ど-363. しゃいにんぐ!
今、輝いてるよっ!!
「俺っ、今輝いてるっ!」
「……本当に光っていて眩しいので即刻物置の奥の隅にでも座り込んで壁にのの字でも書いていてくれませんか?」
「いやぁ、驚きだよなー」
「ですから、眩しいです」
「いや、でも仕方ないだろう。まさかあの葉っぱにこんな効果があったとは驚きだぜ」
「驚くのは好き勝手にしていただいて結構なのですが、目を閉じていても眩しいので早く暗くじめじめしたどこかへと閉じこもってくださいませ、旦那様」
「ふはははは、お前にはこの輝きが分かるまいっ」
「何やらテンションがおかしいですね。それも先の葉っぱの効能でしょうか?」
「いいや。そんな事はない。これは俺の真の姿が解放されたに他ならぬっ。見ろっ、この輝きをっ。俺は今――凄く輝いているっ!」
「それは目も眩むほどに眩しい時点で重々承知しております。そして仮にもそれが真の姿だなどと仰られるのであれば旦那様はアレでしょうか、ただ只管に他人に迷惑をかけるのが旦那様の真姿だと……えぇ、全く迷惑極まりない存在で御座いますね、この旦那様がっ」
「最後の罵り方が意味不明何だが……俺が輝いているのはアレだ、きっと光の貴公子とか皆の希望の星とか、そんな感じに違いないっ」
「知っているでしょうか? そう言う存在は実は近くに居たら居たで傍迷惑なだけの存在なのですよ? そう言うモノは遠くから眺めたり噂を耳にすることこそが最善であると、以前聞き及びました――ほかならぬ旦那様ご自身から」
「ふっ――あの時の俺はネンネだったのさっ」
「角度は斜め四十五度、確か……こうっ、でしたでしょうか?」
「お前、その手刀の素振りは何だ? ひしひしと危ないモノを感じる」
「大した事では御座いませんので、お気になさらぬよう」
「いや、十分気になるぞ。そして俺は嫌な予感がする」
「いえ、壊れた旦那様をまた壊れた旦那様の状態に戻すのにはこれが一番かと思いまして」
「お前、言ってることがおかしいぞ。そして俺は壊れちゃいない」
「大丈夫です、旦那様」
「こっち来るな。手刀構えながらにじり寄って来るな」
「心配される必要もありません。痛みなどと言うモノもなく、ほんの一瞬で済みますので」
「このままお前に任せると本当に一瞬で何か俺の全てが終わっちゃいそうだけどねっ!」
「大丈夫です。少々、先の葉っぱの効能が切れるまで地下室に放り込んでおくだけです。旦那様にとっては大した事では御座いません」
「な・ん・でっ、俺がそんな所に放り込まれなきゃいけないんだよっ!?」
「眩しいので」
「――自由を目指して俺は飛ぶぜっ!」
「ぁ」
「って、窓が開かない!? 何故だ、どうしてだっ!?」
「嫌な予感がいたしましたもので、今朝がたに旦那様の脱出経路は全て封鎖済みです」
「今朝って、今は昼だぞっ!?」
「そうですね。まあ、何事もなかったとしても、旦那様を閉じ込めておくだけですので、然したる問題では御座いません」
「それは十分すぎる問題だと思うのですがねっ!?」
「では旦那様――御覚悟を」
「いーやー!!! ……などと素直に言うとでも思ったかっ、」
「なっ」
「いっつ、しゃいにんぐっ!!」
「眩し……」
「俺の自由への飛翔は誰にも止められないのさっ、では去らばだ!」
「くっ、逃がすものですかっ――」
「この輝く俺の前に、視界を潰されたお前がどれだけ対抗できるか……見物だな」
「いえ、旦那様を捉える程度、聴覚や触覚の身で十二分に可能ですが?」
「なにぃぃぃ!?」
「では――お休みなさいませ、旦那様」
何事もない平和な日常。
旦那様が気絶させられているのは気にしない、気にしない。
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-十一人目【フェルトマの場合】-
「御主人様はきっと! いいヒトだと思いますっ。あんな綺麗な花壇をつくれる人に悪いヒトはいない……と、思います。日頃がお姉様に苛められて悦んでいるアレな方ですけどっ、私たちに、奴隷なんかの私たちに今の私をくれたお方ですからっ、いいヒト……だと、思うのですけどぉ。……あ、なので一応、私にとってご主人様は大切なお方ですっ」
補足:『フェルトマ』清掃部で、花壇の世話をしている子。シャチューとペア。登場話、ど-53。




