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harem!〜カオス煮、いっちょ上がり!〜  作者: nyao
o メイドさん vs ご主人様
544/1098

Act XX. エイリッシュ-2

ちょっとえへへんっ、と言う感じの今回。


「えっと、あの、そのあのえのうの……」




目の目で真っ赤になりながら半ばパニックになり掛けている少女を見て、ため息をひとつ。




「貴女が私を何処の低脳優秀美麗醜悪性格悪……な、女と勘違いしている事を正そうとは思いませんが、そうまで緊張されると会話にすら支障が出てしまいますので――落ち着きなさい? エイリッシュ・バックボーン・ルハ」



「はひっ!?」



「そうです。少し落ち着きなさい?」



「は、は、は――」



「……仮に貴女が私をどう見ていようと、それでは“エイリッシュ”の名が泣きますよ?」



「っ!? な、何を……」



「エイリッシュ――正確には、エイリッシュ・フィアンセル・イリアと言う名でしたか。三神十二使徒を除き、森羅万象の頂点に至った初めての存在――始祖龍ルーロンの盟友たる、ハイエルフ。貴女が私を“そう“勘違いしているのであれば、むしろなぜ知らないと思うのです?」



「――――やはり、貴女は……貴女様は、」



「私はどこにでもいるようなメイド風情ですが? 取り立てて貴女方が特筆すべき様な存在ではないと、少なくとも私自身は自負しております」



「でも、今の知識に……それに何より、その銀髪――誉れ高きは龍種の皇族、直系たる」



「――お間違えなさらぬよう。私のこの髪は、“くすんだ”銀髪です。それに龍種などという幻想は遥か昔、神代の時代と呼ばれた時に既に滅んだでは御座いませんか」



「……小人族の伝承の上では、です。事実とは……同じではありません」



「どちらにしろ同じ事かと。少なくとも、例え敬うモノがいようとも、敬う対象がいなくなればそれは意味を成さないのではありませんか?」



「でもっ――貴女様は今、私の目の前にいますっ!」



「ええ、そうですね。だから、どうかしましたか?」



「だから――て、!!」



「龍種の皇族と特徴の似た、もしかするとそのような力も私にあるのかもしれません。ですが、それが“貴女”にとって一体何の意味を持つというのです?」



「それは――」



「よしんば貴女がそれだけの意味を持ち合わせていたとして、けれど既に滅んだもの――そんなモノに捧げる敬意など必要もなければ、害悪にしか成り得ません。そもそもの話、私達はそんな“小さな事”になど微塵の興味もない――」



「――」



「……と、今のはあくまで例え話。私個人の身勝手でしかない言い分に過ぎませんがね。……エイリッシュ様? 如何なさいましたか?」



「貴女様は……いえ、貴女は――」



「はい」



「――……なら、聞かせて下さい」



「はい、エイリッシュ様」



「貴女は、誰ですか?」



「私ですか? 私ならば、何度も申し上げておりますが――」



「いえ、この際です。無礼を承知で率直にお尋ねします」



「――」





「――貴女の名前は、何ですか?」





その一言は重い、だがとても軽いとも言える。“たかが名前”、小人族に限らず、巨人族、妖精族――彼ら全てに“名”の意味はない。


唯一、この世界で“真名”が何よりも重い意味を持つのは、ただの一種族だけであり――




「……」



「……」



「……、やれやれ、困ったものですね。ハイエルフのエイリッシュ・バックボーン・ルハ、やはり貴女が私どもに付いて来たのは、そもそもホロロトスス様の謝罪が理由ではないでしょう?」



「……分かりますか?」



「はい、当然。私はもちろんのこと、今お休みになられている旦那様もそのような事は最初から理解しておりますとも」



「――その塵芥が?」




傍で寝て(気を失って)いる男を、少女は見たくないモノを見るような視線で、心底嫌そうに一瞥する。


その様子を見て――“彼女”は作ったのでもなければ相手に見せようとしたわけでもなく、心の底から溜息をついた。何せこの光景は、彼の傍で長らく仕えていた“彼女”からしてみれば見飽きるほどにありふれた光景なのだから。



エイリッシュと言う少女の外見から、そう言えばスヘミアと呼ばれる少女も初めはこんな感じではなかったか、と不意にどうでもいい事を思い出した。




「……貴女方ハイエルフが旦那様に対して本能的に嫌悪感を持つのは充分理解できます。ですが私個人の想いとしては、あまり嫌わないでいて欲しいのですがね?」



「……それは無理です。その塵芥、何か生理的に受け付けませんから」



「――でしょうね」



「はい。申し訳ありませんが」



「ならば――忠告致しましょう」



「……何ですか? 仲良くしろ、とか言うのでしたら無理な話ですが」



「いえ、――」




半分以上、無駄とは知っているけれど。


彼女がある意味で特別に――“彼”の事を嫌っているのなら、既に意識してしまっているのなら十中八九無駄に終わるであろう忠告だけれども。



やっぱり、言わないなんて選択肢は初めからないわけで。




「【喰われ】たくなければ気をしっかり持つことです、エイリッシュ・バックボーン・ルハ」


言われた、目の前の少女は言葉の意味が分からないと言うように不思議な表情を浮かべている。





多分きっとまた、気晴らしが必要になる。


――メイド服を着た、くすんだ銀髪の女は、内心でそう確信した。


今回も色々と、ちょっとお休みの海。

……もしかするともう一回だけ『エイリッシュ』さんの回があるかもしれない。


得に彼女自身に何かがあるわけではないのです、少なくとも今のところは。


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