ど-378 .旦那様は偉いヒトです
レム君は皆のご主人様で、一番偉いヒトです。雑用なんかするような立場じゃありません?
「俺、これが終わったらご主人様になるんだ」
「唐突に、何を意味不明な事を仰るのですか、旦那様?」
「いや……何故か世界のどこかで誰かが、俺にこんなセリフを言わせたがってる気がしてな」
「益々意味不明なのですが? それに“これ”が何を指しているのか、“ご主人様になる”とは一体どのような意味で申されているのかを説明していただきたいです」
「んー、これってのは多分今俺がしてる作業の事じゃないのか?」
「窓磨きですか? あ、旦那様、そこにまだ曇りが残っております」
「おっと、いけね。……んっ、これで良いか」
「はい、宜しいかと」
「よし。んじゃ次へ、っと」
「では旦那様が仰る“これ”とやらが終わるのは当分先の事になりそうですね?」
「……そうだなぁ。大体この館、窓って幾つくらいあるんだ?」
「大小合わせて3562個だったと記憶しております」
「なんでんな事を覚えてるんだよ、お前は」
「館内をくまなく探索し、侵入経路及び逃走経路を完璧に把握する際に覚えました」
「……そうか」
「はい。ちなみに今旦那様が磨き終えられた窓の個数は41に御座います」
「残り……3521か。先は長いなぁ」
「次第に手際も良くなってきておりますので、旦那様が考えているよりは早く終わると思われますよ?」
「そうか?」
「はい。初めの一つと比べると窓を磨き終えるまでの時間が約半分ほどになっておりますので」
「……ちなみに聞くが、お前だったらさっき俺が磨き終えた窓、どのくらいの速さで出来るんだ?」
「正直に申し上げてもよろしいのでしょうか? 旦那様を傷付けてしまう恐れがあるのですが、」
「良いから言え、ってか俺が傷つくコト前提なのか」
「はい」
「……んで、どのくらいかかるんだ?」
「そうですね……旦那様があの窓を一つ磨き終えるまでに、私でしたら100以上は磨き終えている自信がある程度、でしょうか」
「つまり少なく見積もっても100倍の速さって事か」
「そうなります」
「でも、いくらなんでも早すぎないか? てか、そんな早いと雑になるんじゃないのか?」
「丁寧に行えばよいというモノでも御座いません。的確に、そして迅速に行いさえすれ窓を磨くのは一度だけで十分です」
「へー、そうなのか」
「はい。ですので今の旦那様の手際には無駄が多すぎます。……ですが私の真似をして一度だけで済まそうなどとは思わないで下さいませ? いまの旦那様レベルですと、単に作業が雑になるだけですので」
「ん、分かった。まあどっちにしろまだまだ先は長いって事だよな~」
「そうですね」
「――んじゃ、次に行くか」
「はい。……処で旦那様、先の続きなのですが“ご主人様になる”とはどのような意味だたったのでしょう? 旦那様は既に――一応とはいえ、皆様方のご主人さまではないのですか?」
「あー、それね。うん、それね。……俺さ、あいつらとの接し方を間違えてた気がするんだよな」
「と、言いますと?」
「うん。ご主人さまって言えばもっと威厳に満ち溢れた、誰からも畏怖敬愛されるようなものじゃないと駄目だと思うんだ」
「駄目とも限りませんが、それで?」
「だからもう少し堂々と……もっと言えば少しは偉そうに振る舞ってみようと思う訳だ。なーんかあいつら、俺とおまえの立場が逆だって思ってる節があるからな」
「それは旦那様の杞憂に御座います」
「そうかぁ? まあ、とにかく俺としてはもっと威厳のあるご主人様になろうと思う訳だ、うん」
「そうですか。では徒労の努力となるのは目に見えておりますが、ご健闘くださいませと立場上は申し上げておきます」
「ああ、見てろよ。お前が驚くような凄いご主人さまになってやろう」
「……ご期待だけ、しておきます」
「ああ。んじゃ、こんな作業さっさと終わらせないとな」
「頑張ってくださいませ、旦那様」
「応っ」
レム君が自然に窓ふきなんて言う雑用をしていて、疑問の一つも挟んでいないのはスルーの方向で。気にしちゃダメなんですよ、きっと
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-二十六人目【マレーヌの場合】-
「主様は私の大切なお方であると同時に仕事においての観察対象です。……大切とは言っても、す、好きとか愛、愛してるとかそのような不純なモノではなく、あくまで……あくまで私のたった一人の主様であると言う意味だけであって――……うぅ~」
補足:『マレーヌ』処理部。アルゼルイに派遣された、処理能力はかなり高い子。色々な事が結構高いレベルで出来る、割と万能な子。登場話、ど-68,129、“ど”のつかないシリーズ。