ど-328. おい
お〜い、
「おい、服」
「何故私が旦那様のお召し物をご用意しなければいけないのですか。――はい、こちらになります」
「それは気に食わん。他の奴はあるか?」
「ではこちらをどうぞ」
「うん。前よりはマシだな」
「ありがとうございます」
「おい、飯」
「何故私が旦那様の食事の用意をしなければいけないのですか。――はい、こちらになります」
「……今日はこれの気分じゃないな。他のを用意しろ」
「ではこちらをどうぞ」
「ん」
「……」
「おい、金」
「何故旦那様の使用するお金を私が工面しなければいけないのですか、それと一体何に使うおつもりで? ――はい、こちらになります」
「足りないな、もっと寄こせ」
「銅貨では足りませんか。では銀貨十枚で如何でしょう?」
「……まあ、それだけあれば良しとするか」
「ではどうぞ」
「ん」
「と、一度目でランクの低いモノを出して、二度目でもやはりランクのやや低いモノを出す。それで満足を得られるという、まさに旦那様のお世話をするための基本スキル」
「聞こえてるぞ、おい」
「旦那様のお耳にも届くよう、申し上げましたので」
「……あ、そう。なら――」
「そもそも私はただいま旦那様に対して腹を立てているのであって、喧嘩中なのですが、何故に旦那様の身の回りのお世話をしなければならないのですか?」
「お前が進んでやってる事だ。つーかまだ機嫌直ってなかったのか」
「当然では御座いませんか。あれから――旦那様の改善点が未だ一つとして挙がってきてはおりません」
「まあ当然だな。何が悪いのかさっぱりだし」
「――そうで御座いましょうとも。ご様子を見ていれば察しがつきます」
「そう思うなら少しはヒントを出せ。もしくは表情か態度に少しくらい出せ」
「お断りいたします」
「ちっ、……だろうよ」
「しかしながら困った事に、実は先ほどの旦那様のお世話基本スキルには重大な欠点が御座います」
「は? いきなり何だよ?」
「只今旦那様が思い浮かべておられるモノのご用意だけは決して出来ません」
「……、いや、俺が今何を思い浮かべてると?」
「では旦那様は先ほど何を仰りかけたので?」
「服、飯、金と来れば次に来るモノは決まってるじゃねえか」
「女、と」
「いやいや、んなことは全く微塵もこれっぽっちも思ってないから」
「しかし真に遺憾な事に私が用意できる女性と言うのはただ一人、私自身であり間違いなく最高級ランクと自負しております。なのでランクの低い方を用意するのは無理かと。……とは申し上げましても、そもそも女性にランクをつけること自体旦那様のご高慢であらせられるのですが」
「俺はそう言ったランク付けとか、選好みをした覚えはないぞ」
「選好みを出来るほどのお相手も居りませんしね?」
「うるせ」
「ですので旦那様?」
「……なんだよ」
「女性が欲しいのであれば、私でご満足していただけるとありがたいです」
「そもそも、俺がいつ女が欲しいと言った。俺はあくまで服と飯と金をよこせと言ってただけだ」
「困りました。まさか女性ではなく男性を欲しておられたとは、流石の私も想定外――」
「んなわけがあるかー!!!!」
思い切りね過ごしました。
でも寝るって言うのは素敵で気持ちのいい事ですよね?
と、言い訳をしてみる。
愚痴ノート選抜
『ふと窓の外を眺めると旦那様がいた。憎らしい』




