ど-367. 口実
最近寒くなって参りました。
「……」
「ん?」
「……」
「どうかしたのか?」
「……いえ」
「いや、でも様子が――て、あぁそっか」
「……」
「お前、寒いのか」
「……少々」
「ははっ、その様子見てる限りじゃ“少々”ってレベルじゃないんだけどな。まあでも、少々っちゃ少々なんだろうな」
「……ええ」
「でもどうしたんだ、いつもなら周りに結界でも張って温度保ってるじゃねえか、もしくはもっこり着こんでいるとか」
「……苦手を、克服しようと」
「苦手を克服? お前の唯一にして今まで全く克服できる兆候すら見られなかった“寒がり”を克服?」
「……はい」
「そりゃ無理だろ。いや俺がハーレムを実現できるかどうかってよりも確実に」
「……絶対、無理と?」
「そこまで言う気はないけどなー。でも出来る事と……不可能ないこともあるって諦めくらいつくだろ」
「……寒さ、克服」
「ま、頑張るだけ頑張ってみればいいと思うぞ。他の奴らへ今のお前の姿を見せたら目茶目茶心配してきそうだけどな。いやむしろ何で? ってくらいに俺が責められたりするのか? 『お姉様に酷い事ばかりしないで下さいっ』ってな感じで。……そりゃないぜぃ」
「……おいた、わしや、旦那様」
「……いや、そこまで無理して言う言葉でもないだろ、それ」
「……」
「頑張るのは良いけどほどほどにな、って事だな」
「……はい」
「俺としちゃ、お前の寒がりは俺がお前を一方的に弄れる数少ない点だからな、今のままの方が気が楽だったりするけどな」
「……」
「それに寒がりなんて、可愛い弱点じゃねえか」
「……そう、ですか?」
「ああ。むしろそういう時こそ俺の温もりが欲しいです、みたいな感じで抱きついて来て――おぉう?」
「……寒い、です。旦那様」
「あー、こりゃ確かに。抱きつかれてみて分かるけど身体冷え切ってるのなー。やっぱり寒さ克服とかってお前らには無理じゃねえの?」
「……かもしれません」
「おーよしよし。ちゃんと俺が温めてやるからな」
「……言い方が卑猥です、旦那様」
「そうか? それともう良い感じに口調の震えが戻っていたな」
「……はい。旦那様の温もりに全身を包まれておりますので、身も心もぽかぽかです」
「まあ、結界使えば一発なんだけどな」
「――風情のないお方」
「そう言うなって。俺だってこうして結界はれって言わずに抱きしめて温めてやってるだろう?」
「旦那様、言い方が卑猥です」
「――本当に卑猥な事してやろうか、このヤロ」
「どうぞ、ご随意に」
「……取り敢えず、完全に身体があったまるまではこのままでいてやろう」
「ありがとうございます、旦那様」
「……無理だけはするなよ。お前に倒れられたりしちゃ色々と大変だからな」
「旦那様ほどの無茶は致しません」
「なら、よしだ」
めい、あい、ふらい。
あい、きゃん、ふらい。
きっと望めば空だって飛べるさっ。
……そんな勢いが、あるといいですよねー?
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-十五人目【マイチェの場合】-
「レム様は花の知識とか育て方とか、いっぱい素敵な事を知っていて私に教えてくれる、とっても素敵なお方ですっ! ……それ以外の事は全然なのですけどねー」
補足:『マイチェ』被服部。お花の好きな、女の子。レム君の観察が日々の日課。なのでレムとの遭遇率は結構高かったりする。登場話、ど-74。