ど-377. 吊るされて
木の上で反省中の旦那様? ……いやいやいや
「……」
「……」
「……ふぅ」
「……」
「……なあ、今日もいい天気だよなぁ」
「はい、そうで御座いますね。稀に見る快晴です」
「ああ、そう言えばちょっとばかり眩しすぎる気はするかな。ついでに言うと今日は少し暑い日になりそうだよなー」
「そうで御座いますね、旦那様の仰られる通りかと」
「……」
「……」
「他には……えっと、きょ、今日もお前はいつも通り綺麗だよなー?」
「当然です、旦那様」
「と、当然なのか」
「はい。旦那様へお逢いするのに身嗜みを整え無い事などあり得ません。――もっとも突然押し掛けてこられる……たとえば着替えの最中や寝起き直後などと言うのは流石に例外では御座いますが?」
「……あー」
「……」
「……そ、そうだ!」
「……何か?」
「そのだなっ、実は最近凄い発見をしてな、」
「――それはよう御座いましたね、旦那様」
「あ……あぁ、良かった、んだよ、うん。……良かったなー」
「……」
「……えっと、」
「何か?」
「いや、ね。何が良かったのかなー、とか凄い発見って何ですか、みたいな事を聞いてくれないのかなっ、と思っちゃったりなんかして……」
「そうですか」
「うん」
「それで、旦那様が仰りたい事は以上と言う事で宜しいので?」
「あ、ああ。俺が聞きたいのはさっきの事で以上だけど……」
「そうですか」
「……」
「……」
「……あ、あのー?」
「まだ何か、旦那様?」
「い、いや。さっきの俺の問いに対する答えは一体どうなったのかなーとか思いまして」
「さっき? ……何の事でしょうか?」
「ゃ、済みません。やっぱり何でもないです、はい」
「おかしな旦那様ですね?」
「おかしなのはお前――もっと言えばこの状況そのものだと俺は思う」
「つまり――まだ反省が足りないと仰られるのですね、旦那様は」
「いや、でもさっ、そりゃ間が悪かったのは言い訳のしようもないほどに俺が悪かった訳だけど、」
「はい、旦那様が悪いのです」
「でもよぉー、だからってアレクセをはじめとする護衛部一同の――つまりは奴隷、俺の所有物の入浴をうっかり見てしまいました、ってだけで、何で俺は簀巻きにされて浮島の端で宙ぶらり状態にされているんだ? 俺はー、いくらなんでもこれはやり過ぎだと思うなっ」
「そうですね、確かにこれはやり過ぎかもしれません。――では、ただちに」
「いやちょっと待って下さいよっ!?」
「……何か?」
「今、お前は何をしようとしていたか、素直に言ってみろ」
「旦那様を拘束しているロープを切断しようと致しましたが?」
「それ切られると、俺地上へ真っ逆様」
「存じ上げております」
「なら止めようぜ? 俺は無駄に地上へ命綱なしの飛びおりなんてしたくない」
「軽い冗談です、旦那様」
「冗談か。……本当だな? 本当に冗談なんだな!?」
「はい、ですからご心配されぬよ――ぁ」
「あ」
「……」
「あっー!!!!!! あー……、ぁ―……」
「うっかり、してしまいました。……まあ、旦那様であれば心配はいらないでしょう。何より幾度となく生還しているという実績もある事ですし。…………昼食でも作りますか」
一人ぼっちはさみしいのですよぅ
そしてお気に入りの件数が100を超えていたと一喜一憂してみたり。
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-二十五人目【ツォトマーの場合】-
「主? 主は観察対象であり、見ていて面白い私のご主人様だ。私の指先一つから髪の毛一本に渡る私の全てを所持するご主人様――それ以上でもそれ以下でもないし、それ以外じゃ……ない」
補足:『ツォトマー』処理部。アクツォルト地方の出身らしい。アクツォルトって…何処よ? と言う話。ちなみにマレーヌと同室の子。登場話、ど-22,68。