ど-343. 気がない
ほ〜としたまま一日を過ごします。
「もう、何も考えたくない」
「旦那様がそのようにいじけられているのはいつもの事なのですが、一応お尋ねしておきましょう。如何されたのですか、旦那様?」
「……うん。もうね、何か全ての事を考えるのが嫌になってって言うのか、……面倒くせぇ」
「つまり、やる気が起きないと?」
「うん、まー、そゆこと」
「ではご安心してお休みくださいませ、旦那様」
「……ほぇ? いいのか?」
「ええ、旦那様が休養を必要とされているというのでしたら、それを与えるのもまた私の役目。それが旦那様のご要望とあらば、当然では御座いませんか」
「いや、お前の事だからまた何かトンデモ発言とかしてくるんじゃないのかなーとか思ってたんだが……?」
「それは大きな誤解に御座います、旦那様。私の発言がそのように聞こえるというのでしたら、それは恐らく旦那様の存在自体が常識から外れ過ぎているからにほかなりません。私はあくまで旦那様に合わせた発言をしているに過ぎませんので」
「ゃ、俺はいつだって至ってまともだろう? まともじゃないのはお前の方だって」
「いいえ。私も自信はまともであると主張させて頂きましょう。まともでないのは旦那様の方で御座います」
「いやいや、絶対にお前の方だって」
「いいえ、旦那様の方に違いありません」
「違うって」
「違いませ……いえ、この様に言い争っていても不毛な時間を取るだけですね」
「あ、ああ。それもそうだな」
「では、ここは中間をとって旦那様がすべて悪いということで、宜しいですね?」
「ああ。……全然宜しくないぞ?」
「何故ですか!?」
「何故も何もあるか!」
「旦那様が悪いというのは世界の真理を通り越して最早当然のこととして世界に根付いているというのにっ」
「そんな嫌なモノを根付かせた覚えはない。それとおまえが言う“旦那様”ってのはあくまで俺のこと限定だろうけど……お前はそこまで俺の事を“悪”にしたいのか?」
「したいも何も事実では御座いませんか。それともまさかご自分で言われた事をお忘れになりましたか?」
「忘れては……いないけどさ。あの時と今とは違うだろ? それにあの時俺が使ってた“悪”とおまえが今使ってる“悪”とは違う気がする。お前は都合よく悪って言葉を使い過ぎだ」
「そうでも御座いませんよ? 私は悪と言う言葉は旦那様以外に使った事は御座いませんので。決して乱用など致しません」
「……もしかして、それって実は褒め言葉、とか言わないよな?」
「素晴らしい勘違いも良いところですね、旦那様?」
「うん、まあ、普通そうだよな」
「ええ。……それで、旦那様?」
「なんだよ?」
「少しはやる気と言うモノが出て参りましたでしょうか?」
「はい? 一体何を言ってるんだ、お前は?」
「いえ。……では旦那様、旦那様にして頂きたい仕事もそこそこ溜まってきておりますので、一休みした後にお願いいたします」
「一休み? いや、俺としてはこのままでも別に――」
「時には適度の休息も必要、と言う事です、旦那様。では、今はごゆるりとお休みの程を」
「あ、あぁ、分かった」
「では――失礼いたします」
「……何考えてんだ、あいつ?」
なんやかんやで、なんやかんや。
愚痴ノート選抜
『無理をしているのが明らかなのに大丈夫、何て言うのは止めて欲しい。
だから重労働をさせて倒れてもった。
倒れるくらいなら、しなければいいのに。』