ど-360. 励む
むふー、
「……ふぅ、この辺りもだいぶ綺麗になったな」
「お疲れ様に御座います、旦那様。どうぞ、粗茶ですが」
「ありがとよ。……んー、不味くはないが、本当に粗茶だな、これ」
「はい、粗茶をご用意いたしましたので」
「んな無駄な手間を……」
「しかし旦那様、大分張り切られたご様子ですね?」
「ああ、結構頑張ってみたからな。割と疲れたぞ」
「はい。ではお疲れなご様子の旦那様? 此処が終わりましたら次はあちらをお願いいたします」
「……何となくそんな気はしてたんだよなぁ、てか、この勢いだと館の敷地内全部って事になってこないか?」
「そうですね。ではそれでお願いします」
「やっぱりかー。……とは言ってもこの程度の作業なら命の危険性とか微塵もないし全然オッケーではあるんだけどな」
「そうですか。それは非常に助かります」
「いいっての」
「この様な雑務、旦那様以外には押しつけられませんもので」
「いや、俺にしか押し付けられないってコト事態がおかしくないか? 仮にも俺はこの館で一番偉い奴だぞ?」
「仮ですね?」
「いや、まぁ……出来れば仮は取れて、本当に偉い奴として少しくらいは敬ったりしてほしいなーなんて、」
「私の態度の何が不満ですかっ!?」
「いや、普通に全部不満だろ。てかいきなり逆ギレとかしだすな。訳わかんねぇよ」
「問題ありません。旦那様の日頃の行いを考えればこそ、逆ギレなどと言うモノではありません」
「俺、別に何も悪い事とかしてないぞ。少なくとも最近は」
「そうで御座いますね、最近は」
「ああ、最近はな。……ん~、でもこう言うのって何か本当に平和的な時間の使い方だよなぁ」
「はい、旦那様の仰る通りに御座います。ですが平和と言うよりもむしろ、……無駄?」
「そんな事はないぞ? こう言う事をこそ小まめにしていれば、だ」
「いえ、旦那様の作業自体が無駄と言っているのではなく、旦那様が行っている作業工程そのものが無駄ではないか、と思うのですが?」
「無駄って、どの辺りが?」
「どの辺り、と言うよりもそのようにして一つ一つを手で摘んでいかなくとも、より効率的な方法があるのではないですか?」
「分かってないなぁ。これが、草むしりってのはこうやって一つ一つの雑草を手で取っていくってのがいいんじゃないか」
「……良く分かりません。――このマニア」
「マニアで結構。こだわりは胸を張っていてこそこだわりを持っているって言えるものだしな」
「しかし旦那様も随分とご健闘なさいましたね。辺り一帯に広がっていた草むらが綺麗になりました」
「ああ、それに結構退屈でもないしな。何が面白いのか、あいつらもちょくちょく覗きに来ては手伝ったり話し相手になったり、はたまた遠くからこっちを見てたりなんかしてるから飽きないし」
「人気者で良かったですね、旦那様?」
「人気っつーか、単に何やってるんだろ、っていう好奇心みたいなモノだろ」
「旦那様がそう仰るのであれば、そうなのでしょうね?」
「何か含んだ言い方に聞こえるなぁ」
「いえ、そのような事はあるかもしれませんが今旦那様が取り立てて考えても無駄以外の何物でもない事に代わりは御座いません」
「何だかなぁ、――っと」
「如何されました、旦那様?」
「落とし穴発見」
「コレは中々……精巧に作られていますね」
「お前が作ったんじゃなくて?」
「いえ、少なくともコレは私の作では御座いません」
「少なくとも、な。それなら俺が今までに見つけた347個の落とし穴の内どれかはお前が作ったものって訳だ。多分、とりわけ見分けにくい精巧な奴」
「その様な事をした事も、あったかもしれません」
「と、言うよりなぁ。俺は一つ言いたいぞ?」
「はい、何でしょうか旦那様?」
「なんでんなに落とし穴とか、その他のトラップがてんこもりなんだよっ!? てか、誰に対するトラップだ、これはっ。微妙に俺の散歩コースと罠の密集地帯が重なってるぞっ!?」
本日は微妙にやる気がない。
と、言うよりも何か凄く落ち込んだ。
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-八人目【テハーの場合】-
「ご、ご主人しゃっ!? ……痛ひでふ。……えっと、私にとってのご主人様は、その、えっと、うんと、あの…………そう! おまけですっ、お姉様のおまけっ!! それだけですっ」
補足:『テハー』清掃部。館の端の方の草原を担当にしている。櫛が宝物。登場話、ど-10。