ど-394. 天敵
ど-77風に言ってみる。
【蒼き煌きを具えしモノ――静鎮と呼ぶ】
「……世の中にはな、いつだって天敵と言うモノが存在するんだ」
「旦那様にとってのリッパー様の様にで御座いますか?」
「リッパー? ……ああ、そんな感じかな。まっ、俺の場合はリッパー自体が苦手ってわけでもないんだけどな」
「何せ美人のお姫様、今は既に女王様ですしね?」
「ああ――、……いや、そう言うのは関係ないけどさ」
「そうなのですか?」
「当然だ。俺は外見や肩書だけで相手を見たりはしない」
「言葉だけ、ご立派で御座います、旦那様」
「言葉だけってのはどういう意味だ」
「……さて?」
「天敵ってのはアレだ、シャトゥにとってのファイとか、そう言う関係の事な」
「確かにシャトゥはファイ様に頭が上がらないようでしたね」
「ちなみにお前の天敵は……いるのか?」
「私は――私どもを翻弄するのはいつであろうと旦那様お一人のみと決まっております。それが天敵と表すのであらば、そうなのでしょう」
「誰が誰を翻弄だ、こら」
「私が旦那様を、ですが。何か?」
「……あれ、さっきと言ってることが違ってませんかー?」
「些細な違いです」
「些細違うよー、それは」
「では、私と旦那様は翻弄され合う関係に御座います」
「翻弄され合うって、何か言葉だけを聞くとお互いにすれ違い合ってる――みたいに聞こえるな」
「私と旦那様はいついかなる時如何なる場合いかなる状況に置いてもお互いの全てを隅から隅まで理解しきっている関係に御座います」
「理解してるって言うのと、それを有効活用しようとしてるて言うのとは大きく違うよな、と俺はつくづく思う」
「有効利用していませんか?」
「してるけど。でもお前の場合はある意味で真逆に利用してるから。もっと互いの為になる様にしようぜ?」
「十二分に行っているでは御座いませんか」
「……そうだよな。全部分かった上で、それでも堂々とそう言う事を言うのがお前だよな」
「疾しい事は何一つ――、いえ、疾しい事は旦那様以外には何一つ御座いません」
「俺も疾しい事なんて何一つとしてないからな?」
「見事な開き直りに御座います、旦那様」
「おいテメェ、そりゃどういう意味だ」
「存在そのものが疾しい可能性もあるお方が、よく仰います」
「……とにかく、俺とおまえの関係は今は良いとして。天敵ってのが世の中には存在してるよなぁ、って話だ」
「そう言えばそのような事を仰っておりましたね。急に如何されたのです、旦那様?」
「――なーんかな、『静鎮』の気配がする気がするんだよなぁ」
「……彼ですか。静かで、鎮めるとは名ばかりの」
「ったく。どうして今になって揃い出すかね――三柱どもは」
「……、三柱?」
「――あ、いや。なんでもない。忘れろ」
「……はい、旦那様がそう仰られるのであれば」
「シャトゥの奴、『静鎮』なんぞに遭わなきゃいいけどな」
「シャトゥも可哀そうに。天敵が一人増えます」
「だよなー。ま、俺としては俺に被害が回ってこなけりゃ『静鎮』だろうと何だろうとどうでもいいけどな」
「――だとよろしいですね?」
「……お前、変な気をまわして俺に被害が回ってくるようにするんじゃねえぞ?」
「まあ旦那様、それは勘繰り過ぎと言うモノでは御座いませんか?」
「だったら良いんだけどなっ!」
「――さて?」
赤さんが灼耀で、青さんが静鎮。緑の子はおりません。
にっき・十六日目
【何か影でこそこそと笑われている気がする。やっぱり昨日のモテた? と言うのは勘違いらしい。思い上がりと自意識過剰も甚だしい。
今日は料理部の方で久しぶりに自分で料理を作ってみた。野宿とかで簡単なモノを作ったりはしてたけど、本格的なモノは久しぶりだったと思う。
何か好評っぽかったけど、それほど出来が良かったわけじゃないと思うんだけどな?】