ど-42. 灼眼の剣士、ラライ
オーマイガッ!
「おお、懐かしきは偉大な学園都市よ」
「アルゼルイも私たちが最後に見た様相とは随分と変ったようでございますね。規模もだいぶ大きくなっておりますし、建物の数も比べ物になりません。これで懐かしい、などと冗談にもならない勘違いをなさるお方など間違ってもおられはしないと思いますが…旦那様?」
「言いたい事があるならばずばりと言ってほしいと思う」
「ばかですか?ばかですね」
「…ちょーと、雰囲気に任せて言ってみただけじゃないか。それだけでどうしてここまで率直に貶されないといけないんだよっ」
「そう言えば今朝方にとある連絡が入ったのですが、ご報告よろしいでしょうか?」
「理由は無視ですか、そうですか。…で、何だその連絡って。お前が態々確認するなんて珍しい」
「はい、どうやらラライ様がこのアルゼルイにおられるようなのです。私自身は未だ未確認でしたので確かな事は申し上げられませんが」
「ラライが?スヘミアの呼び出しに来なかった奴が何でまたこんな場所にいるんだよ…って言うのは聞くまでもないか」
「はい。恐らくはいつも通りの理由かと」
「いつも思うが、実に盛大な迷子だな。しかも未だに分からないのはどうやったら転移魔術を使用しても迷子になるんだ。あれって目的地まで一発で辿り着けるはずだろ?それをどうやったら迷えるんだ?」
「私としましても憶測なのでなんとも言えませんが、恐らくはラライ様の魔力が何らかの形で転移方陣に干渉を起こしているのではないかと」
「成程なぁ。確かにそれならあり得ないこともない。灼眼の名前は伊達じゃないって事か」
「はい」
「…ふと思ったんだが、もしかしてファイとラライって同じ型の人間か?」
「そうですね、天性の料理音痴であられるファイ様と天性の方向音痴であられるラライ様、確かに同じ種類と言われればその通りであると思われます。またお二方ともかなり高い魔力を有しており、それがそれぞれの行動に難を発している、という点でも酷似しております。あと本人ばかりがそれを自覚していない、というのもありますね」
「だよなぁ。じゃあ、ちょうどいい機会だ。この機会に魔力制御の媒体でも作ってみるか。そうすれば二人とも少しはましになるかもな」
「無理ですね」
「無理か?」
「はい。お二方ともあれは天性の才能で御座いますゆえに、仮に魔力の問題が解決したとしてもそれはあくまで氷山の一角に過ぎないのではないかと存じ上げます。そしてそれを解決なされるのはいくら旦那様であろうとも不可能ではないかと」
「だよ、なぁ…。俺も、まあそんな気はするのだが…一応作ってはみる事にするさ、魔力制御の道具」
「何かお手伝いする事はございますか?」
「ん〜、ないな。せっかくアルゼルイにいるんだ。大抵の材料は手に入るはずだし、この際、この都市の技術レベルも見ておきたいしな。歩いてみて回るのも悪くないだろ」
「ご随意に」
「とりあず…そうだな、今日はのんびり二人で露天でも見て回る事にするか。初日だしな」
「私として旦那様のご決断に不満はございませんがラライ様の件はいかがなされるおつもりでしょうか?早急に身柄を確保しておいた方がよろしいのでは?」
「いや、あいつの事だ、たかが一日やそこらで学園都市から脱出できるはずもないだろ。今日くらいは放っておいても問題ないはずだ。明日辺りからミミルッポ辺りにでも予定通り社会見学と合わせて探してもらうさ。あいつの場合は妙に野生の勘が働くから多分一日も掛からずに探し当てるだろうしな。スィーカットだってついてる事だしな」
「分かりました」
「じゃ、時間も勿体無し、早速行くか」
「……はい。では、僭越ながらご同伴させていただきます、私の、旦那様」
「おう」
本日の一口メモ〜
そして何事もなく。
登場人物紹介
灼眼の剣士ラライ
十二使徒の“命”を持った、二人目です。
…覚えてるのかなぁ?覚えてないだろうな、ってことで説明を。
二つ名に神様の家来の名前がついてて、強い人。
それだけ知ってれば十分さっ
旦那様の今日の戯言
「迷走する道でも極めればそれは一つの道である」
メイドさんの本日の格言
「旦那様は戯言をお吐きになる生物です」
…あれ、何か違くない?