ど-397. まものがあらわれた!
……うむ
「旦那様」
「ん?」
「旦那様、トトト砂漠に巨大な魔物が出現して、人々が困っているとの報が入りました。如何いたしましょう?」
「放っておけば?」
「……」
「いや、何だよその咎めるような視線は。俺は至極まっとうな事を言ってるだけだろう?」
「いえ、私は何も。旦那様が咎められていると感じるのはあくまで旦那様ご自身にやましい所があるからでは御座いませんか?」
「そんなモノはない」
「では堂々としていてくださいませ」
「ああ、するぞ。俺は何もやましい事なんてしちゃいないんだからな」
「存在そのものが疾しいのでは致し方も御座いませんが。ですがトトト砂漠で人々が困ろうがどのような被害が生じようが、旦那様には全く関係のない事で御座いましょうから。旦那様の御慈悲も必要はありませんね?」
「いや、大体さ。トトト砂漠に魔物が出現、っていたってそれで俺はどうすればいいんだよ?」
「一対一の決闘を希望してみます。ちなみに魔物の大きさは標準的な城一つほどらしいです」
「でかっ、スヘミアの飼ってるミドガルドレベルかよ。つかそんなものと一対一で闘れるかよ」
「旦那様ならできます」
「ふっ、それ程でもあるけどなっ!」
「流石は旦那様。ご健闘を祈っております」
「いや、だからどうして俺が戦うとか言う流れになろうとしてる!? 第一そんな奴、俺がどうこうするよりもお前が何とかすればいいだろうに」
「何でもその魔物、女性が好みだそうなのです。食物的な意味ではなく、別の意味合いで。旦那様と一緒ですね?」
「魔物と俺を一緒にするな。……つまり、そうか。そいつは見かけた女の子たちを残らず喰い物にしていると……ふてぇ野郎だな、おい」
「旦那様にも聞かせてみたいセリフで御座いますね? ちなみにその魔物の主食は砂だそうですので、人肉を食べる事は決してございません」
「益々ふてぇ野郎だな。生きる為とか関係なく、己の欲望の為だけに女の子に酷い事をしようとは」
「旦那様にもお聞かせしたいセリフその二」
「……おい、さっきから何だよ。お前は一体俺の事をどういう奴だと見ているつもりだ?」
「旦那様は旦那様であり、それ以上でもそれ以下でもない今私の目の前に居る唯一の旦那様に御座います」
「じゃあ別のきき方をするが、俺がいつ、女の子を食い物にしたり酷い事をしたりした?」
「……ふっ」
「何だよそのバカにしたような笑い!? ああそうだよそうですよ!! 俺は女の子かき集めてみたけど食い物に出来た事なんて――……えぇい、くそっ! 悪いか、おい!!!!」
「いえ別に」
「その澄ましてる態度が余計にムカつくっ!!」
「では旦那様、その勢いのまま、行ってみましょう」
「行く? 行くってどこにだ?」
「トトト砂漠へ」
「は? 何を言っていらっしゃ――、転移方陣!?」
「旦那様のお株の一つのトラップですね? 真似してみました」
「真似て……おい!?」
「――では良い旅を」
「だから待ちやが」
「…………、さて、では仕事に参りますか」
色々と大変です。というより疲れてる?
……ま、いっか。
にっき・十九日目
【何か身の覚えのない奴から不幸の手紙が届いてた。これをどうしろと?
呪いの魔法とか、色々と手の込んだことがしてあったけど、そんな恨みを買う覚えはないはずなんだが。
いや、結構かってたりするかな?
まあ、無駄な努力御苦労さま。それと、これは他の所で有効利用させてもらうとしよう】