ど-356. そうなんです
二重の意味で、“そうなん”です。
「道に迷うとか、あり得ないだろ」
「世の中には不思議な事もあるもので御座いますね、旦那様?」
「まさかお前の所為……てわけでもないか」
「はい。今は魔術の類が使えぬ身為れば、旦那様の気を紛らわせるのもの言葉を弄する事が精一杯。道に迷わせる、などと言った芸道など出来ません」
「つーっても、お前ならやろうと思えばできそうな気はするけどな」
「それが旦那様のお望みとあらば、粉骨砕身成して見せますが?」
「いや、それは良いから、ってかそんな事で全力にならないでくれ。俺が困る」
「了解いたしました、旦那様」
「ん、分かったなら良し。……んで、本当にここどのあたりなんだろうなぁ?」
「タイプー山である事だけは間違いないのですが」
「だろうな。魔術とかまだ使えないからな。ま、だから現在位置とかも探れない訳だが」
「如何いたしましょう?」
「如何、つーてもな、山頂目指して登っていくしかないだろ。幸いどっちが山頂かは分かっているんだから」
「傾斜の方角が山頂とは限りませんが」
「……言うな。たぶんこちっが山頂だから」
「はい、ではここは旦那様の全く信頼のおけそうにない勘を信じておくとしましょう。そして遭難した際の全責任は旦那様に追っていただくのは当然として、……何をしてもらいましょうかね?」
「いや、確かにお前は俺に付いてきただけで、道に迷ったりしたのは全面的に俺が悪いわけだが、……仕方ないだろう?」
「そうですね。こっちの方が近そうな気がする、などと仰って獣道を突き進んだのは旦那様でしたが、それも仕方ありませんね?」
「……そもそもこんなヒトも通らないような山道、踏みならされてる場所なんてないだろう。最早全部が全部、獣道じゃねえか」
「確かにそれはそうですが、館に戻るのを忌避なさっていつもと違う道で行こうと仰ったのは旦那様ですよね?」
「いやー、偶には気分を変えようかな、とかってあの時は思ったんだよ。それに、館に戻るとかはもう納得してるから、嫌とかはないぞ?」
「つまり旦那様が悪いのですよね?」
「……うん、まあ、そりゃ俺が悪いってのはさっきも認めたが、世の中にはどうしようもなく仕方ない事てのがあるんだよ。分かれ」
「それは承知しております。たとえば旦那様の事とか」
「うぐっ……と、とにかくだ。今は山頂を目指すのが先だろう? この話は止めにしようぜ?」
「それもそうですね。そもそもこの話題は旦那様が振ってきたモノなどと口を挟むのも詮無き事でしょう」
「……取り敢えず、だ。俺としてはこっちが山頂方向だと思う訳だが、お前はどう思う?」
「はい、私の記憶が間違っていなければ山頂はそちらであったと思います」
「そか。お前がそう言うなら間違いないよな」
「私の記憶が正しければ、と前置きしたはずですが?」
「それだけお前の事は信用してるって事だよ」
「……ぁ、りがとう御座います」
「ん? いやいや、何でお前そんな照れるんだよ?」
「いえ、少々不意をつかれただけですのでお気になさらず」
「そか。んじゃ、行くか。こんなところでのんびりとしてても時間の無駄だし、ちょっとだけペース上げるとするか」
「はい、そうですね」
「しっかしこの草藪、邪魔くさいな。もうちょっとマシな道とか、近くにないかなぁ……?」
「あ、旦那様、今思い出しましたが確かこのあたりには」
「崖があるから足元気をつけろーとかでもいう気か?」
「ぁ、はい……」
「んなべたべたな。いくら俺でもそんな足元見えないからって崖に落ちるなんてことあるはずが――、ないっ!?」
「地面が。……流石は旦那様。身体を張って期待に応えられるとは。誰も期待しておりませんが。……しかし今は魔術も使えぬ身。旦那様は大丈夫でしょうか? …………少し、心配になって来ました、急ぎましょう」
みゃふー!!!
あの娘に聞く!~あなたにとってのレム君は?~
-四人目【ライカーレの場合】-
「ご主人様? 大切な方ですよ。奴隷の私たちにこんなにもよくしてくださっているので……。恋愛? 好きか嫌いか? …………ぷっ、それ、面白い冗談。どうやったらあのご主人様が恋愛の対象に、ちょ、もうだめ、あはっ、あははははっ」
補足:『ライカーレ』護衛部。ちょっぴりお姉様? でミミルッポの保護っシャっぽい女の子。最近気になる人が出来た様子……? 登場話、ど-12あたり。