ど-362. 我儘
りりぽ~!
ハカポゥ・・・ど-212辺りに出てきた、ちっちゃい悪魔の女の子。無邪気。
ハッス・・・護衛部の子。館内でも結構強い。でも今回は苦戦しています。
「世の中って儘ならないことが多いよなあ」
「そうですね。たとえば何処かの旦那様や此処の旦那様や、私の旦那様など」
「確かにその通りだよな。どこかのメイドとか鉄面皮の女とか、今俺の目の前に居る無表情の奴とかな」
「それは異な事を。私はいついかなる時であろうとも、身も心も旦那様の思うが侭に御座います」
「ふははははは」
「うふふふふふ、……所で何がおかしいので、旦那様?」
「ああそうとも、確かにお前は俺の思うが侭だとも、それは認めてやろう」
「……一応、人目は気にして頂けると助かります」
「覚えておこう。じゃ、なくてだなっ。確かにお前は俺の言う事に従順だよ、ああ、すっげぇ忠実に守ってくれちゃってるよっ!?」
「当然です」
「でもなっ、逆に言えば俺が言わないことに関しては素敵なほどに好き勝手なさってくださってますよねっ!?」
「それも当然です、とお答えしましょう。旦那様を盛り上げ楽しませるためにこそ、私はこうして居りますので」
「……ふぅ、だから世の中はままならないことだらけだなーとか思ったりする訳だ」
「何か酷い侮辱を受けている気がいたします」
「それは間違いなく気のせいか、もしくは事実だ」
「どちらでしょうか?」
「多分、どっちかと言えば事実の方だと俺は思う」
「……旦那様に貶められてしまいました」
「俺はいつもお前が言ってるみたいに、事実を事実として言っただけだけどな」
「ふぅ、メイドの心旦那様知らずとはこの事ですね」
「その全く逆の言葉をお前に贈ろうと思う」
「なるほど、つまり旦那様は私の心の内をすべて理解していながら今の冷たい態度をとっておられると言う事ですか。そして時折見せる優しさで私を虜にしようと? 中々うまい飴と鞭です、流石は旦那様」
「何故そうなる」
「? 先ほど旦那様が仰ったのではないですか、メイドの心旦那様知らず、の全くの逆の言葉を私に贈る、と」
「ああ、それってつまり旦那様の心メイド知らず、って事だろう?」
「メイドの心を旦那様は知っている、ではないのですか?」
「……」
「……」
「世の中って、難しいな」
「はい、そうですね、旦那様」
「……いや、お前の場合は色々と意図して間違えている気がしないでもないが」
「良くお分かりで」
「まぁ、長い付き合いだし、お前の性格の良さは知ってるさ」
「ありがとうございます、旦那様。私も旦那様の優しさと言う名の優柔不断さは存じておりますよ?」
「ああ、そりゃ、アリガトさん」
「……――それで旦那様、突然そのような事を申されて、如何なさったのですか?」
「ああ、ちょっとな。最近見つけてきた……ってか、ハカポゥから何かのタネが送られてきたんで育ててみてるんだが、中々上手くいかなくてな」
「そうでしたか。それは、もしかしてあちらで暴れている植物の事でしょうか? 先ほどからハッス様達が懸命に闘っておられますが、些か分が悪い様子です」
「ったく、仕方ねぇなあ。もしかして、また寝どこが気に入らないって理由か? それとも肥料が悪いとか、……悪い、ちょっと行ってくる」
「はい旦那様、お気をつけて」
「気をつけろって、植物相手に何を気をつけろと?」
「……せめて食べられぬように」
「いらねぇ心配だろ、いくらなんでもそれは」
「……だと、宜しいのですが」
時折雨の日。こうして日々は淡々と進んでいく。
あくまで淡々と、基本何事もなくの日常のお話です。
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-十人目【ストファーの場合】-
「私にとって御主人様はとても大切なお方です。……だ、だってうっかり御主人様を蔑ろにしちゃうとお姉様が凄く怖いんですよぅ」
補足:『ストファー』清掃部。設定が何もない可哀そうな子。ちなみに掃除が雑で、あとでメイドさんに怒られた。登場話、ど-40。