ど-391. 踊りましょう
……朝日が綺麗だ
「踊ろうぜっ」
「いきなり何を仰るのですか、旦那様。そして踊ると一言でいっても何を踊ると言うのですか?」
「何でもいい。とにかく気分に任せて、自分を解き放つんだ。踊りってのはそのための一つの表現手段でしかない」
「ならば素直かつ常に自信を解き放っている私には不要な代物で御座いますね」
「まあそうとも言う」
「私は一応、社交の義務として踊りの一通りは習得しておりますが、そもそも旦那様は踊りなど踊れるのですか?」
「いや、やった事ない。大体さー、音楽に合わせて身体を動かすのは良いとしても、そんなもん雰囲気とその場の感情と情動に身を任せて動けばいいだけの話だろう? それをいちいち細かな礼儀作法とかって必要なのかって話だ」
「その言はダンサーなどの方々にとりまして酷い物言いかと」
「んー、そうか?」
「はい。まあ旦那様程度に何を言われても痛くもかゆくもない、と言うのが実際のところではあるでしょうが」
「なら気にする必要なし。と、言う訳で一曲お付き合い願いませんか、お姫様?」
「私でしたら、喜んで――……と、申し上げたい所なのですが、一曲も何も何処にも曲など奏でられておりませんが?」
「心を澄ますんだ。そうすればきっと自然が奏でる音色がお前の心にも届くはずだ」
「つまりは妄想の類ですか」
「情け容赦のない言い方をすれば、その通りだな」
「でしたら辞退させて頂きます、旦那様」
「どうしてだよ? お前は俺とは踊りたくなんてないと?」
「いえ。そう言う事ではございません」
「じゃあどういうことだ?」
「一曲お付き合いを、と旦那様は申されましたが、」
「ああ、言ったな」
「そして奏でる曲は心の中の音色、とも仰いました」
「ああ、確かにそう言った。それが?」
「それでは永遠に終わりが来ないではありませんか」
「……あん?」
「一度踊り始めようものなら、それこそ旦那様が疲労空腹精根尽き果てるその瞬間まで、もしかすると例え旦那様が力尽きたとしても終わりなど訪れません、と申し上げているのです」
「……ほぅ、つまりお前は俺の方が先に音を上げる、と?」
「そう申し上げたつもりでしたが、やはり旦那様が相手ですと伝わり切りませんでしたか?」
「……いや」
「そうですか。それはよう御座いました」
「しかし……ふふっ、お前も舐めた事を言ってくれるな。俺の方が先に音を上げる、だとぉ?」
「体力的に見ても妥当であると判断しておりますが?」
「――あぁそうだな。確かにその通り、単に体力云々で言えばお前の方が遥かに上だろう。それは認めてやろう」
「事実ですので」
「だが、俺の根性はあらゆるものを凌駕する」
「旦那様にそこまでの気概があれば、ですが?」
「俺にはそれがない、と?」
「その様に申し上げました」
「……いいだろうっ! ならその挑発、受けて立つっ!! どっちが先に力尽きるか、勝負だ」
「踊り続けて、どちらの方が先に力尽きるか、ですか?」
「そうだっ!!」
「実に不毛な時間の使い方で御座いますね?」
「……言うな。一応分かってるから」
「そうですか。……――では、旦那様が私との勝負、もといお戯れをご所望と言うことでしたら、その勝負受けてたちましょう」
「ふふっ、音を上げて許しを請うお前の姿が目に浮かぶぜ」
「旦那様の妄想の中の私は随分と可愛らしいのですね。……やはり、私もそのくらいの可愛らしさを持たねば駄目でしょうか?」
「ちなみに、手を抜くのは俺に失礼と思え」
「当然で御座います。一度引き受けた勝負事、相手が旦那様であればこそ手を抜くつもりなど微塵も御座いません」
「なら良し。……んじゃ、始めるか」
「はい」
「――お嬢さん、お手を拝借。宜しいかな?」
「はい、喜んで」
「「Shall we dance?」」
最後の「Shall we ...」の括り、そもそも使いどころが違う気もするんですが、雰囲気って事で何となく。
細かい意味は気にしないでくれると嬉しいです。
にっき・十三日目
【今日はなぜかみんなからじっと見られている気がしてならなかった。俺何かしたかな? それとも、遂にこの日記で反省して直していたことが実を結んだのか
それはないか。まだ始めてそれほど経ってないし。
そうだな。、ちょっと下手に出て誰かに探りでも入れてみるとするか。】