38. どれいと神殿
~これまでのあらすじ~
アルカッタとカトゥメ聖国との戦争のお話は今は遠い昔(?)の事。いつも通り無罪の罪で捕まって、脱走したレム君。その時につい女の子の着替え姿を見ちゃったりなんかして、つまりはいつも通りに逃亡中。
ミドガルド・・・愛称ミーちゃん、通称邪神フェイド。スヘミアのペットの大蛇。大喰らい。
マデューカス・・・根暗なおねーさん。W.R.にも名を連ねるほどの強者であるとの事だが……?
「……ふぅ、アルの奴、今頃どうしてるかなぁ」
「あー、……レム、ご飯」
「煩い黙れその辺の草か石でも食べてろ」
「あー、まずい」
「……本当に喰いやがったよ、こいつ」
「ごはんー」
「つか、さっき食べたばっかりだろうが。少しは我慢しろ、てか状況を考えろ」
「あー?」
「……でもアル達はどうしてるかな。厄介事に巻き込まれてないと良いんだが……」
『そっちに居たか!?』
『こっちには居ない。必ずこの近くに潜んでいるはずだ。探せ、草の根分けてでも、絶対に探しだせっ』
『当然だっ!!』
『当り前だっ!!』
『絶対、すり身にしてやるっ!!』
「――と。ここもそろそろ潮時っぽいな。ミーちゃん、移動するぞ」
「あー、うん」
「しかし兵の皆さんもやる気あり過ぎだよなぁ。何かマジで血眼になって俺らを探してるし」
「あー……、レムは犯罪者」
「いや、違うぞ? さっき、女の子の着替えを見てしまったのはあくまで事故だ。断じて俺の所為じゃない」
「あ゛~~」
「なんだよ、ミーちゃん。俺か、やっぱり何でもかんでも俺が悪いと、ミーちゃんも言うつもりなのかっ!?」
「あ゛ー」
「もう良い。ミーちゃんには聞かねえよっ。……どうして、誰も彼も俺の無実と純真さに気づいてくれないかなー?」
「あ゛ー、……純真?」
◇◇◇
「――どの口がその言葉を吐きますか、レム・パイパー」
「……ん? おお、マデューカスじゃねえか。奇遇だな」
「奇遇? 本当に奇遇ですか、レム・ひょうひょう」
「奇遇だろ。つい最近会ったばっかりなのに、また逢えるとは」
「……ところでレム・ハレルヤ。先ほど女性の悲鳴らしき叫び声が聞こえて来たのですが、私の気のせい、ではありませんよね?」
「ああ、残念ながら。不幸な事故があってな……って、そう言えばお前の方こそどうしてこんなところに居るんだ? 此処ってリリシィ共和国の最重要な場所の一つだぞ。不法侵入か?」
「貴方に言われたくはありません。けれど不法侵入なのは正しいですが」
「そう言うのは良くないぞー。ちゃんと見つからないようにうまくしろよ?」
「問題ありません。慣れていますから」
「慣れてる? 流石、ヒトの趣味趣向を暴くのを生きがいにしているだけの事はあるな」
「誰もそのような悪趣味を持ち合わせてはいない。勝手にヒトの趣味趣向をねつ造しないでいただきたい、レム・ととるこす」
「大丈夫だ。この程度のねつ造、大した事はない」
「何を言っているのですか。……それはそうと、レム・へんたい。先ほどの問いかけの続きですが、不幸な事故とはどのようなものですか?」
「ん~、まあちょっと間の悪い所に入っちまってな。悪気はなかったんだが……」
「――具体的には?」
「具体的、ねぇ。お前がこの国の奴じゃないから言うけど……ま、巫女の顔を見ちまってなぁ。おかげで血気盛んにこうして追われてるって訳だ」
「顔を見ただけではないでしょう? それだけであれほどの悲鳴が上がるはずがありません」
「いや、上がるかもしれないぞ? 何と言ってもリリシィの巫女と言えば温室育ちも有名で、もしかすると男にも会った事がないか、少なくとも素顔で家族以外の誰かと会う事もないって話は有名だぞ?」
