ど-314. 占い
“まじない”と“のろい”、は同じ呪いと書く。
「旦那様がお進みになられるのは非常に辛い地獄の急緩コースで御座いますかそうですか」
「お前、急に何言ってんの?」
「いえ、旦那様の今後の人生について、私なりに率直な意見を申し上げただけですが?」
「その率直な意見とやらの根拠を聞きたいものだな、俺は」
「根拠など挙げればきりは御座いませんが?」
「言葉で言うのは簡単だ。でもきりがないとか言って、実は何も思いついてなかったりしないか、お前?」
「いいえ、そのような事はありませんが? 常日頃より実感しておりますが、旦那様は少々お考えが穿ち過ぎなのでは御座いませんか?」
「誰の所為だと思ってる、誰のっ」
「少なくとも私どもと出遭った時から旦那様のその用心深さとも取り繕える性根の捻くれ具合は変わっておられないように感じられますが?」
「それは間違いなくお前の勘違いだ」
「そうでしたか。それは失礼を、旦那様」
「そうなんだよ。と、言う訳で俺の性格が仮に捻くれてたとして、それは俺じゃなくて俺が捻くれざるを得ないような環境が悪いんだ。ズバリお前の所為だ」
「仮にも何も……それに旦那様、何もかもをその様に他者の所為にしてはいけませんよ?」
「その自分とは一切関わり合いがありません、とかいう言い草は何だ」
「あるのですか? そうであると旦那様がおっしゃって下さるのならば、それほど嬉しい事は御座いませんが?」
「くっ、一番の悪影響の権化が抜け抜けと……」
「ですから旦那様、ヒトの所為にするのは止した方が宜しいかと」
「ヒトの所為も何も……って、そもそもお前がいきなり俺の人生お先真っ暗だとか言いだすのが悪いんじゃねえかっ!」
「私、そのような事を申し上げた記憶は御座いませんが?」
「言った! 確かに言いましたっ! 俺の人生この先は凄く辛い地獄のコースとかなんとかって!!」
「確かに、その様な事を申し上げた記憶は御座いますが、だからと言ってそれが旦那様の未来が真っ暗であるという事とは異なっておりませんか?」
「違わねえよ。つーか違うって言うんならどこがどう違うって言うんだよ?」
「仮に居場所が地獄であったとしても、それを極楽に変えてしまうのが旦那様であると私は固く信じております」
「……あー、それはアレだな。俺が苦労する事前提の話か」
「そうなりますね? ですがそのような苦労を厭われる旦那様ではありませんでしょう?」
「まー、それは確かに。……んで、地獄の部分は綺麗にまとめたつもりだろうが、実際のところ俺は全然納得してないつもりだが、辛いとかいう言葉はどう説明するつもりだよ?」
「日常茶飯事では御座いませんか」
「……その一言で納得してしまった自分が憎い」
「その様な事を仰られずに」
「つまりアレか、今とそう変わり映えのない日がこれからも続いて行きますよって、そんな感じの事が言いたかっただけか、結局。ったく、回りくどい、誤解しか与えない言い方しやがって」
「……今と変わらない、ですか。そうであるならば、それはどれほど幸せな事か」
日常って難しいですね。一体何が日常なのか……。ちょっと趣旨変えを考えねばっ?
身に覚えのない話
「なんか、出した覚えのない恋文の答えがかってきたんだが?」
「それはおめでとうございます、旦那様。……それに見事に振られておられる様子、何よりです」
「何が何よりかっ!」




