ど-369. 勇者かバカか
二度寝は良いものです。
「お?」
「おや」
「珍しいな、お前が料理作ってるなんて」
「そう言う旦那様は理由もなく館の中を徘徊なされていて、いつも通りで御座いますね?」
「徘徊言うな。暇つぶしを兼ねた視察と言え」
「では暇つぶしと視察を兼ねた徘徊ですか」
「……もうそれでいいか。それよりも何作ってるんだ?」
「はい、皆様方にお配りする、菓子などを少々」
「お~、どれどれ……」
「摘み食いはダメですよ?」
「少し位いいじゃねえか」
「仕方のない旦那様ですね。では、旦那様用にと分けておいたこちらをどうぞ」
「何だ、俺の分もあったのか」
「はい。失敗作と称した様々な試行錯誤が入り混じった、正直私でも食べられるかどうか怪しい品では御座いますが恐らく旦那様であれば大丈夫でしょう、と言うモノです」
「――ぁ、危ねぇ」
「おや、旦那様。お食べになられないのですか?」
「今のお前の言葉を聞いて、それでもコレを食べようとするやつがいるなら、そいつは勇者かバカのどっちかだな」
「旦那様っ、勇者になるチャンスです!」
「いらね。勇者にも興味ないし、ってか勇者の意味が違ぇ」
「……そうですか」
「何故そこまで落ち込む?」
「いえ。折角、旦那様の為にご用意したのですが、それを旦那様に食べて頂けないと言う事に落胆を隠せないだけです」
「落胆を隠さない、の間違いじゃないのか?」
「そうとも言います。せっかくご用意したのに旦那様に食べて頂けないとは、残念でなりません」
「……仕方ねぇなぁ。一つだけだぞ」
「食べて頂けるので? もしかすると既に食べモノですらない可能性があり、食べ物であったとしても致死性に成り果てている可能性すらある品が入り混じってい無いとも言えないこれらの品々を、食べて頂けるので?」
「やっぱり止めようかなー」
「そうした方が賢明です」
「……ゃ、お前は俺にこれを食べて欲しいのか、食べて欲しくないのかどっちなんだよ」
「愛情を込めて作ったので食べては欲しいですが旦那様を失いたくはありません。なので旦那様の悪運の強さと生命力の強さとあざとさと生き汚さににかけたいと思います」
「……嫌な賭けだなぁ。と言うより、こんな事で命をかけるなんて実に馬鹿げてるよな、うん。お前だってそう思うだろう?」
「旦那様は勇者かバカか、どちらかと言えばバカの方だと私は思うのです」
「……――俺が倒れたら即助けろよ?」
「それは抜かりなく」
「良し。それじゃあ一つだけ食べてみるか。んー……この焼き菓子? クッキーみたいなモノにしとくか」
「ぁ、それは……」
「えぇいっ!! 気になる言い方をして俺を惑わすなっ!! ここは一気に――!!」
「――ぁ」
「……んう? ふむふむ、あれ? 普通に美味いぞ?」
「有難うございます、旦那様」
「……命の危険とかは?」
「料理の試行錯誤程度でヒトに食せぬモノが出来上がるはずがないではありませんか。何を仰っているのでしょうね、旦那様は」
「……うん、本当に何を言って――……ふぁれ?」
「――っ!! 旦那様、お気を確かにっ!! 今すぐ御助け――」
くっくる~♪
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-十七人目【シャーマルの場合】-
「レム様ですか? レム様は普通に私たちのご主人様でいいヒト――もとい、丈夫で都合のいいモルモットですよ? ぁ、違った。イイヒトですよー?」
補足:『シャーマル』医療部副長。若干、マッドサイエンティスト?登場話、ど-151。