01. もとおひめさま
一人目。
☆☆~アメリアの場合~☆☆
(元、アトラビの亡国の王女様)
「よっ、アメリア。メイド服じゃなくて、そんなドレス姿を見るのはここに来た時以来か?」
「…レム? えぇ、そうね。最近はメイド服もあれで悪くないんじゃ、って思えてきてるけど、というよりもこ職人の腕がいいのよね、あれって」
「カラオーヌに言うと喜ぶぞ、それ。ちなみに被服部な」
「ん、じゃあ今度言っておく事にするわ」
「それとアメリア、その服、やっぱり似合ってるぞ?」
「そう、ありがと」
「つれないねぇ」
「これでも元王女ですからね。お世辞には慣れてるのよ」
「別にお世辞ってわけでもないけどな。んで、楽しくやってるか?」
「えぇ、それなりに楽しくやらせてもらってるわよ。…それにしてもこの館、こんなにヒトがいたのね」
「ああ、単純な規模で言えば少し大きな街くらいの人数がいるぞ?」
「それでこれだけの盛り上がりと経済状況。……レム、前から聞きたかったんだけどあんた達、一体どうやってこの館を運営させてるのよ? 正直なところ、レムが奴隷たちを買って出ていくお金を稼げているとは思えないんだけど」
「随分と突っ込んだ事を聞いてくるなぁ。まぁ、そこは色々とやってる事があるんだよ。地上の方でちょっとお手伝い、救済活動、とかな。地味にあいつが書いた本の売り上げ、とかも利いてたりするんだぞ。確かタイトルは……」
「『旦那様をいなす107の方法(基礎編)』」
「あぁ、そう言えばそう言うタイトルのも出てたな」
「それは私も読んだ事あるわ。……アトラビの城に置いてあって、女官とかにも人気だったわね、確か」
「嫌な事思い出させたか?」
「…いえ、自分から言い出した事だし、そうでもないわ。それにしても、人生って何が起きるか分からないものよね。ちょっと前まで、自分はずっとお姫様で、きっとどこかの国か貴族に嫁いでいくものだ、私の生き方なんて自分で考える必要もない、って思ってたのにね」
「ま、意外とそんなものだと思うぞ。俺だって結構似たようなところあるしな」
「似たようなって、急に人生観が変わったり、転落したりとか?」
「ああ、そんなところ」
「…へぇ。そう言えばレムがどういう風に生きて来たかとか、全く興味がなかったんだけど、ほとんど知らないわね。皆の会話にもほとんど上がらないし。……改めて考えると自分の御主人様の事なのにちょっと変じゃない?」
「そんな事はないぞ。そこな辺はな、実はあいつが情報操作を行ってたりする」
「あいつ? …お姉様が?」
「そ。だからあいつの話題とかは結構話に上がったりするだろ? それって情報操作の賜物な。今度気をつけながら他の奴らの話を聞いてると結構面白いぞ。…あ、ちなみにこの話はできるだけ他の奴らには内緒な? まあ、ばれたからどうだって事もないんだけどな、一応」
「分かったけど、貴重な事を随分とあっさり話すのね?」
「貴重? 全然、そうでもないぞ?」
「そ、そうなの?」
「ああ、貴重とか重要つーのはあいつの本名とか、そう言うモノの事を言うのであってこの程度の情報、言ってしまえば知ろうが知るまいが結果に変わりないしな」
「そうは思わないけど…?」
「でも実際そうなんだよ。あいつが情報操作してるって知ったからって、抗えるものだとは思わない事だな」
「それって脅し?」
「んにゃ、単なる事実」
「……流石、お姉様よね」
「ま、そこはそうだな。あいつって無駄に優秀だからなぁ」
「あ、と。そうだった。レム」
「ん、なんだ? こっそり抜け出して愛の告白とか?」
「違うけど。そうじゃなくて、言い忘れた事があったんだけど、ちょっと私の友人もこのパーティーに呼ばせてもらってるわ」
「友人?」
「あ、安心してね。この館の場所はちゃんとばれないようにって、処理部の方に頼んで連れてきてもらってるから」
「ああ、そこは多分あいつがうまく管理してるだろうし、それほど気にしちゃいないんだけど、アメリアの友人? そこはかとなく、嫌な…。ちなみに誰だ?」
「……まぁ、私の友達って言っても少ないんだけどね。リッパーとリリアンよ。ほら、ちょうどあそこに――」
「んじゃ! 俺は他の所を回ってくるからっ。二人には宜しく言って置いてくれ!!」
「あ、うん。分かったわ。…て、もう行っちゃった。………でも、アレがご主人さま、ね。何か奴隷ってものの認識が変わっていくわ。まるで友達、みたいな。…私の、初めての男の人のトモダ――――何でもない、何でもないっ。二人とも、ここよっ!」
おまつりちゅ~。
さあ、今日は無礼講……あれ、いつでも無礼講?