「あり得ません」
「なんでそこまで言い切る……まぁ、確かに顔見ただけじゃないけど」
「――巫女に暴行をふるったのですかっ!?」
「何でそう鬼畜な方向に事を考えるか。単に着替えの最中に押し入っちまっただけ、それだけだ」
「着替えの、最中に……と、言う事は巫女の素顔はおろか、あのやわ肌までもをその眼で視姦したと言う事ですかっ!?」
「いや、だから不幸な偶然があっただけで……いやちょっと? あの、マデューカス? 何か、俺の気のせいじゃなかったらお前が凄く殺る気に満ち溢れている気がするんだけど、気のせいだよな?」
「気のせいです」
「だったら張り詰めていく空気と、何か高まってるっぽい魔力は何なのかなーと」
「気のせいです」
「……そう言えば、あれだけ大声を出して叫んでたのに、何で誰も来ないんだ? つーか、さっきから人気がない様な……」
「私が人払いをしました。ここで何があろうと、誰も気づきません」
「……何を怒っているのかは皆目見当がつかないところではあるが、まあ待て落ち着こう。そうすればきっとお互いにとって有意義な話し合いができる……と俺は思うぞ?」
「話し合いは必要ありません。知っていますか、此処リリシィ共和国では巫女の赦しなくその素顔を見たモノは――極刑ですよ?」
「うわー、それはまた横暴な話だな、って待て待て。だからってそれは俺とお前には関係のない話だろう!? あくまでリリシィ共和国内の取り決めであって、お前がそこまで怒る必要も――」
「――そうですね?」
「そうだと言うのならちくちく刺さる殺気を何とかしてー!?」
「直ぐ、楽になれます」
「いやなれないからっ!?」
「あ゛~~~~」
「「――っ!!」」
「あ、ヤバっ。これ、人化の効果が切れ――」
ァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア
「――、な。……邪神、フェイド!! あの女の子がですかっ!?」
「う~む、見事な……つか、深くは考えないでおこう。俺は悪くない。俺は悪くないんだ」
「レム・アイリアス!! 説明をっ、状況を説明しなさいっ!!」
「いや、状況も何も見ての通り、ミーちゃん事ミドガルド、通称邪神フェイドなんて呼ばれている大蛇だ。まあ食いしん坊なだけでそれほど悪い奴でもないんで、そこは大目に見ておいてくれ」
「これで悪くないっ!? 神殿が破壊されています!?」
「図体がでかいからな。不可抗力だ」
「何を悠長な――、っ、……シンカ!!!!」
「……うん? 何か慌てて行ったけど――って、おーい、ミーちゃん。あんまり動くなよー? 本格的にここの神殿が壊れちまう」
アアアアアアアアアアアアアアアア
「まあいい。何か周りも混乱しててそれどころじゃないみたいだし……よし、今の内に逃げちまおう」
アアアアアアアアアアアアアア
「ミーちゃんは俺が逃げるまでの囮になってくれ。いや、だって流石にその図体じゃ隠れて逃げられないだろ?」
アアアアアアアアアアアア!!
「大丈夫だって。ミーちゃんならきっとやれる。逃げきれるって。どうしてもやばそうだった場合は俺を呼んで……ゃ、スヘミアあたりにでも助けを求めればすぐに飛んできてくれるって。な?」
アアアアアアアアアアアァァァァァァァアアアアアアアアアアアア
「うお!? だから暴れるなミーちゃん、つか何で俺を攻撃してく、いや止め――」
ァァァァァァァアアアアアアアアアアアア
「こう言うときは――逃げるに限るぜっ!!」
少し、休憩。
――ッてか時間がありませんでしたよぅ!?!?