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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさん vs ご主人様
556/1098

Act X. 龍の止り木

ぷぷーっ


「……やっと着いた」



「十日掛かりました。ちなみに私一人なら半日で此処まで来れます」



「それは俺が足手まといだったと、そう言ってるのか?」



「旦那様、それは流石に被害妄想が強すぎると言わざるを得ませんが? 私としてはそのような他意は微塵もなく、単なる事実を申し上げたに過ぎません」



「お前の場合はその事実って奴が曲者だったりするけどな」



「お褒め頂き恐悦至極」



「皮肉っただけだ」



「それも踏まえて、褒めて頂けたと認識いたしました」



「……まぁ、あながち間違ってもないな」



「では改めまして――ありがとうございます、旦那様」



「……何か釈然としないなぁ」



「余りお気になさらずに、旦那様」



「ま、そうだな」



「はい」



「しかし――」





男は言葉を切り、辺りを見渡す。それに付き添っていた女も同じように、そして少しだけ懐かしそうに目を細めた。



それは奇異な光景であった。


タイプ―霊山の山頂より少し下った場所、そこには一見して何もない様な、ただ広いだけの“純白の平野”が存在していた。


周りは軽く勾配が30度以上、だが“純白の平野”だけ、まるで踏みならされたようにして広がっていた。



其処は五つの花弁を持った、純白の花――ラクリマが咲き乱れる野原。そして通称“龍の止り木”と呼ばれる、楽園へと続く道とされる世界の秘跡。



だがこの場所を知るモノは少ない、と言うより全くいないと言ってもよい。


魔術の類一切を使えないタイプ―霊山、つまり肉体一つで世界で一番高いと言われるこの山に登らなければいけないのだから。それも地竜や飛竜、その他“竜”と呼ばれる『大きなトカゲ』のほとんどが生息しているこの地に好き好んで近づいて、それも態々山頂まで往こうとする輩などそうはいない。


いたとしても、山頂まで辿り着いたとしても『“龍の止り木”に辿り着けるかどうかは別問題』と言う大きな問題も残ってはいるのだが――。





「此処に来るのも久しぶりだな」



「そうですね。日ごろは旦那様は怠けて、転移魔術でばかり移動しておられますので」



「いや、一々こんなところまで足運んでられないだろ」



「こんな所とは何とも寂しいお言葉を。これでもこの地は私の最もお気に入りたる風景の一つなのですが……?」



「あー、そう言えばお前ってこのラクリマの花、好きだもんな。悪かったな、こんな場所扱いして」



「いえ。確かに体力根性気力精力やる気その他生きる希望の全てまで持ち合わせていない旦那様にこの場所まで来いというのが大いに困難であるというのは重々承知しておりますので。そのような愚痴が出るのも致し方ない事と納得はしております」



「しっかし、いつ見ても不思議なんだよなー。このラクリマの花、この場所でしか白く咲かないんだよな。なんでだろ?」



「植物の事に関してのみ、旦那様が判らぬことがこの私に分かるはずが御座いません」



「でもお前なら案外知ってるかな、っても思ったりして」



「存じません。申し訳ありませんが私は、この純白のラクリマは古来よりこの地にありこの地を見守るモノ、程度の知識しか持ち合わせてはおりませんので」



「そか、なら仕方ない。……あー、でも残念だよな。研究しようにも摘み取ろうとするだけ枯れるからな、これ」



「旦那様はこの地に来るたびに、いつもそのような事を仰られますね?」



「……んー、まあ残念がっても仕方ないもんは仕方ないか」



「はい、申し訳ありません」



「ん? なんでお前が謝るんだ?」



「いえ、何となく」



「……実はお前、何か知ってるとか?」



「いえ、それは本当に存じ上げません、疑り深い旦那様」



「いや、お前の言葉を疑う訳では……っと。いつまでも此処に居るのもなんだし、さっさと行くか」



「はい。では旦那様、少々お待ちを」



「あぁ」





女は一歩、前に出て。ただラクリマの花畑が広がっている先へと向けて、言葉を発した。





「――さあ、主の帰還ですよ、【門】を開けなさい」





◇◇◇




空間が裂ける。


大きく、左右に。まるで底に目に見えぬ【門】が存在しているかのように、開いていく。




◇◇◇




ここは“龍の止り木”と呼ばれる地。そしてその先に続くのは、“竹龍の地”と呼ばれる浮遊大地――かつて白龍が住まったとされる、伝説に残る楽園の一つ。



【門】が開き、“向こう側”の光景が二人の目に入る。その先に見えるのは、広がる大地と、先に見える館と、そして。





『おかえりなさいませ――』





左右に割れてずらりと並ぶ、視界を埋め尽くさんばかりの数の――メイド服を着た少女たち。


統率と言うにしても揃い過ぎているタイミングで、全員が一斉に顔を上げて、誰もが例外なくその顔に満面の笑みを浮かべて、口を開いた。





『お姉様っ!』





「――って、俺じゃないのかよ!? 御主人様たる俺の出迎えじゃないのかよ、これ!?」



「ふふっ、皆様方、あまり旦那様をからかいになられぬよう。このような時くらい、素直に出迎えて差し上げていは如何です……?」








『――おかえりなさいませ、ご主人様っ!』


本日はちょっぴりお休み?

何時までも山の中を遭難しているわけにもいかず、ようやく旦那様帰還します。そして次回からは館の中でののんびり(?)とした会話に戻れる……と良いなぁ、とか思ったり思わなかったり。


るんら~♪

るんら~♪

ららら~♪


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