ど-357. 叫び声
気が気が気が……
「……おー」
「良い眺めですね、旦那様」
「ああ。ついでに言うと朝日が綺麗だ」
「はい、確かに」
「――んで、十分に景色を楽しんだところで、だ。どうして俺達はこんなところに居るのかな? ……って、最近こんな質問ばっかりの気もするのだが」
「確かにそうですね。そして私の答えも決まっております。何故も何も、旦那様が向かわれたからこそこうして私たちは今ここに居るのではありませんか」
「や、まぁ……そうなんだけどな」
「では旦那様はどこに御不満が……いえ、疑問とする個所があるのですか?」
「うん、何で俺、本当に頂きまで登って来ちゃったんだろう?」
「この光景をご覧になりたかったからではないのですか?」
「あー……うん、たぶんそうなんだと思う」
「何とも曖昧なお答で」
「単純に館に戻る為の道だとさ、八合目あたりでどっちに向かえば良いのかは分かってたんだよな……」
「はい、そうですね」
「いや、確かにいい眺めだけどさ……どうして俺は態々山頂まで登ったんだろうなー? 空気が薄くて少し苦しい」
「それは旦那様のお考えですので私にはお答えいたしかねますが」
「あ、うん。今のは別にお前に答えを求めてたってわけじゃなくてだな、何と言うか……独白みたいな感じだから気にするな」
「はい、了解いたしました。つまり旦那様は独り言を呟く危ないお方……と。しかと記憶致しました」
「今回のは完全に間違ってないから訂正し辛いが……、しかしあれだよな、こういう景色を見てると何か、叫びたくなってくるよなー」
「旦那様、余りご自分を卑下なされぬよう」
「……いや、別に俺何にも卑下なんてしてませんが?」
「しかし、先ほど何かを叫びたいと……つまりはご自身の恥部を一時の感情に任せて暴露なされると言う事なのではないのですか?」
「誰もそんな事は一言も言ってないけどなー」
「おや、私の早とちりでしたか」
「そう言うことだ。それにお前はこの景色を見てても何か叫ぼうとか、そう言う事は思わないのか?」
「そう、で御座いますね……」
「お? 何だ、何か叫びたいような言葉でも見つかったか?」
「――旦那様は私の旦那様ですっ!!!!」
「……」
「……こほん。失礼いたしました」
「いやー、随分と気合入ってたな、今の」
「……旦那様が仰ったのではありませんか、何か叫ぶような事はないか、と」
「そりゃそうだ。しかし、お前も当たり前の事を言うのなー。旦那様が旦那様とか、当然じゃねえか」
「…………そうですね」
「んじゃ、俺も一言叫んでみますか」
「……どうせ旦那様なのでしょうね?」
「あん? そりゃどういう意味だ?」
「いえ、お気になさらず、思ったままをお叫び下さいませ」
「? ああ、分かった――」
「……」
「――世界の女は、全部俺のものだー!!!!」
「思わずもらい涙が……ほろり」
「それどういう意味!?」
今日はちょっぴりやる気がおきませんでしたー。
おきおき。
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-五人目【ミミルッポの場合】-
「れむさまー? たいせつなおかただよー? うん、だってみんな、れむさまのおはなししてるときは、えがおだもんっ、ねー?」
補足:『ミミルッポ』護衛部。ちょっと精神が幼い子。ライカーレ好きっ子。実は魔物使いの才能があったりした、スィーカットの御主人様? 登場話、ど-12、ど-30とか。