色々の原因は十割弱があいつの所為であって――」
「「お姉さまを悪く言わないでくださいっ!!」」
「ならお前らの敬愛して止まないご主人様たる俺は悪く言ってもいいってのかっ!?」
「「はいっ!!」」
「……」
「「当然ですっ!!」」
「――ふっ、……なんか負けを見たぜ、色々と。そう、色々とな」
「……落ち込むレム様の姿は和む」
「……自分よりも下がいるって、安心する」
「ふ、ふふ。お前たちがこのどんちゃん騒ぎを楽しんでくれているというのならそれはそれで……俺の精神的ダメージなんて些細なことだよな、きっと。……あれ、でもそもそもこれって俺のために開いてくれたものじゃなかったのか?」
「一生懸命、掃除した」
「私も、……私はレム様の服を作――……そうでしたよね、私なんて、どうせダメなんです。せっかくご用意したレム様の服だったのに、部長にデザインを却下されて……二日も徹夜で考えたのに……私、やっぱり才能ないんだ、駄目な子なんだ」
「服? 聞いてないけど、この日のためように俺の服を作ってくれてたのか、スターカス?」
「部長に却下されたけど……一応、は」
「私も、一生懸命掃除した!」
「あーはいはい、ストファーも偉いぞ、すごいぞー。……んでも、どうして却下されたんだ? つーかせっかく作ったものなのに」
「レム様の言葉が軽い。まるで部屋の隅を相手にされているようで……ふふ、それも悪くないかも」
「デザインが、良くないって……お姉様にも駄目出しされた」
「あいつにも? それは……と言うよりもあいつにまで駄目出しされるようなものを作れるのはそれはそれで凄いような。なんかどんなものを作ったのか見たくなってきたな、おい」
「それに独創的なものを、と言われて……意気込んだら、史上稀に見る、呪いの装備が……」
「癖になったら、どうしよう……?」
「それダメじゃん」
「レム様を蔑ろにするのはお姉様にも怒られるから駄目だけど、私が蔑ろにされるのは意外と有りだったり……?」
「お陰で、封印指定で今は倉庫の奥に眠っているという始末」
「倉庫って、ソレはそれでかなり凄いと思うぞ。……というか、ストファー、もうそろそろ戻ってこい。そっちに逝くのは危険だぞ」
「……ご主人様、もっと罵って」
「うぅ、お姉様に見放されたら、私どうしたらいいのか……」
「あいつはそんな程度じゃ見限ったり見捨てたりしないって。クールに見えて燃え滾っているように見えて、心根が優しくって懐も深い、けど悪戯心が人並み以上にありすぎるちょっぴり困ったちゃんだから、あの女は。……それとストファーな、だからいい加減戻って来いって。自分を見失うなー?」
「ご主人様のいけずぅ……」
「そう、なのかな? お姉様、私のこと呆れたりしてないかな?」
「してない。むしろあいつなら感心してるだろうよ――っと、そろそろいい加減にしろ、ストファー」
「あぅっ!? ……痛い」
「っ!! ……つ、遂にレム様が本性を丸出しに。私も、ストファーみたいに酷い目にあわされちゃうんだ、きっと」
「酷いって……軽くチョップしただけだろうが。それと本性って何だ」
「……レム様、暴力反対」
「そうです、暴力はいけないんです。……あぁ、でも私は要らない子だからきっと酷いコトされちゃうんだ」
「今のが暴力だったら俺があいつから日頃受けてる行為は何だってんだよ。更に過激だぞ」
「「あれは愛の鞭ってお姉様が言ってました」」
「何でも愛とかつければ許されると思っていれば大間違いだぞ」
「「それも、レム様なら大丈夫ってお姉様が……」」
「……、とにかく、だ。折角のドンチャン騒ぎなんだ。飲めや騒げや歌えや踊れ、それをこんな部屋の隅でじっとしてるのは楽しくないだろ?」
「大きなお世話です、レム様」
「でも、私なんかが……良いんですか?」
「ストファーの戯言は放っておくとして。スターカス、だから失敗程度気にするなって」
「私は部屋の隅で角を眺めて悦に浸っているので、もう放っておいてください」
「……でも、」
「ええいっ、ごちゃごちゃ言うなっ。つか来いっ!!」
「きゃっ!?」
「レム様、大胆……!」
「ストファー、お前もだ」
「ひゃんっ!? ごごごご主人ひゃま、ぅ、ううう、腕を……」
「あのあのあの……」
「兎に角、こんなときに部屋の隅っこで一人ぶつぶつやってるのは禁止だ、俺が許さん。つーわけだから来い」
「ごっ……ご主人様、強引。それに横暴です。無礼講、って言ったのに」
「うぅぅ」
「それとこれとは別だ。それにこれはお前たちのご主人様としての行動じゃなくって、俺個人としての行動だからな。どっちかと云えば“命令”じゃなくて“お願い”ってところだ。だから問題なし」
「……問題アリです、むしろそっちの方が大問題アリですよぉご主人様」
「――分かりました! 私は駄目な子ですけど、この際、今は精いっぱい楽しむことにします!!」
「おお、スターカス、ようやく分かってくれたか!」
「……と、いうよりも今の状況を振り切って無理やり元気出してるだけだと思う」
「さ、しゃぁ行きましゅよ、ご主人ひゃま!!」
「そう慌てなくても良いだろう。少なくとも俺はどこにも逃げないぞ」
「……、……見られてる見られてる。皆に凄く見られてる」
「しょしょしょ、しょれもそうでひゅね!!」
「少し落ち着け、というよりもなんでそんなにパニックになってるんだよ。と、それとストファー、視線なんて気にしたら負けだ。余り気にするな」
「……分かってない、ご主人様、自分の影響力を全然分かってない」
「さあ、行きましゅよ、ご主人様!!!!」
「ああ、ってだからそう慌てるなって」
……ふぅむ、十人十色?
何か色々と、駄目な気がする。というか、名前だけなら地味に20人くらいは出てきてるっぽいのでこのまま続けてると10~20回くらい続いてしまう!?
まあ、そのあと気力が残っていたら企画ものを改めてしてみるとしましょう。多分、野郎どもあたりかな? ……現状ですけど。